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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。

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#可能性

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(7)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(7)

 私は、1日に何度かお母様の部屋へ足を運んだ。美空ひばりの曲が流れる中で口腔ケアを行い、脱脂綿に含ませた水分で口を潤わせるということをさせて頂いた。この数週間の間、何度お母様の名前を呼んだことか…。

「〇〇さん、今日もよろしくお願いしますね」「〇〇さん、さっき娘さん来てたの気付いてましたか?」「〇〇さん、はい!ゴックンしますよー!」「〇〇さん、今日もバッチリでした」「〇〇さん…」「〇〇さん…」

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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(6)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(6)

 特に実習生時代、新人時代は「患者の精神的な部分に偏り過ぎ。もっと冷静になれ」と言われ、手探りで【バランス】を獲得しようと努めていた。極端に冷淡になることもあり、【バランス】の難しさを感じ、悔し涙を堪えたことも多々あった。

 臨床経験を重ねるごとに、重視することが変化し【患者が笑顔になる】ことをより深めるために、例え「ぬるい」と言われるようなリハビリであっても提供し続けた。そして、根拠に欠ける【

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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。     (5)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。     (5)

 直属の上司に、実母のリハビリの相談を受けた私はその場で思い浮かぶもの全てを伝えた。そして、上司から見舞いに行くたびに[病院での実母の状態]や[病院スタッフの行動、発言]をメールで受け取っては、「他にでき得ることはないか」と考えた。普段、プライベートは謎が多い上司だったからこそ、その切実な想いは強く伝わって来たし、私自身、頼りにされるのが嬉しく何とか力になりと思っていた。

 上司は、絶食期間が長

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