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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。

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#生きる意味

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(4)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(4)

 言語聴覚士は、言語障害に対するリハビリだけではなく摂食・嚥下機能障害に対するリハビリも行う専門職だ。食べたり、飲み込んだりすることが難しくなったり上手くできなくなった患者に対してリハビリを行うのだが、命に直結する分野であるため私自身も、他スタッフも[摂食・嚥下機能=食事]に関しては神経を遣っていた。

 「高齢者が喉に餅を詰まらせて死亡」など聞いたことがあるように、普段何気なくしている[食べる]

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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(3)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(3)

 臨床実習で教えてもらった先生に、【バランスが大切】と教わった。実習生の時も新人だった時も私は、患者の気持ちに寄り添う割合が多くなり、冷静に医学的な判断を行ない目標やリハビリプログラムを設定し、無駄なくリハビリを実施するということが苦手だった。

 人間関係においても同じく、患者の話し方を悪ふざけで真似したり家族を悪く言うスタッフに対しては、一緒になって真似することも悪く言うことも頷くこともしなか

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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(2)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(2)

 いよいよ、言語聴覚士の資格を得て臨床現場へ出た私だったが、人が伝えたいと思いながらも伝えられない苦悩や諦めてしまう姿に、自分の技術や知識のなさ、人間力のなさに打ちのめされた。常に「私じゃない誰かがリハビリをすれば、この人は笑顔になったのではないか」「私じゃない誰かがリハビリをすれば、この人は伝えることを諦めなかったんではないか」という思いが私の心を占領した。

 けれど、よく考えた。そもそも、簡

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私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(1)

私が言語聴覚士を目指し、そして辞めた今。(1)

 私は、去年の秋までリハビリの仕事をしていた。いわゆる言語障害といって、口がうまく動かずにうまく話せない方、口の動きは問題ないし頭でも言葉は思い浮かんでいるのに、いざ話そうとすると言葉が出てこない失語症という方などその症状は多様で、これに認知症が加わる場合もあり対象者の症状は実際にはかなり複雑だった。

 私がなぜ、言葉のリハビリ/コミュニケーションのリハビリをする【言語聴覚士】になったのか。その

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