夢で鳴ってた音楽  par メロウ野郎

欧州のジャズ、プログレ、トラッド/フォークなど、異郷の空気を纏った音楽を好む人です。あ…

夢で鳴ってた音楽  par メロウ野郎

欧州のジャズ、プログレ、トラッド/フォークなど、異郷の空気を纏った音楽を好む人です。あっちの森や海や荒野に旅してみませんか。得意分野はエストニア🇪🇪。

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最近の記事

フランス古楽/トラッドバンド マリコルヌの78〜80年ライヴ音源に驚いた件

マリコルヌは、フランスの古謡や中世〜ルネッサンスの古楽を斬新なアレンジで再構築したバンドです。 70年代英国のスティールアイ・スパンやフェアポート・コンヴェンションなどの電化トラッドにインスパイアされた音づくりで、後期にはプログレッシヴロックの要素も加わったものになっています。 十代で彼らの音に初めて接し、音やアートワークからどばどば溢れるフランスの村や森の匂いに絡め取られて以来、今に至るまで現世に復帰できません。 デビューが ’74年。’78年まで4枚の傑作を作ったあと、

    • ジョー・バルビエリのナポリもんカヴァー集追加

      新録4曲ずつのミニアルバム2連発という手でここのところグイグイ来ているこの人の記事をこの前書いたんですけど、↓ その後3発目が来ました。 引き続きギター2本のシンプルなアレンジをバックにナポリ産名曲のカヴァーを歌い上げています。 イタリア名産の美メロをブラジル方面のサウダーヂで和えた味わい。うーんベリッシマ。 最初の2曲はミア・マルティーニが歌ってますが、あっ2曲目のオリジナルはテレーサ・デシオだ。 3曲目は古いナポリターナ。 4曲目はロベルト・ムローロという人がオリジナ

      • スロヴァキアの森の与作がどんじゃらほいフォークロック〜 Hrdza

        スロヴァキアの首都ブラティスラヴァは西の端っこですが、このバンドは反対側の東の端っこのほうのプレショフを根城に活動しているバンド。ウクライナ系少数民族ルシン人も住み、とりわけ伝統文化が根強い地方とされています。 そんな地方を拠点に活動するこのバンド、伝統音楽の楽器や唱法の上半身と、極太ロックビートの下半身が合体したハイブリッドスーパーロボといった音で度肝を抜かれました。 そもそもバンド名は子音が4つ続きカナ表記不可能。読むだけで難易度高い(よめない)。 最初に何かの機会に

        • 今は亡きラフェール・ルイ・トリオのライヴ動画に過ぎし日を想ふなど

          1987年のデビューから98年の解散まで、おフランスらしいセンスとウィット、それにそこはかとない詩情に満ちたポップな音を鳴らしたこのバンド、不世出の天才だったとわたしはいまでも思うのです。 最近になってそんな彼らの当時のライヴ動画がいくつも出てきていて、ファン歴30年以上のわたしも感無量です。 まずはこれ、1993年のライヴは4枚目にして最高傑作「Mobilis in mobile」リリース後のもの。ステージに置かれた大道具はジャケ写にあったセットですね。 大名曲バラード

        フランス古楽/トラッドバンド マリコルヌの78〜80年ライヴ音源に驚いた件

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        • Italia
          1本

        記事

          ジョー・バルビエリの新譜 「Don Salvato'」「Accarezzame」

          イタリアらしい美メロにブラジル音楽のエッセンスを加えた作風が日本でも人気、来日もしてるこの人、新譜が出たというので聴いた。 どうやら歌詞はナプリターナ(ナポリ方言、というよりは「ナポリ語」)のようだ。調べてみたら本国の記事が。 今作はナポリ歌謡の名曲あれこれカヴァー集ということだ。そういえばこの人はナポリ出身とライナーで読んだ。 これまでの繊細でメロウな作風からは、あまりナポリらしいコテコテイズムを感じさせない感じだったが、デビュー30周年にあたる今年、自らのルーツに立ち返

          ジョー・バルビエリの新譜 「Don Salvato'」「Accarezzame」

          Chet Baker Trio – Live In Paris: The Radio France Recordings 1983-1984

          えっえっ、未発表ライヴだ。 ピアノはチェットの晩年の相棒では最高のひとりミシェル・グレイエ。ベースは同じく常連のリカルド・デルフラ。グレイエとデルフラは1986年初来日トリオと同じメンツだ。数曲トラでドミニク・ルメルル(Lemerle)という無名の若手が弾いている。 没後にわりと節操なく出されたライヴ録音の数々はとかく玉石混淆だ。 チェットがやる気なかったり体調ゲロゲロだったりであんまり吹いてなかったり、ジャズライヴを良く知らないアホ客が場違いに盛り上がってイエーとかウヒ

          Chet Baker Trio – Live In Paris: The Radio France Recordings 1983-1984

          ベラルーシからミナスの風〜ソユーズ(Союз)

          Spotifyでなんか聴いてるとアルバム終わった後に勝手に似たようなのを流してくるじゃないですか。先に書いたロシアのSettlers聴いてそのままにしてたらこのバンドが流れてきた。 アコースティックで叙情的なメロディ、ネオアコとかプログレまで手が届きそうなアレンジ、で歌はなんかスラブ系言語。アーティスト名で調べたらベラルーシのバンドらしい。 はてさてこいつらはいったいどういうジャンル系列にあるバンドなんだ、なんか素敵な音だぞ、と思ってアルバムに移って聴いてみる。次に流れてき

          ベラルーシからミナスの風〜ソユーズ(Союз)

          エストニアの森の香り〜Sula / Mick Pedaja

          エストニアから夏向きの一枚。2023作。 ちょっとニック・ドレイクを思わせる、DAGDADチューニングのアコギのフォーキーな歌を、ポストロック〜アンビエント風音響が包みこむ。 森やせせらぎを渡る風のような響きと、エストニア語の言霊のあや織りが彼の国の自然のただなかにいざなう。蔵王の森で聴きたい。 (アルバムからのPVはぜんぜん夏じゃないんだけど)。 オリジナルアルバムはこれが4作目だが、本作が出色の出来。 その他にも映画のOSTを何枚か製作している。 これまでの過去作の

          エストニアの森の香り〜Sula / Mick Pedaja

          音楽の飛び地サンクトペテルブルク〜Settlers(ロシア)

          昨今あまり評判のよろしくない国ではあるが、アートに関しては古くからすごいものを生み出してきたことは無視できない。 これは最近見つけたかの国のすごいプログレトラッド。 トラッドのメロディにジャズ的超絶リハモナイズとラディカルなアレンジを施し、変拍子で疾走するアンサンブル。インナ・ゼラーニャを暗黒呪術テイスト少なめにしたような、もしくはティグラン・ハマシアンfeat.土俗こきりこ節とでも言おうか。 サンクトペテルブルクのバンドのせいか、スラヴというよりエストニアやフィンランドの

          音楽の飛び地サンクトペテルブルク〜Settlers(ロシア)

          MUJI BGM27 Netherland

          無印のBGM、新作はオランダのトラッドだ! なんと今作からフィジカルCDは売らずDLのみとな。サブスクで聴けるけど、クレジットが気になるしライナー欲しさにりんご屋で買った(900いくら。 一聴した感じChimeraとかLilienthal(ドイツだけど)みたいな優美なアンサンブルで、プログレッシバーにもおすすめ。 中盤以降の曲がなんかフラレックぽい感じだなーと思ってたらなんとほんとにフレアックの人らが参加してたのだった。 といっても今のフレアックにオリジナルメンバーは

          October Projectのその後

          90年代に2枚のアルバムを残したアメリカのバンド、オクトーバー・プロジェクト。 プログレッシヴロックを志向していたわけではないにもかかわらず、そのドラマティックな女性ヴォーカルとシンフォニックな音作り、そして文学的な歌詞は、ルネッサンスのようなバンドのファンの胸を熱くしたものである。 最近久しぶりに過去作を聴き直して改めてその良さに感じ入ったのを機に、今はどうしているのやらと検索してみたらなんと、 ・2001年に再編(その前にもNovember Projectの名で活動再開

          イザベル・アンテナ 1988スタジオライヴ

          ベルギーの女性シンガーアンテナさん。 1986年のアルバム「Hoping for love」(ちなみに日本盤タイトルは「愛にエスポワール」!上手いなあ)はわたくし的に人生屈指の愛聴盤なのですが、1988年にスペインのTVショーに出演した時の、その収録曲3曲から成るスタジオライヴの動画を見つけて欣喜雀躍である。 冒頭はディジー・ガレスピーのオマージュを歌った「チュニジアの星」、続いて「メロディ」。Hoping…は1950年代のフランスのジャズコーラスグループ、ドゥーブル・シス

          イザベル・アンテナ 1988スタジオライヴ

          Richard Sinclaireのお宝音源あれこれ

          かつてカンタベリー系バンドを渡り歩き、今はイタリア在住で呑気に英国のほほんイズムを体現するリチャード・シンクレア。 さいきんbandcampのページを見て驚いた。 キャラヴァン〜ハットフィールド&ザ・ノース〜キャメルからソロ活動に至るまでの音源を、公式、デモ、ブートレッグに至るまで取り揃えたお宝ショップになっているではないか! まずはナショナルヘルス1977年のライヴ。 リチャードはゲストシンガーとして「Clocks and clouds」で歌っている。 実は1980年ごろ

          Richard Sinclaireのお宝音源あれこれ

          イタリアのポップス職人Papikの仕事のこと

          わたしがイタリアものが好きなのはなんといっても曲、メロディのよさ。 サイゼリアで流れてるのみたいないわゆるカンツォーネにはじまり、英米のロックをイタリアの味で漬け込んだ70年代のバンドサウンド、それが完成された80年代以降、一貫して流れるのは溢れ出る歌心と、過剰なまでの情緒感(要はクサい)だ。 現在ではイタリアのジャズミュージシャンがたびたび過去の歌物のカヴァーを演奏していることからも、その情緒はジャンルと時代を問わずイタリア人の血に流れ続けていることが窺える。 このおっさ

          イタリアのポップス職人Papikの仕事のこと

          チェット・ベイカーの名盤とは何でしょう

          サブスクの隆盛でチェット・ベイカーのアルバムもその多くが手軽に聴けるようになった(ちなみにAmazonもアップルもSpotifyも内容はほぼ同じである)。 30年来のファンであるわたしもこれまで集めたアルバムにサブスクを合わせるとディスコグラフィーのほとんどを聴けるようになった。ありがたいことである。 しかしだからと言ってサブスクでチェット聴こうと行ってみると、そこにはわけのわからないオムニバスや勝手に編集した謎盤で埋め尽くされているのが現状だ。ジャケが若い頃の写真なのに

          チェット・ベイカーの名盤とは何でしょう

          Quint Starkie

          去年デビュー盤(2016製)を聴いておおコレは!と思ってたら2枚目が出て、うむこいつは間違いないと思った。 ウェストコーストとかAORとか引き合いに出されるけど、わたしはこれはエヴリシングバットザガールに通じる良さみを感じましたね。これはトレイシー・ソーンに歌わせてみたいと思うような曲も多い。 当初アメリカ西海岸野郎かと思ってたら、実はスウェーデン在住の英国人ということで、わたし好みのウェットな情緒が感じられたのも道理であった。 ギターで作られた、グッとくるコード進行と、い