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1995年のバックパッカー 第一部 東アジア

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1995年。写真家の藤代冥砂は突然仕事を辞め無職となって世界一周無期限の旅に出た。ミスチルのジCDカバー写真などすでに結果を出していたが、約束された未来を捨て、1人の日本人バック…
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2024年5月の記事一覧

1995年のバックパッカー 6 中国1 天津から北京へ

1995年のバックパッカー 6 中国1 天津から北京へ

15時。
僕は生まれて初めて中国へと入国した。

天津港には、国土の巨きさを映すような雄大で孤独な造船所が並んでいた。ここで造られた船にとっては母胎となる天津の港。サーモンが故郷の河を遡上するように、船というものも故郷に帰るのだろうか。

僕は、コンクリートと鉄で固められた造船所を見るのが好きだ。現代の文明が、たった今稼働しながらも、同時に太古の遺跡にも似ているような、時空が曲がる感覚が得られる。

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1995年のバックパッカー 5 韓国3 仁川の夜に泳ぐ

1995年のバックパッカー 5 韓国3 仁川の夜に泳ぐ

東仁川は、ソウルから1時間だった。

到着は14時半。そのままホテルを探して歩き始めた。20分ほどで、ラブホテルのようなものを見つけチェックイン。部屋に入ると、コンドームの自動販売機があり、匂いからも、そこがラブホテルだと確信した。そうか、韓国ではラブホテルも普通に泊まれるんだと、新しいことを知った気になった。

荷物を置くと、すぐに東仁川の街を散策した。

ソウルから来ると小じんまりとした印象だ

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1995年のバックパッカー 4 韓国2「ソナさんの浅さについて」

1995年のバックパッカー 4 韓国2「ソナさんの浅さについて」

僕はソナさんの綺麗さに、なんだか緊張した。
神戸のあの夜は、本当に現実に存在したのだろうか、咄嗟になぜかそう思った。

「わたし、浅くない?」

あの夜、彼女がつぶやいた問いは、僕の中に小さくない何かを残していた。そういう質問を受けたのは、生涯であれっきりだ。僕がどう答えたのかは覚えていないが、確かに彼女の言う通りだった。

そんなソナさんが、あの時と同じ綺麗な姿のままで現れた。僕は最初から動揺し

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1995年のバックパッカー 3 韓国1

1995年のバックパッカー 3 韓国1

翌朝6時に起床を知らせる電灯がついた。

2等船室に雑魚寝していた韓国の人々は、起床直後だというのに大きな声で会話を始めている。地声が大きいのか、母国への到着がよほど嬉しかったのか、とにかく彼らの朝の第一声は明るく大きかった。僕は手際良く寝具を片付けると、その会話の響きから逃れるようにデッキへと上がった。

4月の初旬の朝6時はまだ薄暗く、未明の空と海とのグラデーションを特に美しいと感じることもな

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