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28歳無職の10日間

残り、91万2,000円。

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4/1
今日から新年度。浮き足立つ社会と、変わり映えのない私。友だち、みんな大きな企業できちんと働いていて本当にすごい。私もかつてはそうだったなんて信じられない。今日は展覧会に行こうと思っていたんだけどどうしても気乗りしなくてやめた。かわりにゲームでもやろうとしたらいつの間にか眠ってしまい、夜。作ろうと思っていたチーズタッカルビは予定どおり作って食べた。おいしくて満足。多くの人がへとへとになって帰宅する様子をTwitterで眺めつつ、特に何もせず終わった自分の一日を振り返る。私、こんなんでいいんだろうか。とか考えながらも、好きな芸人さんのテレビを見て幸せを感じるほどには単純な私がいる。まあこういう日もあるか。

4/2
昨日は案の定、朝まで眠れなかった。特に支障はないけれど。昨日作ったチーズタッカルビの残りを白いごはんの上にのせて、さらに卵をのっけてどんぶりにして食べる。とてもとてもおいしい。幸せだ。お友だちからもらったハンドクリームがとてもとてもいい匂いで嬉しい。幸せだ。何も起きない一日だけど、確かに幸せな瞬間があったことを確かめて、また眠る。

4/3
ビールと小籠包をかっ喰らい、そのあと〆でコーヒーとモンブランをいただく。会社をやめてから、ごはんをおいしく食べることに真剣に向き合うようになった。一食一食が大切な財産であり命だ。日々、真剣勝負。ノーマークだった蒸し鶏が一番おいしかったかもしれない。そういう歳?

4/4
キャラメルコーンを一気にたいらげる。こんなに気持ちのいいことはない。ごはんをおいしく食べることに向き合いながらも、お菓子のどか食いをやめることはできない。人間とは悲しいほどに欲深い生き物だ。

4/5
おもちに砂糖じょうゆをかける時、砂糖はしょうゆより少し多めのほうがおいしいと知る。年明けに買ったおもちがまだたくさん残っているから、引っ越すまでに消化したくて毎日のように食べている。砂糖じょうゆ以外の食べ方を、私はまだ知らない。

4/6
お勉強が18時というキリのいい時間に終えられたので、そのまま新玉ねぎのハヤシライスを作って食べる。カレー派とハヤシライス派、やっぱり圧倒的にカレー派のほうが多いんだろうか。わたしの場合、母親に「なに食べたい?」と聞かれるときの答えは決まって「ハヤシライス」だった。4年ひとりで暮らしている間、ハヤシライスは何度も作ったけれどカレーはついに一度も作らなかったな。ハヤシライスを食べると小さい頃の気持ちに戻れる気がする。夜ごはんがハヤシライスなだけでワクワクした、あの頃の気持ちに。

4/7
今日は外でお勉強。スタバのシュガードーナッツを食べて自分を甘やかす。去年の夏にお友だちからもらったスタバカードが今さらながら大活躍している。お友だちに心から感謝しながら噛みしめるシュガードーナッツは、禁忌的な名前に反して優しい味がした。

4/8
今日は何もしたくない日だったので小説を一気読みする。いつからか小説が読めなくなってしまってまずいなあと思っていたんだけど、今日はなぜか小説に自然と手が伸びて、するすると読めた。よかった。働くことについて「業」という表現があった。ネットでひいてみると「理性によって制御できない心の働き」とある。私はやっぱり言葉にまつわる仕事がしたいな、と思う。私の「業」は、今のところそれ以外に考えられないからだ。残りのハヤシライスを食べて、おなべが空っぽになった。今度は、何を作ろうか。

4/9
お世話になったお友だちへあげるクッキーを買う。私はこれまで伝えるという手段を言葉に頼り切っていたな、と感じるようになった。ありがとうという言葉ももちろんいいけれど、今の私はあなたにクッキーをあげたい。そういう気分なのだ。

4/10
6時に目が覚めたのでそのまま起きてみる。普段なら確実に二度寝するけれど、明日は朝が早いのでその予行練習だ。私は会社をやめる前も後も基本的にお昼に起きる人間だから、こんな朝という朝を経験するのはもういつぶりか分からない。休日の早朝は、自由だった。今まで、自由とは深夜にあるものだと思い込んでいた。私には知らないことがまだたくさんある。いつもと違うことをしてみると、それを見つけることができる。いつもと違うことをしてみようと思えるのは、私のまわりに誰かがいてくれるからだ。友よ、いつもありがとう。

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4月ももう10日が過ぎた。
相変わらず一人だけど、肩の力を抜いてなるべく楽しく毎日を過ごせればいいな、と思う。
今のところ、楽しい日々だ。

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