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『わたしは誰でもない エミリ・ディキンスンの小さな詩集』の読書感想文

『わたしは誰でもない(I’m Nobody! Who are you?) エミリ・ディキンスンの小さな詩集』を読んだ。 川名澄さんの翻訳で、風媒社より2021年に出版された本だ。

ちなみに本作は十数年前にごく少ない出版部数で入手困難だったにも関わらず、アメリカ政治研究者の渡辺靖さん、作家の落合恵子さんの著作で引用され、川名さんは感激されたそうだ(p.180)。

その詩を引用する。

ひとつの心がこわれるのを止められるなら
わたしが生きることは無駄ではない
ひとつの命のうずきを軽くできるなら
ひとつの痛みを鎮められるなら

弱っている一羽の駒鳥(ロビン)を
もういちど巣に戻してやれるなら
わたしが生きることは無駄ではない

If I can stop one heart from breaking
I shall not live in vain
If I can ease one life the aching
Or cool one pain

Or help one fainting robin
Unto his nest again
I shall not live in vain

『わたしは誰でもない』p.74-75

エミリ・ディキンソンは、1830年12月10日に生まれ、1885年11月に55歳で亡くなっている。結婚もせず、仕事もせず、ずっと実家暮らしで、詩を書き続けた人のようだ。彼女の詩集は死後発表され、注目を集めたのだという。わたしが、エミリ・ディキンソンを知ったのはいつなのか、はっきりとはわからない。アメリカのドラマや映画を観ていると、彼女の詩は何度となく引用されている。アメリカにおいては、かなり馴染みのある詩人なのだろう、と思う。だからこそ、読まねばと思いつつ、忘れていた。

今のわたしに印象深かったのは、以下の詩だ。

見ず知らずの人びとが 異なる世界から
わたしに助けをもとめています
かれらの味方になりなさい あなたも天国では
難民なのかもしれませんよ

These Strangers, in a foreign World,
Protection asked of me—
Befriend them, lest yourself in Heaven
Be found a Refugee—

『わたしは誰でもない』p.54-55

この詩は、アメリカの南北戦争(1861-1865)時に書かれたものだという。戦禍を逃れようと彷徨った人々がたくさんいたのだろう、と思う。

ロシアによるウクライナ侵攻があり、日本がウクライナの難民を受け入れる、というニュースがあった。「これまで中東の難民を受け入れてこなかったのになぜ?」という意見もあるようだが、何もしないよりはよい。「避難民」扱いにする、という報道もあり、トーンダウンしているところは気になる。

入国管理庁にも多くの問題があるが、変われる機会を逃してはいけないと思う。

エミリ・ディキンソンで検索していたら、Hello Poetryいうサイトを見つけた。便利な世界になったものだ!

川名さんの翻訳と英語、両方楽しめるので、英語学習中の方にもおすすめだ。

「If I can stop one heart from breaking」が引用されているのは、上記2冊の本だ。

なぜだか、あまり「詩」を読まずに生きてきた。気になる詩人がいたら、どんどん読んでいきたい、と思っている。

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