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【全文無料】説明書のチェックポイントどこ見てる ~23年ゲムマ春~(ゲームのルールの伝言ゲーム)

こちらはアナログゲームマガジンの連載「ゲームのルールの伝言ゲーム」の25回目、今回は全文無料で読めます。文字数は約5,800字です。

はじめに

34作品ほどゲームマーケット春の説明書を読んだため、その内容から、説明書の項目ごとにどんな点が気になったのかを書いていきます。

過去のゲームマーケット説明書特集記事は以下より。
今回の記事も以下で挙げたものと同じようなことが書かれていることがあります。気になる部分であることに変わりはないため、今後のためにも同じ指摘をしています。

誉め誉め説明書(実名)

良い説明書は名前をあげて褒めたいです。

カンバンメニュー

https://boardgame-bcafe.jimdofree.com/app/download/14849994323/KANBANMenu+Rulebook_JPandEN.pdf?t=1683021594  より

赤下線部分の文字を読むだけでだいたい遊べるそうです。本文と補足を段組みで分ける以外の形で、大事なところを強調できて、とても良い試みです。

ゲームの準備の記載の中にある、「最初は使用済み材料置き場には何もありません」という文も、場の概念を説明しつつ補足する、良い表記だと思います。

得点計算時のタイブレイク最終手段が、「2時間以上のゲームで決める」なのは笑ってしまいました。

メガボルテージプロレスリング

https://gamemarket.jp/game/180659 より

赤字・緑背景で大事なルールをまとめています。また、この赤字が何なのか明記はされていませんが、説明書最初の赤字(上画像でいうと左部分)で「ここは大事なルールを書くところ」だと察せられるようになっています。

説明書はどこを見ているのか

ここからは、内容物説明、など説明書のパーツごとにどんな事例があったのかを書いていきます。ゲームが特定できないように書いています。

文体

・全文が、何行かの段落からなる文章だけで書かれている。箇条書きがないので、必要な情報を検索しづらい。

・「●●みたいなもんで」
ラフな語り口の方が、普段話す言葉に近いため、読む際に入り込みやすいという方もいるかもしれません。
ただ、無難な文体の方が、文字通り難がありません。

・「●●しろ」など、操作指示が命令しているような書き方になっている。
少なくとも自分は不快感を抱いてしまいました。
一つ上と同じく、無難に書いた方が、説明書の目的である「読みやすく理解してもらうこと」を達成しやすいでしょう。

ページ数

説明書は、読むのにパワーを使います。
そのため、分厚い冊子であれば、開く前から意気込む人もいるでしょう。

そのため、例えば全ての操作に例を入れるなど、やみくもに丁寧にした場合、ページ数=読む負担が増えて逆効果になりがちです。

今までゲームマーケットで読んだ説明書は、ページ数が短いものを優先しています。力作になるほど読む覚悟が要るのです。

まとめる力

読むのに必要なパワーが少ない文量にするために、適宜省略すると良いです。
同じくくり・説明で済むことはまとめてしまい、違いを強調して書きます。そうした方が、読み手も「ひとくくり」で考えることができ、結果として分かりやすくなります。

例えば、次のように。

・内容物表記で、7種類のカードそれぞれに「×10枚」と書かれている。
「10枚ずつ」という表記の方がスマートです。

・5つのアイコンの説明について、内容が重複している箇所が多い。

・得点計算する分野のうち半分が、同じ計算方法である。それぞれの分野について、同じ文章で書かれている。

レイアウト

ページ数があっても読む覚悟を減らす工夫として、レイアウトがあります。
パラパラと目を通した時、「読みづらい文字だな」とか、「おおむね同じ色の背景と文字で、どこが本文か補足か分かりづらい」という印象をもってしまうと、パワーが出づらくなります。

具体的に気になったのは次の点です。

・濃い背景色に白字で書かれていて、配色の問題か見づらい。
配色については過去記事で書いていました。

人数ごとのルールの違い

・「以下の説明は、4人で遊ぶ際のルールです。2~3人用ルールは〇〇ページをご覧ください」
〇〇ページ以降のルールだけで遊べるわけではなかったので、誤解を招く表現です。

・「〇〇ページに2人用ゲームのルール差分が書かれているので、あわせてお読みください」
こういう表記が素敵です。

内容物説明

・内容物一覧が書かれていない
・説明書の終わりに書かれている

内容物というのはゲームの手順を理解する上で原則となる専門用語のようなものです。とても大事なので、最初に書いておくべきです。

・カードの数字ごとの内訳枚数が書かれていない
・カードの種類ごとの内訳枚数が書かれていない

自分がルール説明をする際、カードの内訳を伝えることが多いです。そのため、説明書に書かれていない場合は現物を数えることになります。
お願いします、書いてもらえますか……?

・プレー人数に合わせて、該当しない人数マークのタイルをゲームから除外した後、どんな内訳になるか知りたい

総数は分かるものの、人数別に調整した後の内訳が分からない場合も同様です。

・内容物、どちらが表か裏かわからない
裏面が共通した柄でない場合、裏面も活用したゲームのはずです。スムーズに説明できるよう、画像を載せるか、特徴を示して書いておきたいです。

・内容物説明の時点でボードとカードの説明が多すぎる

内容物の名前と数の説明をするのが内容物欄です。
それ以上の情報、例えばカードの読み方、アイコンの説明がこの段階で書かれていても、理解しづらいです。そして、本題であるゲーム概要の理解に進みづらくなってしまいます。

読み手には、ゲームの大枠を先に伝えた方が、理解が進みます。詳細解説は、関係する手順のところに後回しにしたいです。

・間違えやすい、まぎらわしい名前の内容物/専門用語がある

説明書ではなくゲーム自体への修正ではあります。

ゲーム準備

・手札が他プレイヤーに非公開か明記してほしい
・山札は裏向きで伏せるのか明記してほしい

いつも書いています。それぐらい気にするところなのです。

・山札をシャッフルする操作が書かれていない
当たり前のため書き忘れてしまうのも仕方ないところです。

・「プレイヤーカラーによる内容の違いはありません」
こういう表記、素敵です。

・ゲーム準備、使わないものはしまう記載がほしい
たとえば、4人上限ゲームで3人で遊んだ場合の余ったもの。

・得点トラックがどこにあるか書かれていないのに、「0点にディスクを置く」という記載がある。

・ゲーム準備の説明文の中で、ゲーム中の操作手順について言及するのは早い

準備している内容物のゲーム上の意味合いを、そのタイミングでついでに伝えることも可能です。
ただ、一度準備を終えるとゲーム準備の項目を読むことはありません。そこで書いていても、後の説明で重複して書いておくべきです。

スタートプレイヤーが決めれないときの記載がない

理解してもらいづらいと思いつつ、いつも書いています。
だって、「一番若い人」って定義したら、同じメンバーで遊ぶと固定じゃないですか。こういうアナログゲームのお約束・冗談が通じない人もいるかもしれません。

手番順

時計回りなのかどうか、書いていないことが、たまにあります。

用語定義

・「プレイエリア」など、場の名前の定義が例示にしか書かれていないので見落としがち

・「初心者用ルール」とは何なのか、書かれていない

・後で説明する予定の操作のことは「(後述)」と書いておいてほしい

読み手を混乱させないよう、初めて出てくる専門用語の説明には気を付けましょう。

書く順番

読み手の理解しやすい順番を守っていきましょう。

・注意点がゲームの流れの前に書かれているが、この段階では理解しづらい。一部は例外処理のことが書かれている

・内容物を説明する前に、勝利点の計算方法や場の説明をしているが、この段階では理解しづらい。

・終了条件を説明する前に勝利条件が書かれている。逆が望ましい。

配置、内容物操作

内容物を置いたりめくったりする際、曖昧な表現だと遊ぶイメージが間違って伝わってしまいます。
ただ、そういった物理操作は、特に位置関係を文章で示すのは難しいので図示していく方が良いです。

・カードの配置、始めはどこから配置するかが明確になっていない。

・どちらが縦列、どちらが横列かの定義がない

・山から引いたタイルについて、向きの指定がない
・場にカードを置く時は表向きという記載がない

どちらも当たり前かもしれませんが、一応。

・場へのカードの置き方がやや分かりにくい。重ねず、円状になるように置く、など、具体的な形がわかるように書いておきたい。

・「緑色の上には置けない」とあるが、例示の枠の色も緑色でまぎらわしい。「緑色のシンボル」など、対象を具体的にすると良い。

・場へのタイルの置き方について、一列3枚までか、重ねておけないかどうかが、書かれていない

・ワーカープレースメントのアクションスペース等で、複数プレイヤーが同じ対象を選んではいけない、いう記載がない

1スペースあたりの上限、制限については、細かく書いておく意識が必要です。

・該当するカードを山札から探して出す、と明記されていない

・取ったカードを手札に加えるか場札にするか記載がない

・コマを積み重ねられる数の上限について記載がない

こんな記事も以前書きました。配置関係です。

手番

①タイミング

「手番中」と一口に言っても、色々なステップ・タイミングがあります。
手番は1ラウンド中に複数回回ってくることもあります。

・所持上限数を超えることができるのか、捨てて入れ替えられるのかが明記されていない。
・所持上限数を超えた後に、捨てるタイミングについて具体的に書いてほしい。手番終了時なのか、もらった直後なのか。

→この辺りは、所持数のやりくりを考える上で大事な情報です。

・「好きなタイミングで1回」使える効果は、毎手番使えるかどうか分かりづらい

・ゲーム終了判定をどのタイミングで判断するか、記載がない
ラウンド終了時、各プレイヤーの手番終了時、など。

・カードを獲得した後、いつ勝利点が得られるか記載がない。即時なのか、終了時なのか

②対象の定義が曖昧

ここなのか、そこなのか。効果対象をハッキリ書いていないゲームは、ルール読解の手間を増やしてしまいます。

・このカードの効果に書かれている「カード」が、「このカード」だけを指すと思うが書かれていない。具体的に表記してほしい

・「〇〇ポイント」の数え方について、手番プレイヤーの数字を合計するのか、プレイヤー全員の数字を合計するのか分からない

・自分が手元に建てたカードは、自分しか効果を使えないと、明記してほしい

・得点が2人以上同数だった場合の「その順位を均等に割る」の「その順位」がどれを指すのか明記してほしい

・「2種類の点数の差」とあるが、どの点のことか明記した方が良い

・「他のプレイヤーに点を渡す」→どこから渡すのか。ストックか、渡すことになるプレイヤーから点を移すのか

・他のプレイヤーのコマを利用した際に誰が資源をもらうのか、明記して置いた方が良い

・誰が最初にカードを出すのか書かれていない

③説明を省略してしまう

・カードでアイコンで示されているからなのか、カードの見方や使い方の説明を省いている

・もらったタイルの得点計算方法について、タイルに数字が書かれているからなのか、どう集計するか書かれていない。

数字の定義

数字を使って争うことが多いアナログゲームでは、いくつかのかをはっきりさせて書きましょう。

以前にこんな記事を書きました。

・書き込める数字の上限について記載がほしい

・カードを1人何枚引くか記載がない

・得点計算で「ボーナスがもらえる」とあるが具体的な点数で示されていない

・いくつか買えるだけのお金があっても、得られる資源が1つだけかどうか、記載がほしい

・「出した手札の数」
→枚数と誤解される表記をしている。「出した手札に書かれている数」とするのが望ましい。

・〇〇スペースには1ラウンドに計5つまでしかコマが置けない、と明記しておいてほしい

・1手番で買うことのできるカード枚数について記載がほしい

例示

・例示にしか書いてない情報がある

・例示には、ある程度高い確率で起こる例外処理を入れた方が良い

例外や、解釈が怪しい点、ゲームのよくあることも一応書く

・カード効果によるボーナスアクションが、通常アクションと違ってコストが不要かどうか、記載がほしい

・払う資源がない場合の処理について記載がほしい

・支払えない額の入札はできない旨、記載がほしい

・手番順決めで得点が複数人同じ場合にどうなるか記載がない

・スタートプレイヤーの決め方については書いてあるが、スタートプレイヤーがリーダーコマを持つとは書かれていない

・二つの点をかけ算する得点計算で、ゼロにかけ算をした場合の得点はゼロである旨、記載がほしい

・以前の手番で建築したものと同名の建物カードを建築できるか不明瞭

・スタートプレーヤーが移動しないこともあるかどうか、書かれていない

誤解のないように書く

・カードを1枚場に出すのは「出せます」とあり、強制か任意か分からない

・「山札が尽きた場合、もう得られない」という表記は、もう一つある山札からも得られないと誤解されるので「補充されない」などとする

・目標とする得点を自由に決められるが、得点を決める目安について書いてほしい

・「カード上における」→「置ける」か「ける」なのか、やや不明瞭なので「置ける」とする

・「Aとアの組み合わせではこうなり、Bとイの組み合わせでは……」というようにパターンわけが多いルールを文章で書いているため、分かりづらい。
→Aの場合、とまず段落をわけて書いたり、表で示したりした方が良い

・「両方の種類のコマを配置することができます」
→1個しか置けないルールであるはずですが、「両方」という表記から2個置けると思う人がいるかもしれないので、「どちらでも配置できる」という表現が良い

おわりに

投稿がゲムマを過ぎてしまいました。
次回からはもう少し頑張って執筆します。

以上です。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

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