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ゲムマの説明書 100本読んで考えた(ゲムマ22秋) :ゲームのルールの伝言ゲーム

こちらはアナログゲームマガジンの連載「ゲームのルールの伝言ゲーム」の20回目、途中から有料となります。文字数は約4,600字です。

はじめに

番外編です。10月29日・30日にゲームマーケット(以下、「ゲムマ」)秋に出店された方、おつかれさまでした。自分も29日のみ入場し散財しました。

人が多く、大盛況でした。

事前にこういった記事を書いています。今も手に入る作品があるかもしれません。ご覧いただければ幸いです。

また説明書100作品読みました

さて、今回は、以下の記事で書いたような、100作品の説明書を読んで、思うところを書くことにします。

説明書を読むのは時間がかかるため、効果説明・オプションルールまでは読めていないことが多いです。ページ数が少ないもの、「読みやすそう」なものから読んでしまうため、軽量~中量級に偏っていることを最初にお断りしておきます。

・パッと見 … 第一印象で「読んでみたい」「読みやすい」、大事です
・文字の読みやすさ … 行間・字間・1行の長さ、文字の明度差など。
・デザインの見やすさ … レイアウトや枠の、画像の使い方など
・ルールの不足がないか … 書いてほしいルールが書かれているか
・わかりやすい表現・構成か … 書かれていても伝わるか。各項目の順番も大事です
・【総合評価】 平均値ではなく、トータルで考えた数値です

これら6項目をそれぞれ5段階評価しました。ただ、「1」や「5」評価することはほぼ無いため、数字にばらつきは少ないです。

何かしらの項目に評点「2」をつけた、大きく問題があると思う説明書は22作品ありました。全体の1/5です。

以前の記事ではランキング形式でしたが、今回は、「正しくゲームが遊べなくなる」ような、問題が特に大きい部分を、を6点挙げて、具体的に書いていきます。

①キモとなるルールには図示、専門用語には説明を入れる

数字の書かれたカードを手札から共通の場に出す、カードを山札から引く。それだけの単純なゲームであれば、文章以上の説明は要らないかもしれません。

多くのゲームには特殊なシステムがあります。遊び手が新鮮さを覚えるようなシステムが、魅力の一つでしょう。
一方で、新鮮だということは、「なじみがない」ことでもあります。文章で説明しても、作者の思うゲーム像が、そのまま読み手に伝わるとは限りません。正確なルールで遊ばれないのはもったいないです。

キモとなるシステム部分のルールほど、文章で詳しく書く工夫もしつつ、図などのビジュアルで表現して誤解のないようにした方が良いでしょう。

……と、書いてはいるものの、「この部分、図示が載って無いの?」と思うゲームは少ないです。

説明することを省かれがちなのが、カード・ボードの情報です。数字もアイコンも、専門用語であり、そのゲーム独自のものですし、そもそもカードといった内容物じたいも、読み手には特殊なものです。

・カードが複数種類あって、見分ける方法が書かれていない・画像が載っていない
・カードの裏表の見分け方が書かれていない・画像が載っていない
・カード上の数字について、呼び名や単位、意味合いを説明していない(例:勝利点・コスト・戦力)

こういったことで読み手を置いてけぼりにしないようにしましょう。

②ターンやラウンドを繰り返すための説明に気を付ける

今回読んだ中で目立ったのが、「手番順について詳細が書かれていない」ことです。
「手番の順番を決める」: 時計回りでなく、じゃんけんで勝った順でいいのか
「手番はスタートプレイヤーから順番で進める」: どんな順番か書かれていない

手番順はゲームによってさまざまです。ゲームバランスに大きく影響します。切実に書いてほしいです。

「スタートプレイヤーから」といった、ターンの始点が書かれていないこともあります。

始点、順番、手番の流れ、ターンの終了条件(終点)、ラウンドの終了条件、次ラウンドの準備。正しくゲームを回すために、丁寧に書いてほしいです。

過去記事から


同じく過去記事から

・メインアクションがいくつかのフェイズに分かれている場合に、1人のプレイヤーの手番がどこからどこまでかを明確にします。次のフェイズも続けて1人でやってもいいのか、それとも全員が手番を終えてから次のフェイズなのか
最後に「次のプレイヤーの手番になる」と書いておけば安心です。

・ラウンドクリンナップ処理・次のラウンド準備が書かれていないことがある。説明書のどこまで戻って、今までとは何を変えて次のラウンドになるのか(例:ラウンドマーカーを進める)。
ワーカーを戻すのか。いったんゲームから除外したものや捨て札、場札も元に戻すのか

・手番は一周のみか、条件を満たすまで何周もするか

ターンやラウンドといった、グルグルの形が読み手にも見えるようにします。

③場所や対象などの定義を明確にする

今回、一番気になったところです。

場所:具体的な場所、置き方
場やモノといった対象:誰のものか、共有か
数の条件:誰にとっての数か、ゲーム全体の数か
     条件の一部でもいいか

何気ない表記が誤解され、正しいルールで遊ぶことを妨げてしまう部分です。図示や例で表現するのも大事ですが、こういった場所や対象などが誤解を招きやすいと認識した上で、丁寧に文章で表現することをオススメします。

以下、色々な羅列です。

●場所

・「上」とはどこから見た上なのか、何も書かないと積み重ねる「上」と思いがち
・「●●置き場に置く」「並べる」とあるが、積み重ねる、横に並べるなど、どう置いていくのかわからない
・配置ゲームで、最初に配置する時の例外が書かれていない(盤上には無いからストックから持ってくる、どこに置いても良い、など)
・ボードの具体的にどこに置くのか(同じ形のマスがボードに描いてあるとしても)
・テーブルの座り方(一番近くの場のものを操作するゲームなどで)
・配布して余ったものをどうするか
・消費した資源をどこに戻すのか
・ある物の「前」「後ろ」の位置は前/後ろの全てか、すぐ1つ前か
・円状のボードなどで、どこが前でどこが後ろか、どちら向き進行か

●対象

・ゲーム準備時の選ぶものについて、ゲーム共有で1つを選ぶのか、プレイヤーごとに選ぶのか
・「●●カードと△△カードをシャッフルする」→それぞれシャッフルするのか、混ぜてシャッフルするのか
・自分の色のコマ等しか動かせない・操作できないのか、他のプレイヤーのものでもいいのか
・置き場や捨て札置き場は共有か、個人のものか
・「初期手札の選択」や「カード交換」は恣意(プレイヤーが内容を見て選ぶ)のか、ランダム(表を見ない)か
・手番プレイヤーが他人を攻撃する効果を使った際の、「そのプレイヤー」は誰のことか

●数などの条件

・「最初のターン」とは、「そのゲームの最初」か、「そのプレイヤーにとっての最初」か
・「2枚目」「最後」「数値上限」とは、ゲーム全体で見た数か、そのプレイヤーにとっての数なのか
・「3歩動く」は3歩のみか、1~3歩も選べるのか
・枚数・個数制限はないのか(特に配置系ゲーム)
・「●●方向に進める」→歩数制限・上限はあるのか、ないのか
・「●●できなかった場合、ラウンドが終了する」→できなかったプレイヤーだけこのラウンド中はパスするのか、ゲーム全体でラウンドが終了なのか(前者だったことがあります)

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