民営化の怪しい成果

目黒区も他の自治体と同じで、様々な事業が民営化しています。今回はその中で学童保育の民営化について触れたいと思います。

個々の反証については下記マガジンにまとめています。

📖民営化してもコストは下がらない
📖民営化しても満足度は上がらない
📖民意排除による民営化

疑わしい３つの成果

目黒区では、先んじて下記の４学童を民営化し、その成果をもって、その後の民営化計画を作る予定となっていました。

・2017年(H29) 中根小内学童・宮前小内学童
・2018年(H30) 烏森学童
・2019年(R1) 不動学童・不動児童館

その成果を区民へ次のように示しています。

（１）事業者の運営実績を活かした円滑な運営及び保育の実施
事業者選定の段階で他自治体での運営実績を加味し、また、丁寧な事業引継ぎを行うことで、民営施設の利用者アンケートの総合評価では、「大変満足」、「満足」を合わせて９割近くの回答が得られています。
（２）利用時間の延長及び対象学年の拡大などのサービスの拡充
令和３年４月から、全民営施設で利用時間の延長及び対象学年を拡大する予定であり、サービスの拡充効果が得られています。
（３）施設運営費の圧縮及び財政負担の軽減
民営化した施設は、利用者の満足度が高いことに加え、公営時と比較して施設運営費を圧縮できており、区の財政負担の軽減につながっています。

これを見た感想としては「満足度も高く・サービスも拡充・費用も抑えられる。素晴らしい!!」ですよね。この成果をもって、このようなご時世ですが敢えて下記学童を民営化しようとしています。

・令和５年：菅刈学童・目黒本町学童・ひもんや学童
・令和６年：田道小内学童・油面小内学童
・令和７年：東山児童館・東山学童
・令和８年：緑が丘児童館・緑が丘学童

令和３年の６月に計画が決定され、同年７月には事業者の選定委員が決まるという、とても慌ただしいスケジュールで、該当学童の保護者達が巻き込まれています。

そこで改めてこの３つの成果を調べなおしました。結果としてはギリギリ嘘ではありません。ただし、この文章を見た人に誤解を与える内容であることは明白で、区民説明会などで私の方で指摘していて、いくつか訂正されています。

詳しくは 区民意見募集の実施結果（民営化計画素案に対する意見と検討結果） を参照してください。（目黒区のPDFは一定期間で削除されるので、同じ物をBoxへ置いてあります）

民営が悪いわけではない

この記事は民営を否定するものではありません。私自身民間の人間なので民営の良さはあると思います。実際、目黒区の学童は民営も区営も評価・費用含めて大きな差はありません。ここで問題視しているのは民営化の目的と民営化の成果を良く見せようとする隠蔽に近い情報公開の仕方です。

独自調査結果

調査結果を表にまとめてみます。

これから一つ一つ解説していきますが、目黒区の３つ成果は下記のように説明できます。

（１）事業者の運営実績を活かした円滑な運営及び保育の実施
実施した４つの学童のうち１学童で民営化後に満足度が上がった。１学童は変化が無く、２学童については満足が下がっている。しかも、満足度が下がった１学童は職員の離職が続き児童にまで影響を及ぼすトラブルに発展している。これほどのトラブルは2013年まで遡っても公営・民営含めた全学童で起きていない。民営化が無ければ起きなかったトラブルと言える。目黒区としては事業者に委ねているので、根本的な対応はしていない。また、民営化後３年ほど経過すると、満足度が一度下がった学童も元の水準近くまで戻るので、目黒区としては問題視していない。

（２）利用時間の延長及び対象学年の拡大などのサービスの拡充
対象学年の拡大は公営でも実施済みなのでサービス拡充にはあたらない。利用時間延長は令和３年度から民営・私立で先行実施なので、４学童の民営化の成果ではない。しかも公営での延長時間対応は検討中である。そもそも４学童民営化の際には公営と同じ基準で運営することが基本方針だったので、この項目を成果として上げるべきではない。

（３）施設運営費の圧縮及び財政負担の軽減
烏森学童は民営化前後で年間500万円ほどの削減ができている。中根小内学童は1000万円ほどの費用増、宮前小内学童は増減していない。この単独学童だけで言えば費用増だった。不動学童・児童館は、そもそも学童と児童館で独立した費用計上がなされていないので単純な比較はできないが、合算値の比較で言えば、年間2700万円ほどの削減ができている。今後、学童・児童館で別れた費用を目黒区には求め比較したい。

３つの成果への反証

目黒区が目黒区議会や区民にどのように誤解を与え、実態はどうなのかを検証していきます。

📖民営化してもコストは下がらない
📖民営化しても満足度は上がらない
📖民意排除による民営化