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今日も、読書。 |多和田葉子さんとの出会い

2022.1.16 Sun

2022年は月に1回くらいのペースで、美術館に通いたい。

首都圏で生活する利点のひとつは、美術館が豊富にあることだ、と誰かが言っていた。本当にそう思う。調べてみると、常に何かしら美術展をやっていて、観るものに困らない。

今月は、三菱一号館美術館だった。「一号館」の後に「美術館」をつけるという、なかなか攻めたネーミングだ。目当ては「イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜」という美術展だった。日本初上陸の印象派作品が多数とのことで、すごく楽しみにしていた。

原田マハさんの『ジヴェルニーの食卓』や『たゆたえども沈まず』を読んでから、印象派の画家たちに尊敬の念を抱いている。

時代の常識に逆らい、新たな潮流を作り出した、勇気ある者たち。彼らが信じた芸術を貫き通してくれたおかげで、今こうして、私のような人間が素晴らしい絵画を鑑賞することができている。本当に感謝しかない。自分に絵画史の知識が乏しいことを承知の上で、私は印象派の作品が、一番好きだ。

美術館に足を運んだ時には、ポストカードを買うようにしている。

ポストカードを無造作に部屋の壁に貼るような、そんな細やかな美しさと隣り合わせの、丁寧な暮らしに憧れがある。これまで私は、芸術に触れることに対して、必要以上にハードルを感じていた。でもそんなふうに構える必要は全くなくて、ポストカードを貼るとか画集を眺めるとか、等身大の生活の中で、自分なりに芸術を楽しめば良いのだと思う。

部屋のポストカードを眺めることだって、ひとつの芸術鑑賞だ。



2022.1.17 Mon

184日目。
このところ、今読んでいる本について、あまり書いていないような気がする。2022年になって、今のところ14冊の本を読んだらしい。平常運転である。
小野寺史宜さんの『ひと』、伊藤計劃さんの『虐殺器官』、村上春樹さんの『ダンス・ダンス・ダンス』などを読んでいた。中でも『ひと』が好きだった。『ひと』のような、人と人との温かい交流を描いた小説に、自分の好みが移ってきているというのが最近の傾向のようだ。

読書の関心は、日々移り変わる。

私は数年前まで、ミステリしか読まない、ミステリしか楽しめない体質だった。そう、思い込んでいた。その他のジャンルの本を読んでも、どこか物足りなさを感じていた。

それが今では、ミステリを読むと物足りなさを感じるという、全く逆の状態になっているから面白い。これはどのジャンルの本が優れているかという話ではなくて、ひとが本を読むという行為が、多様性を孕んでいるという証拠だ。その時の環境や経験などによって、読み手の受け取り方は変化する。

今は馴染めない本があっても、きっといつか、自分の好みのピントがぴったり合う日が来るはずだ。そう思えば、読書が少し楽になる。



2022.1.18 Tue

185日目。
このところ、ひとに本を勧めてもらう機会が重なった。友人と一緒に書店へ行き、互いに相手に読んでほしい本を1冊ずつ選ぶ。この人なら、きっとこういう本が好きなのではないか、と想像を巡らせて書店を歩くのが楽しい。

人に選書してもらうことの、なんと嬉しいことか。

自分ではなかなか手に取らない本との出会い。この人は普段こういう本を読んでいるのか、という発見。互いに選書をし合うことで、普段は口に出せない心の内を、本に乗せて届けるような感じ。本を贈り合う文化ってあまり聞かないけれど、私はもっと広まってもいいのではないか、と思う。

年末に、友人に選んでもらった『星の辞典』。

読書イベント「読むしかできない」でいただいた『地球にちりばめられて』。

大学の親友に選んでもらった『停電の夜に』。



2022.1.19 Wed

186日目。
あらすじなしで、本を読むことの楽しさについて。

文庫本を読むとき、私は必ず、先にカバー背表紙のあらすじを読む。というよりも、あらすじを読むことで、次に読む本を選んでいる。有名な作品に至っては、SNSを周回しているだけで自然とあらすじが頭に入っている。

単行本は、本のカバーにあらすじが書かれていないことが多い。図書館の単行本には帯もついていないから、検索して調べない限り、どんな筋書きなのか分からない。私はよく図書館で、どんな話か分からない小説を、装丁とかタイトルの響きとかで、直感で選んで借りたりする。そして、あらすじを事前に調べることなく、そのまま読み始める。

本を開き、読み進めていくごとに、これはこういう話なのか、と段々分かってくる。かと思えば、自分が想定したものとは全く違う展開が待ち受けていて、驚いたりする。予測、期待、裏切り。普段とは違う、新鮮な読書が楽しめるので、おすすめだ。

もっとも選んだ本が、いつも自分の好みの本とは、限らないけれど。



2022.1.20 Thu

187日目。
多和田葉子さんの『地球にちりばめられて』という小説がすこぶる良かったので、少し書きたい。

「読むしかできない」というイベントに参加した際に、主催者のAkaneさんに選んでいただいたのが、この本だった。読書会で好きな作家や作品についてお話しして、じゃあきっとこれも好きですよ、とお勧めいただいた作品だった。その後読んでみて、どうしてこんなにも私の好みが分かったのだ?と、衝撃を受けた。Akaneさんは、エスパーだったのかもしれない。エスパーの方に会ったのは初めてだった。

恥ずかしながら、私は多和田葉子さんという作家さんを、今作で初めて知った。日本語とドイツ語で小説を書かれているそうで(これはとんでもなくすごいことだ)、ノーベル文学賞の候補にも選出されていると知り、なぜ今まで知らなかったのだろうと驚いた。村上春樹さんしか知らなかった……メディアの陰謀だろうか(違う)。

『地球にちりばめられて』は、日本(と思しき国)が何らかの理由で消失(?)した世界で、独自の言語「パンスカ」を操るHirukoという女性が、自分と同じ母語話者を求めて旅をする物語。私は大学で言語を学んでいたので、あらすじを聞いただけでこれは好きな作品だと確信した。自作の言語が出てくるなんて、面白すぎて反則だ。

海外で自分の母語を話す時の安心感は、筆舌に尽くし難いものがある(経験談)。本書は、日本語(と思しき言語)話者が消失し、ただひとりHirukoという女性が取り残された世界が舞台だ。広大な世界の中で、母国語をネイティブに話せる人が、自分以外にいないかもしれないという状況。想像するだけで、その果てしない孤独に、足がすくんでしまう。自分が話す言語に、確信が持てなくなってしまうだろう。

Hirukoも、物語が進むにつれて旅を共にする仲間を見つけていくが、それでもやはり孤独と戦っていたように思う。祖国という拠り所を失って移民となった彼女は、母語で意思疎通が図れないことの寂しさを忘れるために、「パンスカ」という独自の言語を作り出したのではないだろうか。「パンスカ」であれば、母語で話すときのような深い相互理解は難しくとも、誰とでも一定の距離を保つことができる。そうでもしないと、周囲にたくさん人がいる中での孤独感に耐えられなかったのだと思う。

Hirukoは、この物語の果てに、自らの拠り所を見つけることができるのか。ぜひ読んでみていただきたい。



2022.1.21 Fri

188日目。
「平家物語」というアニメ作品が、この1月から放送されている。フジテレビの「+Ultra」で、毎週水曜の24:55にやっている。ずいぶん攻めた時間帯だ。24:55という表記方法が、存在することを初めて知った(木曜の0:55ではないのか?)。ともかく、私はこの作品が始まるのを、ずっと心待ちにしていた。

平家物語については、高校の文学史で勉強したはずなのだが、残念ながら「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」しか記憶になかった。おそらく、誰かしら平家の人が出てくるであろうことは分かる。それくらいの事前知識しか持たない私が、それでも1話を観て、これはすごいアニメ作品だと感じた。

まず、グラフィックデザインの美しさにやられる。柔らかいデザインで、色彩が豊かだ。次に、羊文学さんのオープニング曲「光るとき」に心を奪われる。もうYouTubeで10回はリピートしている。そして、主人公の少女びわの可愛さ、彼女を支える重盛の優しさ、未来と死者の魂が見えるという彼らの不思議な瞳、栄華を極めた平家に忍び寄る影……と夢中になっているうちに1話が終わり、これは期待以上だと思った。

そもそも平家物語を、現代風のアニメーション作品として放映しようという発想が、もうそれだけで好きだった。おそらくこうでもしてくれなかったら、私は平家物語という作品に触れることなく、一生を終えていただろう。感謝しかない。これからどういう展開になっていくのか、毎週の楽しみがまたひとつ増えて嬉しい。



2022.1.22 Sat

「日経TEST」という資格の勉強をこの1カ月ほど続けていて、今日がその試験日だった。目標としていた点数を超えることができ、ほっと一安心。社会人になってから4つ目の資格取得となった。もっとも日経テストは結果がスコアで返ってくる試験のため(TOEIC的な)、不合格になることはないのだが。

次は、基本情報技術者試験に照準を移していく。基本的にオフの時間で仕事について考えたくはないのだけれど、自分のスキルを向上させるため、資格試験は積極的に受けようと思っている。仕事と読書を今まで通り続けながら、資格の勉強も習慣づけていきたい。

「日経テスト」をテストセンターで受験し、そのまま書店へ直行。書店に向かう過程の記憶が全くないので、無意識のうちに書店を欲して身体が動いていたらしい。基本情報技術者試験のテキストを買うために訪れたはずが、これは合格祝いだからと誰向けかわからない言い訳をしながら、関係ない小説を買いまくった。それでもなんとか、基本情報のテキストも忘れずに買うことができた自分を褒めたい。よくやった。

帰宅後はスターウォーズのエピソード5を観る。自分としては珍しく、ノンストップでエンディングまで観た(私は映画を30分×4セットみたいに分割して観る)。アナキンは、なんとかギリギリ踏み止まってくれた。公開順に観ているので当たり前だが、どんどん映像が綺麗になっていく。

その後は桜庭一樹さんの『私の男』を読む。心がぐちゃぐちゃに掻き乱される、これは危険な小説だ。読書会で、中学生の時にこれを読んで以来『私の男』が一番好きという女性がいたのだが(実はその方の本紹介が面白くて買った)、それがいかにとんでもない話なのか分かった。この作品の感想もそのうち書きたいが、自分の語彙力でこのぐらぐらした感覚を表現できるか不安。

夜は蒼井ブルーさんの『ピースフル権化』を読んだり、『星の辞典』を読んだり、ミスチルのライブDVDを観たり、三四郎のオールナイトニッポン0を聴いたり、そして今、この読書日記を書いたりしている。

あまりにいつも通りの、まさに私の休日って感じの休日だったので、何をしていたかつらつらと書き並べてみた。自分以外の人が、特に何も予定がない休日をどういうふうに過ごしているか、興味ある方いませんか?私は興味があります。そんな方に向けて書いた。



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