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今日も、読書。 |本作りのバトンを、繋いでいく

2022.1.30 Sun

破戒:42ページ
ちくま文庫から出ている、『小説の惑星』という本をご存知だろうか。

日本を代表する小説家・伊坂幸太郎さんが、ご自身が好きな短編小説を集めてドリームチームを作り、2つのアンソロジーとしてまとめてくださったのが本作だ。イラストレーター・たむらしげるさんの、童話世界のような可愛らしい装丁が、書店で目を惹く。そして、そのイラストから着想を得て伊坂さんが命名したという、「オーシャンラズベリー篇」「ノーザンブルーベリー篇」という名前もまた、可愛くて良い。

本作には、様々なジャンルの短編小説が収録されていて、どの作品を好きと感じたかによって、その人の読書傾向が分かるような気がする。皆さんは、どの短編がお気に入りだっただろうか。

私は、「オーシャンラズベリー篇」では阿部和重さんの『Geronimo-E, KIA』、「ノーザンブルーベリー篇」では佐藤哲也さんの『Plan B』より「神々」「侵略」「美女」「仙女」が、特に良かった。このお二人の本は未読だったので、ぜひ読みたいと思った。特に阿部和重さんの『Geronimo-E, KIA』は、こんな小説があったのかと驚き、中学生の頃に夢中になったゲーム「メタルギアソリッド」を思い出した。小説を読みながら、ゲームの世界に入り込んだかのような臨場感があった。

いつか私も、自分が好きな短編小説を集めて、ドリームチームを結成してみたい。米澤穂信さんの『玉野五十鈴の誉れ』、北山猛邦さんの『妖精の学校』、綾辻行人さんの『どんどん橋、落ちた』などは、間違いなくメンバー入りする。ただ、短編のジャンルが著しく偏ることは間違いないだろう。そう考えるとやはり、伊坂幸太郎さんの読書の幅の広さはすごいと思う。



2022.1.31 Mon

194日目。
破戒:60ページ
昨日は、少し(かなり?)遅めの初詣に行ってきた。人混みが苦手なので、毎年1月の末に行くことが恒例になっている。しかし、1月30日にもかかわらず、結構参拝者がいたことに驚いた。今年は多くの人が、人の集まる年始の参拝を避けたのだろう。

さて、初詣と言えば御神籤だ。御神籤を引くために、初詣に行くと言っても過言ではない。私は今年後厄だが、そんなことはよろしい。

結果は、大吉だった。どうやら、目上の人を敬うと、その人からの思いがけない引き立てで、幸せに暮らすことができるのだそうだ。2022年は、目上の人を敬う気持ちを忘れず、謙虚な姿勢で過ごしていきたい。

因みに、密かに期待していた「商い」の運勢は、「騒ぐと損」で、それ大吉の御神籤に書くことですか?という感じだった。「騒ぐ」って何だ?

藤村の破戒はというと、第三章まで読み進め、ようやくタイトルの「破戒」が何を指しているのかが分かってきた。ずっと「破壊」という漢字のイメージで読んでいたので、「戒めを破る」という意味で破戒か、と今更ながら納得した。ペースはとてもゆっくりだが、その分、一場面一場面をじっくり味わいながら、読むことができている。ただ、他に読みたい本が多すぎて、どうしても破戒は後回しになりがちだ。



2022.2.1 Tue

195日目。
破戒:98ページ
BIBLIOPHILICという、読書グッズを取り扱ったブランドが好きで、ブックカバーやしおりなどを愛用しているのだが、最近YouTubeチャンネルが開設された。すぐに登録した。

記念すべき1本目の動画の内容が、「グラシン紙の掛け方」。読書好きの視聴者しか眼中にない感じが、堪らなく好きだ。グラシン紙のこすれる音が心地良く、非常に癒されるASMR動画(?)だったので、是非観てみていただきたい。

グラシン紙を掛けるような、丁寧な読書ライフに憧れはあるものの、根が面倒臭がりのため、実行する気配は全く無い。家にある全ての本にグラシン紙を掛けることを想像すると、それだけで疲労感が込み上げてくる。グラシン紙を掛けている人の投稿を見ると本当に尊敬するし、私の本にも掛けてくださいませんか、と思う。

本を劣化から保護してくれるグラシン紙。私も本の日焼けや湿気などには一応気を配っているものの、たまに本を避けて埃を払ったりするくらいで、これといった対策はできていない。

毎月のように増えていく蔵書たち。本棚にずらりと並んでいる姿を見ると嬉しくなってくるが、本当に大切な本だけを手元に残して、それこそグラシン紙で優しく包んであげたりするような、そんな丁寧な読書生活もいいな、と思う。



2022.2.2 Wed

196日目。
破戒:98ページ
そういえば、第166回芥川賞・直木賞が発表された(もうだいぶ前だが)。
芥川賞は砂川文次さんの『ブラックボックス』。直木賞は米澤穂信さんの『黒牢城』と今村翔吾さんの『塞王の楯』の2作が受賞した。

砂川さんと今村さんの作品は読んだことがなくて、ぜひこの機会に読んでみたいと思うのだが、逆に米澤さんの作品はほとんどすべて読んだことがあるので、今日は米澤さんについて語りたい。

米澤さんとの出会いは『氷菓』で、「古典部シリーズ」は私の高校時代のバイブルだった。『氷菓』は私に読書の楽しさを教えてくれた、大切な小説のひとつだ。当時の私のLINEのアイコンは、アニメ版氷菓の折木奉太郎だった。

そして『さよなら妖精』。私はこの作品が一番好きで、Twitterの「#名刺代わりの小説10選」でも選出している。こちらも『氷菓』同様に学生が主人公の「日常の謎」ミステリなのだが、ラストの壮大な伏線回収があまりに見事で、全ての記憶を消してもう一度読めますと言われたら、私は記憶を消すかもしれない。

『折れた竜骨』も良い。剣や魔術が登場するファンタジーとミステリが融合した、他に類を見ない作品だ。魔術などというものが登場したら、論理的な推理が必要なミステリが成り立たなくなってしまうのではと思うが、そこは米澤さん、ラストの謎解きは見事である。

『黒牢城』は「歴史小説×ミステリ」とのこと。常に新しいジャンルのミステリに挑戦し続ける姿勢は本当にすごいし、それが直木賞を受賞して評価されるのもすごい。米澤さんを初期の頃からずっと追いかけてきて、今回直木賞を取られて、本当に本当に感動した。

そしてなんと、KADOKAWAから古典部シリーズの新作長編を発表予定という、ビッグニュースも飛び込んできた。米澤さん、一生ついて行きます。



2022.2.3 Thu

197日目。
破戒:98ページ
普段はあまり新書を読まないのだが、父がよく新書を買ってくるため、たまにそのおこぼれをもらうことがある。『スマホ脳』もそういう経緯で読んだ本だったのだが、さすが2021年上半期ベストセラー1位になった本だけあって、刺さる内容だった。

スマホは、手に持って使用していなくても、例えばテーブルの上に存在しているだけで、人の集中力を奪っているらしい。知らないうちに「スマホを見ない」という選択をしていて、他に集中すべき行動を妨げるのだそうだ。それだけ私たちは、スマホというものに、脳を支配されているのだ。

スマホは読書家にとって天敵で、本が読みたいのに、ついついスマホを触ってしまうということを、私は飽きずに繰り返している。YouTubeで別に観たくもない動画を観終えた後に、またやってしまった、私には学習能力が備わっていないのか?と愕然とする。そして、これを永遠にリピートするのだから、救いようがない。

一番良いのは、一日のうちスマホを使う時間を予め決めておき、それ以外の時間はスマホを封印することだ。物理的な封印だ。同じ部屋にスマホがあってはダメで、別の部屋の、できれば簡単に手に取れないような場所に置いておく。

果たして、今の人類にそんな無理難題が可能なのか怪しいものだが、スマホの危険性は把握しておかなければならないと思う。スマホを捨てるということは、鎌倉時代でいう、俗世を捨てて出家するのと同じくらいの覚悟が必要ではないか?



2022.2.4 Fri

198日目。
破戒:107ページ
破戒を読んでいる。

勤め先の小学校で、校長から異端者扱いされ、何か理由をつけて辞めさせられそうな丑松。自分の味方にならず、生徒からの指示も厚い丑松を鬱陶しく思い、自分は傷付かぬよう遠回しに、他の教師を唆して攻撃する校長。校長、狡猾な男だ。破戒のヒール役は、この校長で間違いない。さすがに、丑松と校長が後半になって和解するような展開は、想像できない。

丑松は他人想いの人間で、特に弱い立場の人の側に立って物事を考えることができる。だからこそ、身分を偽り、何不自由なく暮らしている自分に罪の意識を感じる。この優しさんに、なんとなく、『塩狩峠』の主人公・永野信夫を思い出した。



2022.2.5 Sat

破戒:107ページ
大切な本に出会った。

三輪舎から出版されている『本を贈る』。

本を作り、贈り物のように読者へと届ける、その道のプロたち——著者・編集者・装丁家・校正者・印刷・製本・取次・営業・書店員・本屋。書き手から読み手まで、本作りに関わる人たちが順番に綴った、「本を贈ること」についてのエッセイ集。

このところ「本を作る」ということに興味があり、本書はドンピシャだった。一冊の本が出来上がり、読者の元に届くまでの過程には、本当に多くの人が関わっている。本棚に並ぶ全ての本が、そうやって多くの人の手を渡り、私の元にやって来たのだと思うと、すごく尊い気持ちになる。

出版社の「三輪舎」という名前には、工業的に本を生産・消費するのではなく、ゆっくり丁寧に、それこそ三輪車の速さで進むように、本を作っていきたいという想いが込められている。本当に好きだ。表紙や用紙の質感も心地良く、「触る」ことで本を楽しむこともできて、一切の妥協なく製本することへの熱い姿勢を感じる。

ぼくがつくりたいのは、ただ読むためだけの本ではない。そうではなくて、家に大切に持ち帰りたくなるような本、誰かに贈りたくなるような本だ。(p10)

本づくりの面白さのひとつは、みんなが各自の専門性を発揮しながらリレーをしているところだ。本を工業製品と捉えたとき、企画から完成までにこんなに多くの人の手と、技術と、手間暇のかかった製品は、なかなかないのではないかと思う。すべては本を読者に届けるため。そしてできることなら、長く読み継がれてほしいと願うゆえのことだ。(p150)

こういうふうに、本気で本づくりに打ち込んでいる、熱意ある人がいるという事実を、心から頼もしく感じる。私が好きな「本」は、きっとこれからも、それを必要とする人々の元に、彼らの手によって届けられていく。私は本書から、そんな出版への希望を感じた。

本づくりに携わる全ての人に感謝すると同時に、いつか自分もそのリレーの一部になって、バトンを渡せるようになりたいと思う。



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