今日も、読書。 |命懸けのサバイバルゲームを生き抜く
命の危機を脅かされるような、極限のサバイバルゲーム。
現実世界では、なんとしても御免被りたい。小説世界だからこそ味わえる、最高にスリルのある状況。
2024年1月、偶然にも、立て続けに2冊のサバイバル小説を読んだ。
どちらもすごく面白かったので、今回の「今日も、読書。」は、おすすめサバイバル小説2選というテーマでお届けする。
非日常のエンタメとして楽しむのは勿論、現代社会をサバイブするための知恵や教養が身につく……かもしれない?
貴志祐介|クリムゾンの迷宮
この作品を紹介したいがために、今回のnoteを書いたと言っても過言ではない。めちゃくちゃ面白い小説だった。
貴志祐介さんは『新世界より』や『悪の教典』などが有名だが、本作『クリムゾンの迷宮』も、かなりの傑作だと思う。とにかく貴志さんは、人間の汚い本性を描くのが上手すぎて怖い(良い意味)。
本作はサバイバル小説の中でも、”異世界サバイバルもの”に属すると思われる。
ある日突然、全く知らない世界に着の身着のまま迷い込み、限られた資源と知恵を頼りに、襲来する困難を乗り越えていく。
そして、そこに”ゲーム要素”が加わることで、物語の面白さが加速する。
異世界に迷い込んだ人間たちが、謎のゲームマスター的な存在に翻弄されながら、時に協力し時に争い、やがて物語の核心へと迫っていく。
とにかく、終盤の展開がヤバい。ヤバすぎる。
かなり凄惨でグロテスクな内容だが、それが本作の醍醐味でもあると思う。いや、それにしてもやりすぎ。絶好調である。
この世で最も恐ろしい存在は、野生の猛獣でも毒蛇でもなく、人間である。
貴志作品を読むと、毎回、この事実を突きつけられる。そしてそれは、どうしようもなく正しいのだと思う。
加えて、意外にも、実用的なサバイバルの知識が豊富に紹介されている点も面白い。突飛な設定なのに、随所でリアリティを感じられる作品だった。
島田雅彦|カタストロフ・マニア
『クリムゾンの迷宮』を読了後、あらすじを読まずに、なんとなく手に取った本書。少し読んで、「またサバイバル小説かい!」と、思わずツッコんでしまった。
島田雅彦さんは、個人的に『虚人の星』と『自由死刑』がおすすめだが、『カタストロフ・マニア』も、それらに並ぶ作品だった。それにしても、島田さんの脳内がどうなっているのか、一度覗いてみたい……。
本作は『クリムゾンの迷宮』とは異なり、”現実世界サバイバルもの”に属すると思われる(そんなジャンルが存在すれば、の話だが)。
本作の舞台は、太陽プラズマや感染症など、幾多の災厄によって機能が停止し、すっかり荒廃した東京。
見慣れた世界が一転、危険と隣り合わせのサバイバルフィールドになる恐ろしさが、本作にはある。
『クリムゾンの迷宮』と『カタストロフ・マニア』で、偶然にも、異なる種類のサバイバル小説を連続して読めたことが、非常に良かった。
舞台設定が違えば、自ずと登場人物たちが取る行動も違ってくる。
かと思えば、危険を察知して乗り越えたり、人間同士で徒党を組んだり裏切ったりする部分に、サバイバル作品としての共通点を感じる点もあった。
やはり、今日を生き抜くのが精一杯という極限状態においては、最も恐ろしい存在は人間——かと思いきや、本作は人間を超越したさらに上の存在が幕を引いていて、怖い。
優秀な人間には感染症のワクチンを投与し、そうでない人間は見殺しにするという人的な「大淘汰」が行われるのだが、そんな人間の争いが可愛く思えてしまうほど、最後の敵には背筋が凍る。
人間たちは、明日に希望を見出せない状況下、思考を完全に放棄し、現実を忘却することで心の安寧を得ようとする。
描かれているのは、自分たちでは意思を持ち行動していると思い込みながら、結果的に操り人形でしかない、非力な存在としての人間である。
これがディストピアのその先にあるディストピアといった感じで、とにかく恐ろしかった。人間が推し進めた技術革新は、果たして人間を救うのか、はたまた——?
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