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本が好き、その想いだけで書く文章たち。
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#読書感想文

【祝、長編完結】〈小市民シリーズ〉に出てくるスイーツをひたすらまとめてみた 〜後編〜

前回に引き続き、米澤穂信さんの〈小市民シリーズ〉に登場するスイーツをまとめてみた。 小鳩くんと小佐内さんが、作中で実際に食べている描写を確認できるスイーツに絞って、リストアップする。 ↓前編はこちらからお読みください↓ 秋期限定栗きんとん事件 あたたかな冬 ティラミス 小佐内さんが注文したもの。ミルクティーとセットでいただく。 いちごクレープ こちらも小佐内さんが注文。生クリームはもちろん増量。 彼氏の瓜野くんはチョコバナナクレープをチョイス。 とまどう春 ク

【祝、長編完結】〈小市民シリーズ〉に出てくるスイーツをひたすらまとめてみた 〜前編〜

先日、米澤穂信さんの〈小市民シリーズ〉の長編最新作にして完結作、『冬期限定ボンボンショコラ事件』が発売された。 学生時代に『春期限定いちごタルト事件』を読んでから、ずっと好きなシリーズ作品。本作が発表されたときは心が踊った。 今回『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読むにあたり、シリーズ第1作目から遡って、全作品を読み直した。 読み直す中で、〈小市民シリーズ〉にはいったいどれだけのスイーツが出てくるのだろう?と、ふと気になった。 本シリーズのヒロイン、主人公・小鳩くんと

書簡体小説は、新境地へ。 【おすすめ書簡体小説3選】

「書簡体小説」とは、登場人物の書簡を用いて、間接的に物語を展開する小説のことである。 古くは、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』、夏目漱石の『こころ』など、数々の傑作文学でこの手法が用いられてきた。 2年ほど前、書簡体小説がなぜ読者を惹きつけるのか、その面白さについて考え、noteを書いたことがある。 手紙には、宛先がある。 手紙に書かれる文章は、通常の小説のような不特定多数に向けた文章ではなく、特定の個人に宛てて綴られた文章だ。 書き手と読み手の世界に閉じた、ごく個

これから太宰治を読みたい人へ 〜「太宰治全部読む」を終えて〜

私は、太宰治の作品を全部読むことにした。 太宰治を全部読むと、人はどのような感情を抱くのか。身をもって確かめることにした。 前回の『地図 初期作品集』をもって、これまで約1年半にわたり続けてきた「太宰治全部読む」が、めでたく最終回を迎えた。 今回は、企画の締めくくりとして、これまでの「太宰治全部読む」の取り組みを総括してみたい。 太宰作品をひたすら読み続けた結果、私は何を思ったのか。 そして、せっかく太宰作品をたくさん読んできたので、これから太宰治を読みたい人に向け

爆ぜる文学性。”エモい本”を読んで、感情を揺さぶろう

皆さん、感情、揺さぶってますか? 平日は仕事に行って帰るだけ、休日はずっと寝ているだけ、そんな単調な日々をお過ごしの方も、もしかするといらっしゃるのではないでしょうか。 そんな感情の起伏の少ない日々に、一筋の光を差し込んでくれるのが、”エモい本”。 感情を揺さぶるようなエモい本を読むことで、忘れかけていたあの頃の気持ちが蘇る——今回はそんなnoteです。 ”エモい本”とは? 最近よく使われるようになった「エモい」という言葉。 実はこちら、『三省堂国語辞典』に収録さ

人に本を勧めるのは、実は結構難しい。

「趣味は読書です」と公言していると、よくこんな質問を受ける。 実際にこの質問を受けたことがある人はお分かりかもしれない。 これ、こんな軽いノリで聞いていい簡単な質問とちゃうで。 おすすめしたい本はたくさんあるけれど、いや、おすすめしたい本がたくさんあるからこそ、この質問に即座に答えるのは、実は結構難しかったりする。 人に本を勧めることは、ひとつのスキルだと思う。 ただ自分が好きな本を勧めても、なぜか相手の心に響かず、会話が盛り上がらない……なんてことがよく起こる。聞

読書は、”知の冒険”。 〜孫泰蔵『冒険の書』を読む

『冒険の書』と聞くと、「ドラゴンクエスト」というRPGゲームを思い浮かべてしまうのは、ゲーム好きの幼少期を過ごした者の習性である。 幼い頃の私にとって、「ドラゴンクエスト8」は、間違いなく革命だった。同世代の方は、きっと頷かれていると思う。 ドラクエ8は、それまでのナンバリング作品に比べ、「冒険している感」が段違いだった。3次元的にどこまでも広がる、大地、海原、そして青空。 今でこそ、「ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド」に代表されるオープンワールドゲームは一般的になっ

森見登美彦『四畳半神話大系』の好きな台詞選手権!

先日、高校時代の友人と森見登美彦氏の『四畳半神話大系』の読書会をした。 徹底して硬派で知的な文体、なのに内容はくだらなくて馬鹿馬鹿しい。この絶妙な”ズレ感”が癖になり、すっかり森見ワールドに取り憑かれてしまった。 ということで、勝手に『四畳半神話大系』好きな台詞選手権を開催! このnoteをお読みの皆さんにも、森見ワールドの一端を体感いただきたい。 まずは冒頭の名文から。 森見登美彦作品の魅力のひとつに、「キレッキレの冒頭」が挙げられる。開幕からエンジン全開の森見節

ずっと心に残っている短編たち 〜第三弾〜

私の心の中に、ずっと残っている短編がある。 読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。 以前、前後編に分けてお届けした、「ずっと心に残っている短編たち」のnote。 全部で6つの短編を取り上げ、完結したかに思えた本シリーズだったが、その後も素晴らしい短編に出会ったり、思い出したりした。 そこで今回は”第三弾”として、珠玉の短編をさらに3編ご紹介する。多分このシリーズは、これからも続いていくことになるだろう。 それぞれどんな短

ずっと心に残っている短編たち 〜後編〜

私の心の中に、ずっと残っている短編がある。 読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。 前編に引き続き、私がこれまで読んできて、特に心に残っている短編を3つご紹介する。 それぞれどんな短編なのかわかりやすいように、「◯◯を読みたい人へ」というキャッチコピーをつけてみた。気になる短編があった方は、ぜひ収録されている短編集を手に取ってみていただきたい。 米澤穂信|玉野五十鈴の誉れ〜「伏線回収に背筋が凍るホラー作品」を読みたい人へ〜

ずっと心に残っている短編たち 〜前編〜

私の心の中に、ずっと残っている短編がある。 読んだときの感動や衝撃が忘れられなくて、今でも鮮やかに思い出すことのできる短編たち。 短編集の中から、ひとつの短編だけをピックアップして紹介する記事はあまり見かけないが、今回から前後編に分けて、私がこれまで読んできて、特に心に残っている短編を6つ取り上げたい。 それぞれどんな短編なのかわかりやすいように、「◯◯を読みたい人へ」というキャッチコピーをつけてみた。気になる短編があった方は、ぜひ収録されている短編集を手に取ってみてい

声に出して笑える本

笑うことは、幸せなことだ。 笑顔でいることは、それだけで日々を豊かにしてくれる。 そして、声に出して笑うことは、とても気持ちがいい。些細なストレスなど、どこかに吹き飛んでしまう。 皆さんは、「笑える本」と聞いて、どんな作品を思い浮かべるだろうか。 「笑える本」と銘打って販売されている本は、世の中に数多くある。 しかし、本当に「声に出して」笑えるような本は、実はごくわずかだと思う。 心の中で笑ったり、少しにやけたりすることはあるけれど、思わず笑い声が漏れてしまったと

読書でイタリア探訪 〜後編〜

読書でイタリアを旅する。 そんなテーマで選書した作品たちを、前後編に分けてご紹介する。 ↓前編はこちらから 井上ひさし|ボローニャ紀行 少しマニアックかもしれないが、井上ひさしさんの『ボローニャ紀行』も、紹介せずにはいられない作品だ。 ボローニャは、私が大学時代に留学していた街で、思い出深い土地なのだ。 ボローニャに留学する際、事前にボローニャについて知っておきたいと思い、手に取った作品が『ボローニャ紀行』だった。 その後、私がイタリア渡航時に持っていった唯一の

読書でイタリア探訪 〜前編〜

私にとってイタリアという国は、大学で歴史や文化について学んだ国であり、留学生として10ヶ月ほど暮らした国であり、日本に次いで馴染みのある国だ。 そのため、イタリアに関する本を手に取ることが多い。書店で「イタリア」の文字を見かけると、目が吸い寄せられてしまう。 読書でイタリアを旅する。 そんなテーマで選書した作品たちを、前後編に分けてご紹介したい。 内田洋子さんのエッセイ 内田洋子さんのエッセイは、「今日も、読書。」でこれまで何度もご紹介してきた。どの作品も、本当に良