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記憶力の強さと、弱さと、ムラの多さには、人間のほかの知的能力よりも何倍も不可解なものがあるわ。 2021/01/18

 たくさん本が読みたいのだが、仕事はたくさんある。どのように時間を確保するのかは自分次第な訳で、色々考えた結果、生活のリズムを超早朝型に切り替えることが1番良い、という結論に達した。なので、昨夜は早めに寝て、今日は3時半起床。暗くて寒い。でも起きられたからひとまず成功だ。

 これだと、まぁ6時過ぎくらいまではじっくりと本が読める。そこから朝食を作ってみたりといった、良い感じのこともできる。本が読めて家族への貢献度も上がるというのは良いことだらけだ。

 そんな余裕のある朝を過ごしたのちに、仕事が始まる。終日在宅勤務なのだけど、かなりみっちり詰まっていた1日。先週ひと山越えた気はしていたが山はたくさんあるということなのだろう。合間合間に色々と差し込まれちゃうくらいドタバタで、落ち着かない。気づけば夜。

 ご飯食べたりしていたらもう寝る時間。何せ早起きなので。ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』を朝、たっぷりと読めたのがとても良かった。読書は癒し。

「人間が生まれつき持っている能力のなかでいちばん不思議な能力は、記憶力だと思うわ。 記憶力の強さと、弱さと、ムラの多さには、人間のほかの知的能力よりも何倍も不可解なものがあるわ。人間の記憶力は、ときにはすごく長持ちして、すごく役に立って、すごく従順だけど、ときにはすごく混乱して、すごく弱々しいときもあるし、ときにはすごく横暴で、制御不可能になるときもあるわ。人間はあらゆる点で不思議な生きものだけど、いろいろなことを思い出したり忘れたりする能力は、とくに不思議な能力だと思うわ」
ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』P.314

 記憶のムラの多さの話をしているのだけれど、これはある種の人間の気持ちの移ろいやすさといったことにも通じるんじゃないか。例えば、からかっているつもりが、本当に恋に落ちた、と熱烈にプロポーズしてくるクロフォードの思いは、記憶力よりもいい加減なものかもしれない。

 クロフォードがどれだけいい加減かというと⋯⋯

「ぼくの望みはこれだけだ。彼女がやさしい顔でぼくを見てくれて、頬を赤く染めるだけではなくて、ほほえみも見せてくれて、どこにいても、ぼくのために隣りの席を取っておいてくれて、ぼくがそこに座って彼女に話しかけたら、うれしそうな顔をしてほしい。そして、ぼくと同じ考え方をしてくれて、ぼくの持ち物や好きなことに興味を持ってくれて、そして、ぼくにもっとマンスフィールドにいてほしいと言ってくれて、ぼくがマンスフィールドを去るときは、「私は、もう二度と幸せにはなれないわ」と言ってほしい。まあ、それ以上のことは望まないよ」
ジェイン・オースティン『マンスフィールド・パーク』P.348

 全女性から呪われるがいい、というくらい自己中心的でおめでたい馬鹿なのだけど、こうやって2週間のマンスフィールド滞在中に、ファニーを惚れさせるゲームをした結果、自分が惚れてしつこく付きまとうというどうしようもない男。そして舌の根も乾かぬうちに、人妻と出奔するのだけど。これなんぞまさに「移ろいやすい記憶の主題」なんじゃないか。オースティンの他の作品もちくま文庫で揃えてしまいたい。


 

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