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すぐさま船に戻れ、さもないとひとりのこらず死んでしまうぞと叫びました。と申しますのも、島と思っていたものは鯨の背中だったのです。 2020/09/16

 終日在宅勤務、少しペースを戻していきたいところなのだが、生活のリズムが昔みたいに戻ってしまって早寝早起きが崩れてしまった。ずいぶん涼しくなって過ごしやすくなってきたので、久しぶりに夜、軽く走ってみたらなんか体が軽い。5キロがすんなり、今までで一番速いペースで走ることができた。間が少し空いてサボってる感じがしていたけれど、頻度が高いのも疲労が残るんだな、と実感。

 Twitterでは「出版物の総額表示義務化に反対します」というハッシュタグがトレンド1位になっており、こんなにこの話題で世間が盛り上がってくれるなんてちょっと意外で驚いた。

 絶版が増えてしまうかもしれないという懸念が、一般の人も含めてこんなに共感が得られるとは、出版業界で働く者としてとても嬉しい。

 そんなことを考えながら、岩波書店の『ガラン版 千一夜物語 2巻』を手に取った。2巻にしてさっそく船乗りシンドバットのお話が登場。7度の航海で毎回不思議な出来事が起こり絶体絶命のピンチに陥るが、なんとかそれらの苦難を乗り越えて大金持ちになる話。荒唐無稽なんだけど、その荒唐無稽さが心地よくて、最初の航海ではたどり着いた島が、島だと思ったら鯨の背中だった、というのっけからそんなお話なので楽しい。島だと思って上陸してみて鯨だったら、僕も驚くと思う。まじかー、鯨だったかーってなるだろうな。

 船の上から島が揺れ動くさまを見ていたひとびとは、すぐさま船に戻れ、さもないとひとりのこらず死んでしまうぞと叫びました。と申しますのも、島と思っていたものは鯨の背中だったのです。
『ガラン版 千一夜物語 2巻』P.9

 それにしても、この「と申しますのも」と普通に何の驚きもなくそういうこともありますよね、っていう感じの語り口がいい。そうですか、鯨の背中でしたか、それは災難でしたね、とすんなり受け入れたくなる。


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