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ひっきりなしに悲しさの理由を挙げた。秋の空がどんよりしてるから、昨日上司に怒られたから、母がカナリアを飼うことを許してくれなかったから、それからそもそも、人生がこんなに悲しくてすばらしくて短いから。 2021/01/24

 朝4時頃に起床、本を読む。昨日積読を整理したり、子供の本を整理したりしたので、ただひたすらに読んでいたいのだけど、習い事関連の付き添いがあり久しぶりの外出。ふらりと立ち寄った新古書店がセールしていたが客はまばら。

 レオ・ペルッツ『どこに転がっていくの、林檎ちゃん』を読んで、読み終わった。捕虜時代の不当な扱いに憤り、復讐に取り憑かれた男が仇を追ってロシアに舞い戻る。なのだけど、ドン・キホーテ的と評されるくらい、なんでそこまでするの?って感じで取り憑かれている。

 当時の仲間たちとの誓い、いつか誰かが舞い戻り復讐を遂げる、なんて約束は誰も真に受けていない。薄情に見えるけど、冷静に考えればそれが普通で、どちらかという主人公がイカれてる。そして家族も、恋人も、有望な仕事先も捨てて、単独で追いかけ回すのだけど、相手はドラクエ2のサマルトリアの王子かというくらい、いるはずの所にいない。転がり続ける。世間もまた転がり続け、時代が、政治が、価値観が変化していくのだけど、そんな時代の流れからも一人距離を置いて、追いかけ続ける⋯⋯。

 やがて浮かれた気分はだしぬけに悲しさに変わった。ヴィトーリンの肩に頭を乗せて鳴咽をはじめ、涙が頬をつたった。そしてひっきりなしに悲しさの理由を挙げた。秋の空がどんよりしてるから、昨日上司に怒られたから、母がカナリアを飼うことを許してくれなかったから、それからそもそも、人生がこんなに悲しくてすばらしくて短いから。
レオ・ペルッツ『どこに転がっていくの、林檎ちゃん』P.96

 ちょっとこの芝居がかった感じがなんかいいなぁ、と思いながら読む。明日からまた仕事が始まるから、読んでも読んでも読み切れないくらい読みたい本があるから、本棚に本が収まらないから。

 007シリーズの原作者、イアン・フレミングが大ファンだったらしい。途中ちょっとだれたけど、ラストはちょっと、よかったな。

 積読整理で発掘してきた稲垣足穂とかハインラインとかを読み始めて、寝た。時間がいくらあっても足りない。

自分の好きなことを表明すると、気の合う仲間が集まってくるらしい。とりあえず、読んでくれた人に感謝、スキ押してくれた人に大感謝、あなたのスキが次を書くモチベーションです。サポートはいわゆる投げ銭。noteの会員じゃなくてもできるらしい。そんな奇特な人には超大感謝&幸せを祈ります。