シークヮーサーカードの加工原理は乳化か?卵の熱凝固か? 〜試作編〜
食品加工を全力で楽しむ人、いしもとめぐみ です。
前々回、前回の投稿ではマーマレードを作りました。今回もまさかの柑橘類です。
前職で会社の人にもらったコレの処理に困っていたので。
シークヮーサー100%果汁。
ダイビングが好きな人で、沖縄の何とかって島に行ったお土産でもらったような。ポ◯カレモンのかわりに料理に使おうかな〜と思っているうちに、キッチンのインテリアと化していました。
なにか面白いことできないかな?
シークヮーサーとは
そもそも、シークヮーサーって何者なんでしょうか。
ミカン科ミカン属 和名:ヒラミレモン(平実檸檬)
シークワーサーは沖縄から台湾にかけて自生しているミカン科の果実で、標準和名はヒラミレモン(平実レモン)とされ、シークワーサーという名称は沖縄での呼び名です。沖縄の方言では「シー」がすっぱい物、「クヮーサー」は食べさせるものや食べ物を指しているそうです。(旬の食材百科より)
ミカン科ミカン属、なのに和名にレモンが付いている!
柑橘類が渋滞してるぞ。
沖縄の方言で「酸っぱい食べ物」という通り、シークヮーサーにはレモンの2倍以上のクエン酸が含まれているそうです。クエン酸は疲労回復に効果がある栄養素です。
特筆すべきはノビレチンという成分が豊富に含まれていること。ノビレチンには血糖値や血圧の上昇を抑えたり、脂肪燃焼を促したりする効果があるそうです。
なるほど。
ちょっと味見してみると、すっっっぱい!!!独特な青っぽい風味もあります。
同じく酸味が強いレモンの代用として、何か作れないかな…
で、思いついたのが、レモンカードでした。
レモンカードとは
レモンカードとはイギリスの伝統的なスプレッドで、アフタヌーンティーのときにジャムの代わりにパンやスコーンに塗って食べるそう。
そんなシャレオツな食べ物には人生で出会ったことはなく、私、齢30近くになって初めて知りました。
これが、美味しいんですよね。
甘くてバターたっぷりなのに、清々しいレモンの香りであっさり食べられて、スプーンを持つ手の瓶とお口の往復運動が止まらない。
ちなみに、レモンだけでなくライムやオレンジ、パッションフルーツ、ベリー類でも作ることができて、総称してフルーツカードと呼ぶそうです。
レモンカードの作り方
フルーツカードを代表して、レモンカードの基本的な作り方を紹介します。
材料
全卵 50g(卵1個分)
レモン果汁 50ml
グラニュー糖 50g
無塩バター 50g
※全部50のわかりやすい配合にしてみました。卵はMサイズ殻無しの正味量です。重量は個体差がありますが、多少前後しても大丈夫です。
※湯煎するので、材料を混ぜ合わせるボウルよりも大きいサイズの鍋に湯をたっぷり沸かしておいてください。
①
卵はボウルに割り入れ、よく溶いてからザルでこす。ヘラで軽く押し付けるようにしてこし出す。ザルの外に付着している卵液もヘラで落とす。
※卵をざるでこすことで、ダマのないなめらかな仕上がりになります。
②
卵液にグラニュー糖を加えて混ぜる。この段階ではグラニュー糖は溶けきらない。果汁も加えて混ぜ合わせ、グラニュー糖を溶かす。
③
小さいボウルか小鍋に無塩バターを入れて、湯煎してバターを溶かす。バターを卵液に加えて混ぜる。
※バターはすべて溶けたらすぐに湯煎から外してください。温度があまり高くない状態なので、卵液に一気に加えても卵は固まりません。この時点では卵液とバターは分離します。
④
大きな鍋に沸かした湯の温度が70〜80℃になるよう、水を加える等して調整する。材料が全て入ったボウルを湯に浮かべて湯煎にかけつつ、ヘラでボウルの底からかくように混ぜる。とろりとしてきたら出来上がり。
工程④、だいぶはしょりました。
ここがレモンカード作りにおいて最も重要で最も時間がかかり最も不安になる工程です。
そうそう、レモンカードではレモンの皮のすり下ろしを加えるのが一般的です。
このレシピに加えるならレモン1/2個分でしょうか。
その場合は農薬や防腐剤を使っていないレモンを使用してください。
すり下ろすのは表面の黄色い部分のみです。その下の白い部分は苦いので、すり下ろさないでください。
では、レモン果汁をシークヮーサー果汁に置き換えて、作ってみましょう!
シークヮーサーカードを作ってみた
工程①②③は問題なし。果汁を絞る手間がないのでとっても楽。
さて、工程④です。
出来上がるまでにどれくらい時間がかかるか、わかりません。
その前に、ちゃんと固まってくれるのかも定かでなく。
お湯の温度はばっちり。コンロの火はひとまず止めました。
(温度計はあると便利です。数百円くらいで、そんなに高くなく買えたはず)
ボウルを湯に浮かべて、ヘラで常に混ぜ続けます。湯が熱々ではないのですぐに卵液が固まることはありませんが、それでも手を止めずに混ぜ続けます。
たまに温度計で湯の温度を確認して、下がってくれば弱火で鍋を温めます。
湯煎にかけて7分経過したあたりで、卵液の表面がなめらかになり、若干とろみがついてきました。
10分経過。
まだソースくらいのゆる〜いとろみ。
ゴールが見えてきません。だんだん不安になってきます。
そこを辛抱して混ぜ続けると、少しずつ、少しずつ、とろみが強くなってきます。
20分経過。
ヘラでボウルの底をかくと、ヘラの跡がしっかり残るようになってきました。
冷めるとさらにとろみがつくそうなので、若干ゆるいかな?というあたりで終了。湯煎開始から22分経過していました。
瓶に詰める場合は、瓶の煮沸消毒をお忘れなく。
それでも1週間程度で食べきるようにしてください。
冷めたところで試食です。
やはりシークヮーサーの輪郭のある酸味を感じます。青っぽい、苦っぽい独特の風味もありますが、全然嫌な感じではありません。とろみはほど良く、トーストに塗ってもたれ落ちなさそう笑
レモンの代わりにシークヮーサー(しかも瓶入りの果汁)を使ってもフルーツカードができました!
食品加工好きとしては、フルーツカードの加工原理も知っておきたいところ。
フルーツカードの材料には、基本的に混ざり合わない水分も油分も含まれています。なぜ水と油がひとつにまとまって、とろりとした状態になるのでしょうか?
材料や加工工程から、乳化や卵の熱凝固が関わっていると考えられます。
そもそも乳化とは?卵の熱凝固とは?という基礎から書いていきますが、20分も混ぜ続けて疲労困憊なので、今回はこのあたりでひと区切り。
次回、シークヮーサーカードの加工原理は乳化か?卵の熱凝固か? 〜考察編〜 に続く!
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