見出し画像

私史上最高マーマレードを作る 〜実戦編〜

食品加工を全力で楽しむ人、いしもとめぐみ です。
前回の 私史上最高マーマレードを作る 〜基本編〜 に続いて、いよいよマーマレード作り実戦編です。
え?実戦編じゃなくて実践編だって?
いやいや、これは、まさに戦いのような熱い熱い記録なんです。
果たして、私のマーマレードにかける情熱は、柑橘のペクチンとナリンギンを打ち負かすことができるのでしょうか!?

私の目指すものは、ちょっとくらいトーストを傾けてもたれ落ちない感じの、しっかり粘度があるマーマレード。
マーマレード(ジャム)の粘度はペクチンがゲル化することで得られるので、ペクチンのゲル化3つの条件を揃えてやればいいはず。

そもそも。
ペクチンがゲル化したときに具体的に何が起こっているのかというと、ペクチン同士が手のようなもので繋がって網目状になっているのです。
手がつながっていなければペクチン同士は離れていて、さらさらの液体の状態。ゲル化3つの条件がそろってペクチンの網ができることで、ペクチンは繋がり固まってゲル化した状態になります。

では。
ペクチンの濃度を高めれば、網目が密になりゲル化強度が高まる=粘度の高いマーマレードになるのでは?と思ったのです。

ということは、粗ペクチン液のペクチン濃度を高めればいい!

前回のマーマレードの基本的なレシピを振り返ると、工程④で粗みじん切りにした柑橘の内側のふわふわ、じょうのう膜、外皮の切りくずを2回ゆで、2回目のゆで汁を粗ペクチン液としています。
1回目のゆで汁には、実は多量のペクチンと酸が溶け出ているのですが、同時に多量の苦味成分ナリンギンも含まれています。そのまま1回目のゆで汁を粗ペクチン液としてマーマレードに使用すると、柑橘の苦味えぐみ雑味が丸ごと入ったマーマレードになってしまいます。

ペクチンと酸が多量に含まれている1回目の茹で汁を使いたいけれども、苦味が邪魔…
そういえば、専門学校時代の食品加工実習のメモにこんなことが書いてあったっけ。
「1回目の煮汁→一晩水にさらすと使える
おっ、これは使えるんじゃない!?

実習で先生がこんなことを言っていたのも思い出しました。
「マーマレードは固形分が少ないからゲル化が弱い」
このことについて調べてみたのですが、なかなかきちんと裏付けられる資料を見つけられませんでした。でもこの言葉が正しければ、固形分を多くすればマーマレードのゲル化を強くすることができるということになります。私の勝手なイメージですが、ペクチンの網に固形分が絡まって網目が強固になるのかも。

ゲル化を高める固形分として、果肉の粒をマーマレードに加えることにしました。
果汁が入っている、あの小さい粒つぶですね。これは「砂じょう」と言います。砂じょうをマーマレードに加えます。

いざ実戦!!

今回私は柑橘に甘夏を使いました。

画像1

まずは工程①で果汁を絞る前に、竹串(なんてものは無いからつまようじ)で種だけ丁寧に取り除きます。そして果汁を絞って…こさない!たっぷり砂じょうが入ったままの果汁を使います。果汁に種が入っちゃったら取り除いてください。
私は万全を期すため、じょうのう膜に残った砂じょうもがんばってはがしました。これで固形分たっぷりな果汁が取れました。ここで果汁を計量します。

さてさて。
白いふわふわ、じょうのう膜、外皮の切りくずをボウルに入れ、一晩(今回は11時間でした)水にさらします。外皮にもナリンギンが含まれるため、さいの目切りにして計量した外皮も同様にして、別のボウルに入れて一晩水にさらします。
私はボウルが無くてティファールの鍋を使っていますが、気にしなしでください。使えるものは何でも使う!

画像2


このさらした水を味見してみると…ちゃんと苦い!
舌をビリビリと刺激する苦味が長く口に残りました。ねらい通りナリンギンが溶け出していて苦いけどうれしい!
この苦い水は恨みのある誰かに飲ませてもいいですが、とりあえずマーマレード作りには必要ありません。
ふわふわ等と外皮は別々にざる上げします。

工程③に戻ります。
外皮は水の挙動を利用して水分を引き出したいので、1回だけ沸騰後10分間ゆでます。ざる上げして鍋に戻し、グラニュー糖の1/3量を加えます。

画像3

工程④、粗ペクチン液を作ります。
水にさらしてナリンギンが除去された白いふわふわ、じょうのう膜、外皮の切りくずを粗みじん切りにして鍋に入れ、ひたひたに浸かるくらいの水を加えて沸騰後10分間ゆでます。
この「ひたひたに浸かるくらいの水」もポイントでしょうか。
粗ペクチン液が多すぎると、マーマレードを煮詰めるのに時間がかかりすぎてしまいます。
ペクチンは熱に弱く、長時間加熱していると分解されてゲル化しなくなります。工程⑤にあるように、沸騰後20分以内に加熱を終了できるよう、加える粗ペクチン液はできるだけ少なくしましょう。

画像4


これで、ペクチンたっぷりな粗ペクチン液の出来上がり。
あ、クエン酸を加えておくのを忘れずに。

あとは基本通り、加熱して固形分たっぷりな果汁全量とグラニュー糖を1/3量ずつ加え、ペクチンたっぷりな粗ペクチン液も加えてがんがん煮詰めます!

画像5

ちゃんとゲル化できてるでしょうか…?
ちょっと不安…

画像6

でも20分経ってしまったので、ここで加熱終了。
瓶に詰めた残りをお皿にとって、以前に作ったマーマレードと比較してみました。

画像7

写真左が以前のマーマレード。トーストからたれてくるヤツです。ほぼ基本に中実に作っているので苦味はほとんどなく、香りと味はバッチリ。ただ、とろみが弱くてトーストにしがみつく根性はない。何度もゆでているので色も薄いです。
そして、写真右の今回作ったマーマレードは…

画像8


めちゃくちゃゲル化してる!
ぷるぷるしていて、まるでゼリーのようです!頑固で、意地でもトーストから落ちなさそう。
ゆでこぼしの回数が少ない分、柑橘の風味がしっかり残っています。色も濃いですね。
苦味については、以前作ったものと比較すると、正直強めに感じます。でも爽やかな柑橘の風味・甘味と相まると、まるで果実をそのまま食べているかのような味。大人のほろ苦マーマレードという感じでしょうか。
私は、ありだと思います◎

試作・試食を踏まえ、今回の反省点を挙げておきます。


ありだと思います◎とか言いながら、もう少し苦味を除きたいです。
今回は粗ペクチン液を作るときに、白いふわふわやじょうのう膜を水さらしにしてから粗みじん切りにしたのですが、先に粗みじん切りにしてから水にさらした方が、ナリンギンがたくさん抽出されたかな、と思います。


試食した際、外皮の苦味を特に強く感じました。
今回は1回ゆでただけですが、外皮に関しては基本の作り方通り数回ゆでて、苦味成分をしっかり除去した方が美味しく仕上がると思います。


砂じょうをはぎ取る作業の効率が悪かったです。
果汁を絞らず、じょうのう膜をむいて砂じょうをかたまりのまま取り出し、後で砂じょうを潰した方が作業効率が良いと思います。


せっかく100%柑橘由来のペクチンでマーマレードを作ったので、クエン酸の添加も無くしたいです。酸を高めるためには、やっぱりレモンでしょうか。検討の余地ありです。

反省点はありますが、理想のマーマレードに一歩近づきました!
ねらい通りとろみがついたのがうれしかったです。これで手をベタベタにすることなく、手作りマーマレードで優雅な朝ごはんを堪能できるでしょう。うしし。

初回レポートなのに2回にわたってお送りしてしまいました。
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。このレポートを参考に、いつかあなたも最高のマーマレードを作ることができますように。
ではでは。

この記事が参加している募集

おうち時間を工夫で楽しく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?