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「⾔葉」との出会い。言葉は、幸せを見つけるための灯りになる。

インタビュー・文/花南めぐみ

働き⽅改⾰の推進やワークライフバランスの多様化により、誰もが“よりよい⽣き⽅” を模索できる昨今。ですが、「⾃分にとっての幸せ」を考えたとき、はっきりと明確な答えがでない⽅も多いのではないでしょうか。

書いて幸せになるヒントを SNS で発信し、⾃⾝が主宰している「京都ライター塾」のゴールにも「書いて幸せになるライター」を掲げる、ライター/エッセイストの江⾓悠⼦さん。「書いて幸せになる」を体現しながら⽇々活動されている江⾓さんが選ぶ⾔葉には、きっと幸せになるためのヒントが隠されているはず。

今回は「⾔葉」と出会い「⽣きやすくなった」と語る、京都で活躍する江⾓さんにご⾃⾝が“⼤切にしている3つの⾔葉”を伺いました。

江角悠子(えずみ・ゆうこ)さん
1976年生まれ。京都在住エッセイスト・ライター。ときどき大学講師。「京都 とっておきの雑貨屋さん」「京都 カフェ日和」など京都関連の書籍のほか、anan、婦人画報といった雑誌でも記事を執筆。2020年より「書くを仕事に!京都ライター塾」を主宰し「書いて幸せになる」ライターを多数輩出している。14歳男児&8歳女児の母。京都の洋館を紹介するZINE「京都 麗しの洋館たち」を作成するなどレトロ建築好きな一面も。

他人ではなく、自分の顔色を伺うことで”生きやすくなった”

”LOVE MYSELF”

画像出典:京都くらしの編集室

――ひとつ⽬の⾔葉は BTS が掲げているテーマ「LOVE MYSELF」。なぜこの⾔葉なのでしょうか。
この⾔葉に出合うまでは、⾃分のことより⾃分が多少損しても周りが丸く収まればそれがいいと思っていました。周りの顔⾊を伺っていて、⾃分の顔⾊を伺うことはなかった。いつも私がちょっと我慢して収まる⽅を選択していました。でも、それ嫌だなと思ったんです。私がまず幸せでいないと、周りも幸せにできないと分かったんです。

――そう思われたきっかけはあったのですか?
⼦育をしていてそう感じるようになりました。やっぱり私に⼼の余裕がないと、⼦どもにあたってしまうことが増えることに気が付いて。お⺟さんに⼼の余裕があると、⼦どもにも優しくできますよね。⾃分を⼤事にしてたら、それが結果的に、周りにいい影響を与えることを実感したので、だからまずは⾃分を愛することから始めたいと思って、「LOVE MYSELF」を私の中の⼀番のテーマにすることにしました。私さえ我慢すればいいというのは、やめるようにしたんです。

――この⾔葉を⽇常や仕事で思い出したり、活かしている場⾯などはあるのでしょうか?
それまでは、⾃分が嫌と思ったことは⾔わないようにしたり、⾃分が怒ってることはまわりに悟られないようにしていたのですが、嫌なことは嫌と⾔わなければいけないんだなと気が付きました。なぜなら、私が伝えないと、何回も同じような嫌なことをされてしまうので(笑)
それまでは私さえ我慢すればいいと思っていたから、真逆ですね。でも、伝えるようにしたらすごく⽣きやすくなりました。

日々を整え、余裕を持つことで”心地よくなった”

”人生で大事なのは自分で料理をすることと、その余裕があること”

画像出典:集英社 すこやかな方へ 今とこれからの暮らし方

――ふたつ⽬の⾔葉は⼩川奈緒さんのエッセイ「すこやかなほうへ 今とこれからの暮らし⽅」からの⼀節ですが、この⾔葉と出会われたときはどのような印象をもったのでしょうか。
この⾔葉に出会ったとき、『本当に、そうだな』と思いました。急かされて料理を作ると、⼦どもにとにかくご飯を⾷べさせなきゃみたいなせっぱ詰まった感覚があって、料理を楽しむというよりは栄養あるものでお腹を満たすだけ、みたいな感じになってしまうんです。でも、たまに週末に時間があって昼から⼣飯の準備とかすると楽しいんですよね。ちょっとワイン飲みつつ野菜切ったり。料理は本来、私にとって⾯倒なことではなく、癒しだったんだなぁと気が付いたんです。でも、⼣⽅にせっぱ詰まって作ったら苦⾏のように感じてしまう。やっぱり⼼の余裕があって料理する時間があったら絶対”⼈⽣豊かだな”と思って。そういう時間が欲しいなと思ってしみじみ読みました。

――“料理をする余裕”が“⼼の余裕”につながってるという視点はなるほど、と感じます。余裕を持つために⼼がけていることはありますか?
余裕があるようにしていきたいと、今、暮らしを整えているところです(笑)ちょうど⼤きい仕事が⼀つ終わったので、これからは仕事を⼊れすぎないようにしたいなと思っています。仕事が好きなので、ついつい仕事ばかりになっちゃうんです。特に在宅でできるフリーライターの仕事は、意識しないといつまででも仕事ができてしまうので。

最近作った料理を伺うと「ナムルと、もう⼀品⼆品くらい。作り置きすると⼼の余裕が⽣まれますね。その⽇の晩になくなったけれど(笑)」と笑う江⾓さん。ほかにも朝のル ーティンとして“瞑想”をしたり、仕事前には“ひと⼿間”かけて⾃分のためにおいしいお茶を淹れたりしているのだとか。⾃分に合った“余裕”の作り⽅を⾒つけながら、⼼地よく暮らしている姿が印象的です。

やりたいことは、今やる ”あきらめなくなった”

” 死んでも自分の魂はそのまま残る”

画像出典:京都くらしの編集室

――最後にお伺いしたこちらの⾔葉はとても印象的ですが、どのように出合われた⾔葉なのでしょうか?
「亡くなった⼈と話しませんか」という本をブックライティングした時に、著者の⽅が⾔っていた⾔葉です。私は、この⾔葉で⼈⽣が変わったと思っています。

――⼈⽣が変わった!それは興味深いです。どのように変わったのですか?
元々私は、⽣まれ変わりは信じてたんです。⽣まれ変わったら、もっと素晴らしい⼈⽣ が送れるんじゃないかと勝⼿に思っていました。

たとえば、今世では難しそうだから、⽣まれ変わったら英語の勉強しようとか、今世でできないことは、来世の私に頑張ってもらおうと思っていたんです。でも、著者の⽅が⾔うには「魂はそのまま」だから、⽣まれ変わったからといって優秀な⼈に⽣まれ変わるわけではないということ。私の実⼒のまま、今の性格のまま⽣まれ変わるわけです。だから、⽣まれ変わったとしても、⾃然と英語が喋れるようになったりはしないんです。だから来世に夢を託しても私のままなんだなと思ったら、今、変われないってことは来世でも変われないのかと気づいたんです。

――来世に託しても意味がない、という気づきがあったのですね。
ええ。すごくショックでした(笑)。⽣まれ変わったら勝⼿に、いい⼈⽣になるんじゃないかと思っていましたが、引っ込み思案の⾃分のまま来世になるなら、来世も引っ込み 思案のままですし、今のうちに変わっておかないと何も変わらないんだなと分かったんです。今世の課題は今世のうちにやらないと、ずっと課題として残るんだとしたら、今のうちに消化した⽅がいいなと思ったんです。やりたいことがあったら、来世じゃなく今世でやろうと。

――この気づきを受けて、実際になにかやってみたことはありますか?
はい。京都ライター塾を始めたのもそうです。それまでは私が⼈にものを教えるなんて、恐れ多くて、ありえないことだと思っていたので。でも、やってみたいという思い があるなら、来世に持ち越さず今世でやってみるのもいいかなと考え直しました。今までは、今の私には無理だから、来世の私は頑張ってねとあきらめていたのですが、この⾔葉に出会ってからは、あきらめないようになったのかもしれないですね。

よりよく生きるスタートは“いつでも”切れる

今回、江⾓さんが⼤切にしている⾔葉にまつわる3つのエピソードを伺いましたが、共通していたのは⾔葉に出会い、新しい気づきが“腑に落ちた”ことが原動⼒となり“⾏動”が変わったということ。そして⾏動を変えたことが“⽣きやすく、⼼地よく、あきらめない”という変化につながっていました。

そんな江⾓さんですが、意外にも「⽣きやすくなったのはここ 2〜3 年。」だと⾔います。いずれも、今回教えてくださった⾔葉たちに出会ってからなのだそう。

だとしたらきっと、誰もが、いつでも、何度でも「よりよく⽣きる」スタートが切れるはず。⾔葉との出会いは、その⼤きなきっかけになり得ると感じました。

インタビューの終わり、江⾓さんに最近感じた“幸せ”を伺うと「家族がそれぞれ好きなことをしていて、夜ご飯に集合した瞬間」と、はにかんだ柔らかい笑顔。「皆が⾃分の好きなことをして、夜に集まって⼀緒にご飯を⾷べる。そんな些細な⽇常が本当に幸せだなぁ〜って思いました」。なんでもない⼀⽇を愛おしそうに語る江⾓さんが印象的でした。

「幸せの定義は⾃分で考えたらいい」と語る江⾓さんの幸せはごく⾝近なところにありました。幸せを探し求めている私たちの幸せも、もしかしたら、⾃⾝の中にあるのかもしれません。⾃分の中にあるはずの“幸せ”が⾒えないとき。「⾔葉」はきっと、それを⾒つけるための灯りになる。

ささやかな⾔葉で多くの灯りをともしてもいいし、珠⽟の⾔葉で⼤きな灯りをともすのもいい。⼼強いことに、灯りがともる先は、すべて「⾃分⾃⾝」です。
「⾃分にとっての幸せ」が⾒えづらいときは、まずそこに「⾔葉」という灯りをともしてみる。そんな⽬線で、⾃分を⼼地よくする「お守りのような⾔葉」を探すのもいいかもしれません。


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https://twitter.com/mgkanami

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