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新生活のススメ

わたしのライフワークのひとつは
暮らしのコンフォートゾーンを創るための
ミニマライズ化なのですが
それを象徴とする最たるものが
「部屋のサイズをちょっとずつ小さくする」
というスタイルの引っ越しです。

コンフォートゾーン(Comfort Zone)
「快適な空間」「快適で居心地のいい居場所」「安全地帯」などのこと。

ひとり暮らしを始めてから
人生折り返し地点を迎えても尚
ずっと賃貸住まいを続けていますが
かれこれ20年くらい前から
ことあるごとに引っ越しをし
部屋のサイズを「小さく」し続けています。

わたしと同じように
借り物に住むヤドカリさんは
貝殻のサイズを
ちょっとずつ大きくするという
引っ越しスタイルで
暮らされていますけれども
わたしはその逆というわけです。

しかも、
常に引っ越し先は「同じ住所」。

つまり、わたしは
約20年もの間ずっと
同じマンションで暮らしていながら
マンション内で部屋の移り変わり
退去と入居を10回くらい
繰り返しているというわけ。

このマンションは
広さや間取りの異なる
複数パターンの部屋があるのですが
今より「ちょっと小さめ」の部屋が
空くと、チャンスとばかりに内見し
あるときは、1210号室へ
またあるときは、2209号室へなどと
部屋番号を変える引っ越しをしているのです。

きっと住民票を管理する役所の人も
「また、こいつは部屋を変えたな」と
呆れ返っていることでしょう。

新しい引っ越し先が決まると
新しい住まいでの「新生活」を営むために
やることは目白押しですが
なにはともあれ
ちょっと小さくなる新しい部屋のサイズに
「持ち物の量を合わせる」ために
嬉しい楽しい「断捨離」が始まります。

逆ヤドカリ式ですから
モノの量に
部屋を合わせるのではなく
「部屋のサイズに
モノの量を合わせる」のです。

「制限のある恋は、燃える」
と言いますが
部屋のサイズも制限があると
燃えるものでして
色恋の抜け切ったわたしにとっては
禁断の恋よりも、断捨離の方が魅力的。

わたしにとって断捨離は
ライフワークや趣味というより
なんというか、
もう「マゾ的な喜び」。

「ひるむな、まだやれる!」と
ムチで叩かれたいというか
どこまでも追い込まれ続けたい。
傷口に塩を塗り込み
さらに痛めつけたくなるという。
これをマゾと言わずに
何をマゾというのでしょうか。

ま、そんなわたしの性癖はさておき…

部屋のサイズが小さくなると
如実に感じるのが収納の少なさ。
特に「クローゼット」のサイズは
小さくなってしまいます。

そのため、引っ越しが決まると
ワクワクしながら
洋服の断捨離が始まるのですが
これが不思議なことに
引越しのたびに断捨離をしても
出てくる出てくる、不要な服が。

クローゼットは
マジック並みの不思議な箱です。
いずれ”白い鳩”が出ることでしょう。

「もう捨てる服なんかない」と思っても
安心してください。
「所有している、すべて洋服を着る」という
着せ替え人形的な遊びを行うことで
意外にも断捨離候補はワラワラと出てきます。

本当に必要な服だけを残したいのなら
すべての服を
「見て判断するだけではダメ」で
「着てみること」が重要。

身体の形や自分の雰囲気というものは
日々ちょっとずつ変わっているものです。

ハワイが1年に6−8cmずつ
北西に移動しているように
わたしの身体もパーツも
地殻変動により崩壊しているわけで(?)
その変化は小さ過ぎて
一見しては分からないけど
(見てないふりをしているのかも)
久々に袖を通す服を介して
変化を感じることもあるのです。

往々にして、自分のイメージは
「いい感じにデフォルメ」されているもの。
今一度、身をもって確かめることが肝要です。

引っ越しに限らず
クローゼットの整理をしたいなら
全部の服を着てみることをオススメしたいです。
新たな自分に向き合うことになり
トレーニングジムへの入会を
検討することになるかもしれませんが
それは、まあ、それとして。


そして、着用してみてその服に
ちょっとでも違和感があれば
「ラッキー、減らせる」と喜び
即その場で写真を撮って、メルカリへ。
あとで出品しようと思っていると
めんどくさくなってしまい
またクローゼットの隅で
眠らせることになりかねません。

また、「痩せたら着るかも」と
ありもしない空想に脳が乗っ取られ
そっとクローゼットに戻すという
無謀な振る舞いをしてしまう
可能性もありますから、ご注意を。

もう一つ、部屋が小さくなるにつれ
問題になるのは家具のサイズです。

部屋の総平米数に比例し
リビングサイズは小さくなるもので
ひとまわり小さくなった部屋に合う
レイアウトに変更するなど
工夫を要する必要があります。

恐ろしいことにリビングには
人の「時間を食う」
大きな面をしたヤツが
幅を利かせております。

それは、言わずもがな
テレビとソファーのことですが
わたしは、前前前回の引っ越し時に
「テレビ」をリビングから追い出し
必要時のみiPadとワイヤレスTVを使って
TVを使うようにした結果
ダラダラとテレビを見て
時間を消費してしまうことがなくなりました。

加えて、前々回の引っ越し時には
「ソファー」を追い出しまして
代わりに一人掛けの
リラックスチェアとオットマンを買いました。
これにより、
部屋の広さに余裕が出ただけではなく
ソファーが目に入った途端に
寝転びたくなるという
パブロフの犬的な衝動は消滅した上、
ソファーに寝転がった瞬間に
気を失うという
謎の病気”うたた寝”から解放され
夜の睡眠の質も上がった気がします。

日常にメリハリをつけたい
と、思っている方には
「新しい生活」を機に
テレビとソファーのない生活を
強くオススメしたいと思います。

使える時間が多くなり
本をたくさん読めたり
家の片付けが捗ったり
ゆっくりお風呂に入れたり
いいことしかありません。

犬のうたた寝は、椅子を変えても解消されないようです



「引っ越し」には人々の大きな変化が伴う
ストーリーがつきものです。
大学入学、就職、転勤、同棲、結婚
はたまた離婚なども。
まさに「新しい生活」の始まりですね。

特段住まいを移る必要がない場合でも
「時には気分を変えたいから」と
慣れ親しんだ街を離れ
満帆を張り、新たな街へ出港するような
引っ越しもあるでしょう。

街は、個々のユニークな街並みに加え
そこに寄り集まる人々によって色づけされ
個性を創り出していくものですから
同じように見える街でも千差万別。
いろんな街に出会い
様々な暮らしの風景を味わいたくて
引っ越す方も多いのではないでしょうか。

わたしもそんな
旅するように移居する自由な暮らし方に
憧れを抱くこともあります。

部屋のサイズを「徐々に小さく」していく
という目的だけならば
街を変えることもできるのですが
結局わたしは
ずっとこの場所に留まっていて
同じマンションの中でウロウロ。

その理由は、至極単純で
この街が好きだから
離れられないのです。

春には道に桜のトンネルができ
蝉やコオロギなどの虫の声で
季節の移り変わりを感じ
冬は落ち葉を踏みしめる音が心地よく
鳥のさえずりをBGMに
季節を感じながら歩く
我が愛犬との毎日の散歩時間は
格別のものです。

散歩中にはたくさんの
犬のお友達と出会います。
犬は犬と、飼い主は飼い主と
それぞれとのライトなスキンシップも
とても楽しい時間です。
犬の友達の名前は
「いちまる」「はくまい」
「キャベツ」「くり」など
実に愉快なネーミングなのは
外国籍の方が多いからかもしれません。

この街は大使館や国際施設が多いこともあり
さまざまな国籍の方が多く集っています。
街もお料理と一緒で
さまざまな具材が混ざり合うことで
深い味わいが出るようで
この街が纏っている
独特の「空気感」はなにものにも変え難く
結局20年もの間、居座り続けています。

春になると「新生活」という言葉が
ヒラヒラと美しい飾りをつけて舞い
街中を席巻しますが
思い立てば、いつでも
自分にとっての「新生活」を
始めることができます。

それに、
「気持ちを一新したい」と
そう思った時にはすでに
心の中の一部が
ちょっと新しくなっているものです


わたしのように
半ば強制的に「引っ越し」という
物理的な変化を起こして
暮らしをブラッシュアップしていくことも
一案ではありますが
部屋のレイアウトを変えるとか
持ち物を整理するなど
自分の身の回りを
今の気持ちにフィットさせる行為で
ちょこちょこと
「小さな新生活を生み出す」ことも
楽しいですよね。

暮らしは状況によって
アジャストし続けるもので
きっと一生、完成することはないのでしょう。

手入れしながら
暮らしを育てていく中で
良い変化を起こすたびに
「新しい生活」が始まると思えば
毎日が「新生活の連続」かもしれません。

自分が心地よい
コンフォートゾーンを創り続けるというのは
本当に楽しいものです。

わたしも、そろそろ
部屋のダウンサイジングにはピリオドを打ち
今の環境でさらなる快適空間を
追求していきたいと思っています。

しかし、そうなると
わたしのマゾっけはいかに…。
別の「制限」を見つける必要があるのか
それはそれで、恐ろしい。

今日も、最後までお読み頂き、ありがとうございました。
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from 彩

みなさまのサポートを糧に、本を貪り、誠実なコラムを書きづけたいと思っています。いつもサポート頂いている皆さま、本当にありがとうございます。