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第117話 記憶の音を奪還しに行く



 ぐるぐると目眩がしてる。さっきから部屋が回ってる。頭痛も腹痛も酷く、左右の肋骨の下がゴリゴリと鳴るように擦れて、そこから闇が上がってくる。

 一日を通して、目を閉じて瞑想状態になると、脳裏に頻繁に“警察官”の姿が出てきた。交番前に立っている姿、オートバイや、あるいは白バイに跨っている姿、それから歩道や施設内にいる姿……。
 慎重にその正体を見つめていくと、やはり彼らは男性原理社会のメタファーだった。


「警告する。
三、四次元からはみ出すな。この世界のシステムを侵すな。お前のことなら見張っている。ただし善良な一般市民であるならお前であっても守ってやろう。」

 なるほど確かに、彼らの姿は暗喩としては打ってつけ。この現代において、あれだけの機動力とネットワークを網羅して市民を守る、光の姿の“男性性”は、同時に二元の反対面ではその組織力と数とから、圧倒的な“監視”となり得る。

 つまりこれって三次元の“奴隷”でいれば保護や擁護の対象だけど、アセンションする者のことは異端者として取り締まるっていうことか……。

 それならばもう本気で、古い世界は不要だと思った。今まで見てきた、特に男性側の闇がいかに凄惨を極めていたか!まるでAIみたいな“仮面の人格”に、これ以上自分を明け渡してはいけないと思った。だからそのために今、スサナル先生という光明に神経を集中した。


 深呼吸で整えてから、ハイヤーセルフにセンタリングする。そして願う。
 この願いがエゴから来るのかとても区別がしづらいけど、それでも肉体を持った先生に、私の肉声で愛を伝えたい。肉の声で叫びたい。
 五次元の肉体を楽器とし、きちんと自分の喉を震わせ、形状そのまま“肋骨”という【門】に閉じ込められた【音】……原初の音を絞り出して本物の音を伝えたい。

「あなたを愛しています。」

 頭で思うだけじゃなく、はっきりと、そして真っ直ぐに、“声”にエネルギーをしっかりと込めて口にする。それに反応するかのように、呼気が一気に上がってくる。

……

 階下であきらが食器を洗う音がしている。
完全に、朝寝坊。あの子は一人で適当な朝ごはんを終わらせると、やがて自室に戻ってきてから日曜の午前を満喫するだろう。
 そんなボーッとした微睡(まどろみ)の中で、いつしか再び意識が遠くなり思わず二度寝をしてしまっていた……。


 心臓が一つ、落っこちていることに気がついた。サーモンオレンジ色のハート形。茶色い円錐状の、大きな棘が二本も刺さっている。
 その奥に、スサナル先生が横になって寝ているのが見える。

 ああ、これはあなたの“大切”なのね。

 かつて、看護婦さんという呼び方で日本に入ってきた時のような、くるぶし近くまであるレトロな白を纏った私が慎重に棘を抜いていく。意識を向けると二本の棘は、塵のように粉々になり、空中へと舞い上がって消えていった。

 トレーに載せた心臓を、大切に運ぶ。横になっているスサナル先生の所まで。
 全ての所作を丁寧に、そして祈りを込めて行う。

 視覚に入ってしまうことで傷の痛みが増すと可哀想なので、顔にそっと目隠しの布をかける。棘を外した心臓を優しく包むと、ゆっくりと時間をかけて、この人の体の中へと戻す。両手で蓋をしてしばらくの間撫でるように押さえてから、しっかりと体内に収まったのを確認していく。


……泣いている。
 目隠しの布の下で声を殺し、涙を流している。

 こういう時、私はどうしてあげたらいいんだろう。一体どこに手を置いてあげたらいいんだろう、大切な人。
 そっと隣に添い寝のように、肩を包むように、胸を包むように。

 すると唐突に。

 突然ガバッと上半身を起こした彼、泣きながら、雄叫びをあげたかのような表情で跳び出しそのまま空へと飛んでいく。何かにひっかかったようで、私も一緒にぶら下がってる。
 無声映画のシーンのように、そこに音はなかったけれど、彼の中から音なき“音”が炸裂していた。

 飛んでいる時に、落っこちそうな私のことを抱え直して、おんぶしてもらうことにする。
 背中にぴったりくっつくと、スサナル先生、嬉しそうに笑った。

 地球と、月があって、私のサードチャクラが反応していた。



※現実世界で働いている警察官の方、またその職務とは無関係です。

written by ひみ



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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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これね、闇という漢字。門に音が封じられているのもそうなんだけど、世界には開く力と同じだけ、閉じる力もあるの。

ただね。

スピ界隈だと有名な話かもだけど、気という字も本来『氣』だったんだよね。
だけど戦後、日本のエネルギーを封じるために、「气」の内側を、「〆」にしちゃった。
本来、「八十八」という「米」の字、八方に広がる力が入っていたのを封じちゃったんだよ。
結果、日本人の活力の源、米離れ。うまく作用してる。

そのことを思いながら114話『反乱分子よ気高くあれ。』に戻ると、あれ?『日本』も女性名詞だったよねって色々と見えてこない?

そうそう。ついでに「オーサグラフ」で検索かけてもらえると、そのオーサグラフという手法で見た世界地図の五大陸は、日本をギュッと寄せた形をしていることがわかると思う。

世界の中の日本じゃなくて、形で見ても日本が世界の雛型だって見えてくる。
その日本(女性、地球)を、世界(男性、宇宙)が封じてるの。で、それってね。

あなたの中の女性性がそのことを自覚し、あなたの中の男性性の闇に原因を探るから、あなたのいる世界が反転してアセンションするってことなんだよね。

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←今までのお話はこちら

→第118話 ツインレイの体

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