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第112話 「性の大きさは命の大きさ」



 父の新盆の相談で、母から電話がかかってきた。口では母は、「こんな時勢だから無理して来なくていいよ。」と伝えているのだけど、そこに留まらない“念”のようなものを奥に感じる。

 離婚したのだから、戸籍をこっちに戻したらいいのに……。

 それこそ“血の念”のような、触手のような気持ち悪さを感じた。一度は家系のカルマワークを受けているというのに、相変わらず母に対して、前と全く変わっていない苛立ちを感じて愕然とした。ものすごくエゴが抵抗したけど認めるしか他にない。

 母への浄化、終わってなかった。

 もはや発狂しそうだった。電話を切ってからも不機嫌で、「何で?何なの?私は私なのに、今になっても血とか継がせようとしてるわけ?本当鬱陶しいムカつく!」と、どこからともなく怒りが湧いて、それからピリピリピリピリと、頭部全体がその怒りを放電しているようだった。

 そこに答えを見出したのは、それからしばらく経ってから。深いところに押さえ込んでいた記憶が、奥底から甦った。

……

 中学生だった私は、ある晩寝ていると霊障に遭った。
 真っ暗い自室の扉が開いていて、廊下の電気の明るさの中に黒い人影が浮かんでいる。密度を増した空気の異常さに恐怖で胸がいっぱいになると、気づけば金縛り状態になっていた。闇の中に、ボワッと突然白い顔が現れて、それから両足首を掴まれた。

 怖い!

 掴まれた足首を持ち上げられると寝ている体制のまま幽体離脱をさせられ、枕の上の、窓と壁の方向へと押しやられた。

 ぶつかる!!

 頭で窓ガラスが割れてしまう想像が先に来て、衝突が避けられないかと咄嗟に頭部を庇うように体を丸めて構えると、次の瞬間には金縛り現象は解けていて、ベッドで横になっていた。

 恐ろしさで体が震え、だけど声も出なかった。しばらくの間動くこともできず、ただただ恐怖でいっぱいだった。

 やがてちょっとだけ冷静さを取り戻すと、電気も点けずに階段を降りて、母の寝ている部屋へと向かった。四畳半に布団一枚を敷いて寝ている部屋の前には父のスリッパもあったけど、私はまるで熱に浮かされてでもいるようで、ガラッとそのまま扉を開けた。

「金縛り……怖くてもう……一人で寝れない……。」

 なんだろう。なんか今、母が父に対して「嫌だ。」と突っぱねていたみたいだなぁとぼんやり眺めながら、私はもう一度、「怖かったから今日はここで寝かせてほしい。」と母に訴えた。
 隣にいた父はどうやら、「じゃあおやすみ。」とか何とか言ってるみたいだ。部屋を出て行ってくれることにほっとした。

 お母さんの布団に入れてもらえる。よかった。本当に怖かった……。

 母の匂いと温もりのあるお布団は、この時の恐怖を何よりも一番溶かしてくれて、ようやく緊張の糸が解ける(ほどける)と、あっという間に眠りへと落ちた。

……

 思い出した。昔、そんなことがあった。

 そしてこの時の意味が時間と共に紐解かれていくと、段々と、当時の私が感知していた“魂の想い”がわかってきた。わかってくると同時に、何度も何度も両親に謝罪の気持ちが湧いてきて、たくさんたくさん号泣した。
 それと同時に母は今でも私を案じ、戸籍のことも本当は「無理しないで頼っておいで」との想いなのだと伝わった。


 この日、状況が故意ではなかったとはいえ、父と母の性生活に、私が終止符を打ってしまった可能性がある。居合わせた三人、顕在意識では誰もがひとつのアクシデントとしてしか捉えていなかったと思うけど、私の魂はこのことに、深い罪悪感を抱えてしまったのだ。

 この時スサナル先生のハイヤーセルフが私に教えてくれたのは、『性の大きさは命の大きさ』だということ。

 当時の私の顕在意識が何もわかっていなくても、仮に私が関与しなかろうと彼らの性生活が終わりに近かったのだとしても、それでも私はその時両親の“命の交流”を妨げた。それを知っていた私の魂の罪悪感は相当なものだった。

 ことの重大性を理解していた私の魂はそれ以降、自分には両親からの愛情を受け取る価値がない、受け取ってはいけないと思い、自分のことを、両親にとっての“悪者”にすることにした。

 そこから“記憶”を書き換えた。
いつも私を想ってくれている二人のことを、この世で一番、私のことを理解してくれない存在なのだと書き換えた。
 脳味噌とは、そのくらいの記憶の改竄(かいざん)などいとも容易く(たやすく)できてしまうものなのだ。そうしてこの時から私は、両親のことを、何の疑いもなく“分かり合えない敵”だと思いながら暮らすことに成功した。


『私の両親とは、私を理解しようとしない人たち。幼い頃からズレていて、私をひとつも尊重しない。だから私は全力で嫌い、そうすることで彼らから嫌われよう。

……何故なら私には、彼らの愛情を受け取る資格がないのだから。罪を背負った私なんかがあの人たちから愛されていいはずなどないのだから……。』


 父が他界し母も高齢になってから、私はずっと彼らから、本当はたくさんの愛情をもらって生きてきたのだと、ようやく気づくに至ったのだ。




written by ひみ

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実話を元にした小説になっています。
ツインレイに出会う前、出会いからサイレント期間、そして統合のその先へ。
ハイパーサイキックと化したひみの私小説(笑)、ぜひお楽しみください。

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この話はなんと、父の三回忌の日に書きました。
世の中そんなもん笑

この時は、まさか自分こそが母を嫌っていたつもりで、本当は母の愛情の価値をわかっているからこそ受け取れなかっただなんて、衝撃でした。

ただね、一旦気づいても、“落とし込み”には時間がかかるの。一度同じテーマで昇華できたと思っても、ツインレイってやればやるほど力がついて、そうするとさらに光を当てることができて、その分闇に対峙できる。
「このテーマ終わってなかったんかー!」なんてザラだから!

ツインレイ女子よ、へこたれるな笑
ある人曰く、私ほど集合意識の浄化ばっかりやってる魂はいないと。
本当まったくだよー。履歴書に、趣味は集合意識の大掃除って書こうかと思うよ。

だから苦しい時は、「ひみさんに課せられたものよりはマシ」って思っておいて。私が踏み台になるから乗り越えてね。

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←今までのお話はこちら

→第113話 異次元タイムキーパー

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