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医療 製薬業界|グラフで読み解く企業分析【中外製薬】

クリニファー株式会社でインターンシップをさせて頂いております、大学院生のオダニと申します。
今回の記事は「グラフで読み解く企業分析【中外製薬】」です。コメントやアドバイス等ありましたら、ぜひお願いいたします!

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記事本文↓↓

世界有数の製薬企業であるロシュ社との戦略的アライアンスの締結、抗体医薬品や中分子医薬品などの高い創薬技術を有する中外製薬。本記事では中外製薬の①成長性、②強みを持つ領域・モダリティ、③将来性の3つに焦点を当て、企業分析を行った。それぞれの項目について、グラフを用いて述べていく。


① 成長性

 売上高、営業利益の5年間推移

中外製薬の5年間(2018~2022年度)の売上高と営業利益を、決算情報(*1)~(*5)をもとに下のグラフにまとめた。なお、2023年度は中外製薬の決算情報(2022年12月期)で報告された業績予想である。

※23年度は予想

売上高と営業利益の推移から、2018年度から2022年度の5年間でかなり順調に成長していることが読み取れる。特に、売上高に関しては2018年度の5,798億円から2022年度の1兆2,599億円と2.17倍成長しており、ここ5年間では国内の大手製薬企業の中で最も成長している企業であるといえる。さらに中外製薬の大きな特徴として、営業利益率の高さがあり、2022年度は42.3%だった(他社製薬企業の営業利益率は10~20%程度)。一方、中外製薬の決算情報によると2023年度は売上高が1兆700億円で8.4%の減収、営業利益は4,150億円で8.1%の減益が予想されている。これは、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類相当から5類に移行されたことを受け、COVID-19関連治療薬の売上収益が1,427億円ほど減少することによるためであると報告されている。しかしながら、国内外基盤ビジネスは成長の見通しであり、新製品「ポライビー」や「バビースモ」、「エンスプリング」、主力品の「テセントリク」、「ヘムライブラ」の伸長が予想されている。

 地域別売上高の5年間推移

中外製薬の売上高の国内・海外比率における、5年間の推移を下のグラフにまとめた。

海外での売上が2018年度は全体の27.3%であったが、2022年度は47.8%に増加している。国内の売上比率は20%ほど減少したものの、売上高は伸ばしており、国内海外ともに堅調に売上高を伸ばしていることがわかる。

② 強みを持つ領域・モダリティ

 領域別の製品数と売上高

中外製薬の2022年度における領域別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が100億円以上の製品をまとめた

中外製薬が最も売上をあげている領域はがん領域であり、次いで血液領域、感染症領域となった。がん領域は製品の種類も多いことから、中外製薬はがん領域に特に注力していることがわかる。血液領域では「へムライブラ」がほとんどの売上を占め、2,430億円だった。感染症領域では、コロナ治療薬の「ロナプリーブ」が2,037億円をあげた。以上から、中外製薬はがん、血液疾患の領域に強みを持つことがわかる。

 モダリティ別の製品数と売上高

中外製薬の2022年度におけるモダリティ別の主要製品数(売上100億円以上の製品数)と売上高を下のグラフにまとめた。

※売上が100億円以上の製品をまとめた

中外製薬の主要製品のモダリティは抗体だった。次いで、低分子が多かった。中外製薬のがん領域の医薬品は他企業とは違った特徴を持つ。具体的に、他企業では低分子の抗がん剤がほとんどであるのに対し、中外製薬ではモノクローナル抗体の抗がん剤がほとんどである。また、売上のほとんどを抗体医薬品が占めていることから、中外製薬は抗体医薬品に強みを持つことがわかる。

 主力3製品の売上高の5年間推移

中外製薬が開発した製品の中で最も売上を上げているのは「へムライブラ」、次いで「ロナプリーブ」「アクテムラ」だ。これら3つの製品を主力3製品とした場合、中外製薬の成長は主力3製品の売上高の増加に大きく依存していると考えられ、主力3製品の過去5年間の売上高推移をグラフにした。

2018年から上市が開始された血友病A治療薬の「へムライブラ」、コロナ治療薬として2021年から販売が開始され、初年度で774億円の売上をあげた「ロナプリーブ」が好調であり、中外製薬の成長を支えていることがわかる。特に2020年度から2021年度にかけて「へムライブラ」と「ロナプリーブ」の売上は併せて1,730億円増加し、2021年度から2022年度では併せて2,135億円増加した。以上のことから、「へムライブラ」と「ロナプリーブ」の好調が2021年度、2022年度売上高の飛躍の大きな要因であるといえる。ただ、上述したように新型コロナウイルス感染症の2類相当から5類への移行により、2023年度は「ロナプリーブ」の売上は47億円の増加、「へムライブラ」77億円の増加と落ち着く予想である。

③ 将来性

 国内開発パイプライン数

中外製薬の将来性を評価するため、国内開発パイプライン数を調べた。下に現時点(2023年7月末)でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数(*6)をまとめたグラフを示す。

現在申請の段階まで達している医薬品は4製品、P3は30製品ある。ロシュと中外製薬の開発パイプラインの合計であるため、かなり数が多い結果となった。以上のことから、新薬となりえる開発パイプラインを多く有しており、今後の安定性と更なる成長を十分にうかがえる。

 領域別の国内開発パイプライン数

続いて中外製薬が現在注力している領域を調べるため、2023年7月末でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数を領域別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点で申請まで進んでいる製品はがん領域で2つ、血液、眼領域で1つだった。P3段階まで進んでいるのはがん領域が最も多く21個、次いで神経領域で4つ、免疫領域で2つなどだった。以上のことから、中外製薬は特にがん領域に注力していることがわかる。

 モダリティ別の国内開発パイプライン数

最後に中外製薬が現在注力しているモダリティを調べるため、2023年7月末でP3~申請段階まで進んでいる国内開発パイプライン数をモダリティ別でまとめた。そのグラフを下に示す。

現時点で申請段階まで進んでいるのはすべて抗体で4つ、P3まで進んでいるのは抗体で22個、低分子で6つ、遺伝子治療で1つだった。モダリティ別のパイプライン数からもわかる通り、中外製薬は抗体医薬品の開発に強みを持つことがわかる。

まとめ


✓ 成長性
 売上高は2018年度から2022年度の5年間で2.17倍になり、かなり成長している。
国内海外ともに堅調に売上高を伸ばしている。

✓ 強みを持つ領域・モダリティ
がん領域で最も売上を上げている。がん領域、血液疾患領域に強みを持つ。
● 抗体に強みを持つ。タンパク製剤も有しており、バイオ医薬品の開発が強い。
「へムライブラ」と「ロナプリーブ」がかなり好調。ただ、2023年度は売上が落ち着く予想。

✓ 将来性
がん領域に注力しており、多くのパイプラインを持つ。
抗体医薬品に強みを持ち、多くのパイプラインを持つ。

他の国内製薬企業についてもグラフを用いて企業分析しています。ぜひご覧ください!(マガジンはこちら


*1 中外製薬[4519]:2018年12月期 連結決算〔IFRS〕補足資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_46.pdf&src=[%0],[%1]&rep=119,46
*2 中外製薬[4519]:2019年12月期 連結決算〔IFRS〕補足資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_50.pdf&src=[%0],[%1]&rep=119,50
*3 中外製薬[4519]:2020年12月期 連結決算〔IFRS〕補足資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_54.pdf&src=[%0],[%1]&rep=119,54
*4 中外製薬[4519]:2021年12月期 連結決算〔IFRS〕補足資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_58.pdf&src=[%0],[%1]&rep=119,58
*5 中外製薬[4519]:2022年12月期 連結決算〔IFRS〕補足資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_62.pdf&src=[%0],[%1]&rep=119,62
*6 中外製薬[4519]:2023年12月期 第2四半期連結決算〔IFRS〕補足資料
https://www.chugai-pharm.co.jp/cont_file_dl.php?f=FILE_3_64.pdf&src=[%0],[%1]&rep=119,64 

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