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【医療物資のドローン物流】 コロナ禍で加速したドローンによる医療サプライチェーン変革[序章]

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックによってドローンによる医療サプライチェーン変革が一気に加速した。もともとの強みである速さに加え、非接触型デリバリーのニーズが高まったことが要因としてあげられる。

そうは言うものの、ドローンで医療サプライチェーンがどう変革されているのかイメージの浮かばない向きも多いと思われる。そこで医療物資のドローンデリバリーがどんなものか、百聞は一見に如かず、まずはENAC(イタリア民間航空公団)がLeonardo社、Telespazio社、バンビーノゲス小児病院と共に行ったデモンストレーション動画をご覧いただきたい。

医療物資のドローン物流

医療物資のドローン物流は、誰もが迅速に医療アクセスできる世界の実現を目指し、2013年ドイツのAED搬送ドローン開発、2014年オランダでのAED一体型ドローンによるAED救急搬送フィールドテストを皮切りに、2016年ルワンダで世界初となる血液など医療物資の全国規模ドローンデリバリープログラム開始、2019年アメリカで世界初となる移植用臓器のドローン搬送と着実に進展してきた。

医療物資のドローン物流に対して積極的に取り組んでいる国や地域には、イギリス、ドイツ、イタリア、オランダ、スウェーデン、カナダ、アメリカ、オーストラリア、ルワンダ、ガーナ、タンザニア、ナイジェリア、マラウイ、モザンビーク、コンゴ民主共和国、ウガンダ、インド、中国、バヌアツなどがあり、PPE(感染から身を守る個人用防護具)や検体(サンプル)、COVID-19ワクチンなどがドローンデリバリーされている。

特にコールドチェーンが整備されていないアフリカではCOVID-19ワクチンの輸送手段としてドローンが必要不可欠であり、ガーナが世界初となるCOVID-19ワクチンの全国規模ドローンデリバリーを実施すると、コンゴ民主共和国も全土を網羅するドローン配送網を構築してCOVID-19ワクチンのドローン搬送を行っている。

「ドローン物流」日本の認識不足

翻って日本の状況を確認すると、残念ながら処方薬のドローンデリバリー実証実験が行われている程度の段階である。そればかりか、ドローン後進国であるが故にドローン関連の情報が不足しており、新聞やテクノロジー系メディアの記事に不正確な内容が散見されることは少なくない。

例えば、日経ビジネスの記事『ドローン、おもちゃじゃない 法改正で輸送用へ前進』に「ハードである機体の性能が、ビジネスに耐えられるほどまだ高くないのだ(中略)航続距離も数~10キロメートルが限界で荷物の重量によっては全く使い物にならない場合も多い」という事実誤認が見受けられる。

さらに日経クロストレンドの記事『「セグウェイの失敗」を繰り返さないためにドローンがすべきこと』に至っては「ドローン配送に話を戻すと、このサービスはまだ提供開始前の状態であるため」と事実に反してまだ開始していないことにされている有様だ。

「ドローン物流」に対する誤解を解く

「医療物資のドローン物流」について書いて行くにあたり、まずはこの辺りのドローン物流に対する日本の誤解を解いておきたい。そこで次回は[機体篇]「デリバリーで活躍するドローンたち」として医療物資のドローンデリバリーに使用されている機種を中心にドローン機体(UAV)とその性能を見て行きたいと思う。決して航続距離が数から10kmなどということはないと理解いただけるだろう。



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