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映画「グランド・ブダペスト・ホテル」の指輪 〈映画の指輪のつくり方〉第6回

5月の昼下がりにヨーロッパ旅行しようぜ
2014年公開映画「グランド・ブダペスト・ホテル(THE GRAND BUDAPEST HOTEL)」の指輪
文・みねこ美根(2018年5月15日連載公開)

「映画音楽が好きなの?最近は何が良い?」
私「最近だと…グランド・ブダペスト・ホテルとか…」
「ああ、あのおしゃれ映画ね(笑)」
私「はあ…」

 どこで、誰と、この会話をしたのか忘れてしまったが、4年前であることと、このやりとりの内容だけ覚えている。私が好きだと言っている映画を判断材料に「ハーン、そういう系統の映画が好きなわけね」という感じでニヤニヤと言われたものだから、「なにを!」と思いつつも、高校生だった私は何も言い返せなかった。映画の良し悪しの評価は人それぞれ。でも、この作品はそんな安易な一言ではとても表せない奥深い作品だと私は思う。

 2014年に公開されたウェス・アンダーソン監督作品「グランド・ブダペスト・ホテル」は、確かにおしゃれだが、それだけではない。非常にきめ細やかに(この形容では間に合わないほど精巧に)構築された世界なのだ。一貫して存在する郷愁、そして冷静さ。これが魅力の大きな要因である。いろいろカメラワークのことだったり、画面構造だったり、筋書きだったり、興味深いところがたくさんあるから、話は尽きない。が、いくら素人の私が話しても仕様がないので、ぜひ評論家の方の文章でも読むことをお勧めしよう。
 作中、ミニチュアを使った特徴的なシーンが登場する。なんとなくミニチュアだと分かる感じの映像が、客観性と滑稽さ、面白可愛い雰囲気を生んでいるように思う。ちなみに私は小さいころからミニチュアが大好きだ。ミニチュア、模型や人形の家を見ると大変興奮する。小さいころの愛読書は「ミッケ」だった(ミニチュアの写真がたくさん載っているから)。可愛くて精巧、本物みたいだけれども、なんとなく大きさがつかめない違和感…。これが、大人向けの絵本のようなこの作品にぴったりなのだ。

 この映画は、可愛くて明るい雰囲気だけでなく、影を落とす戦争や、多くを語らない人物の哀愁、物語が昔へと遡って語られる構造など、これらが織りなす郷愁によって、一層味わい深い世界となっている。
キャストも最高!レイフ・ファンズは「ハリー・ポッター」のヴォルデモート役でご存知の方も多いかと思うが、彼には素敵な鼻がちゃんとあるのでぜひ見て頂きたい。そして、マチュー・アマルリックのあの虚ろな目も、ぜひ見ていただきたい。

 音楽は本作と「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞を受賞したアレクサンドル・デスプラ。民族音楽っぽさもありつつ、癖のある映像世界と見事に合うわけだからすごい。使われている民族楽器も面白く、聴きごたえがあって、サントラ購入必須。最後のエンドロールまで聞いて欲しい。(映像的にも可愛いおまけがあるからエンドロールは早送りせぬよう!)

 私もコンシェルジュになって、皆様をいざなおうにも、今はまるでゼロ・ムスタファ所有時のグランド・ブダペスト・ホテルの状態なのだ。ぜひ、お越し願いたい。お待ちしている。

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モチーフ:ゼロのロビーボーイの帽子、グスタヴ.Hの香水ル・パナシュ、
   アガサの陶器のペンダント、「メンドル」のシュークリーム・タワー
音楽:「Mr.Moustafa」Alexandre Desplat (オルゴールver. cover)

オルタナティブ・シンガーソングライターの〝美根〟です。
作詞作曲をして、ギターとピアノの二刀流で唄い、自分の世界を届けています。
「みねこ美根」名義で活動していた2018年から、OKMusicさんにてweb連載を続けてきた「映画の指輪のつくり方」。
たくさんお世話になったOKMusicさんのサイト運営終了に伴い、noteに移行して連載を続けています。
毎月、大好きな映画から一つ選んで、それをテーマに指輪を制作。
勝手に皆様へお薦めするレビュー文章、制作作業動画を公開中。動画では劇中歌のカバーも。ぜひ、楽しんでいってください。
私の本業である音楽活動など、さまざまな情報は下記リンクからがとても良きです。

私を知るためのキーワードは・・・
オルタナティブ、ライブ活動、ランプ、弾き語りスタイル、バンドスタイル、耳と脳にこびりつく作品たち、心火、焔心の砦、美術館でも展示された指輪たち、自作ストップモーションアニメ、MV、毎週水曜生配信番組、2024年5月24日と6月9日のワンマンライブ、人生初の弾き語りツアー・・・
知りたくなってきた?→ https://lit.link/minelink

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