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高松商業 長尾監督の「導く力」

最近,学生指導へのヒントを探すために,教育論やコーチング論に関する書籍を意識的に読むようにしている。

先日,高松商業高校の野球部で監督を務めている長尾健司先生が書かれた「導く力 自走する集団作り」を読んだ。

今年の7月に発売されたばかりの本で,本の発売後に高松商業は今夏の甲子園への出場権を得た。

高松商業について

もしかしたら長年の高校野球ファンや自分のような四国出身の人間しか知らないのかもしれないが,高松商業は高校野球の名門で,春夏合わせて49回の甲子園出場,全国制覇も4回達成している(選抜第1回大会の優勝校!)。

長尾監督就任3年目に出場した2016年春の選抜のチームが当時とても魅力的で,その頃からずっと注目している高校だ。

本書にも登場するが,この時のチームは,主将の米麦選手やエースの浦選手,主砲の植田選手,俊足の安西選手,センス抜群の美濃選手など,個性的な選手がたくさんいて,結果,神宮大会を優勝,春の選抜を準優勝している。

特に,俊足強打の二塁手で投手も務めていた美濃選手が当時のお気に入りだった。

長尾監督の指導法

長尾監督は高校野球の指導者にしては珍しく,中学軟式野球部の指導者からキャリアをスタートされている。

その中で様々な苦労をしながら,磨き上げてきた学生主体の組織(自走する集団)作りの方法が,本書でまとめられている。

印象に残った言葉をいくつか紹介する。

「価値ある答え」は「考えた答え」であり,「正しい答え」ではない

本書では,トップダウンで答えを与えることを繰り返し否定している。

Educationの語源は「引き出す」にあり,知的好奇心をくすぐるような問いかけをしながら生徒の考えを引き出すことが教員の役割だと書かれている。

自分たちで考えたことはやる気や責任に繋がるし,生徒自身が納得して取り組むことで自主性が育まれる。

考えて出た答えを頭ごなしに否定するのではなく,なぜそう考えたのか?と突き詰めていくことが大事だ。

「失敗」と書いて,「成長」と読む

元々は故野村克也氏の言葉だそうだ。

失敗して終わりではなく,その失敗をどのように成長に繋げていくか。

なんと長尾監督は最後の夏の大会敗退後にも選手たちと反省会をするらしい。

「お疲れさん」で終わらせるのではなく,何が足りなくて負けたのかその理由を突き詰めていくことは,その後の人生にも役に立つとの考えがあってのことだ。

負けたのは選手の責任

よく「負けたのは私の責任」という監督がいるが,長尾監督はこの考え方を否定している。

あくまでもプレーするのは選手で,監督ではない。

自分たちで考えて判断して実行していく。それは選手にしかできないことなので,プレーの責任は選手にあるというのだ。

常に学生主体の教育をし,自走する集団を作り上げている自負があっての言葉だろう。

おわりに

高校野球についてある程度知識がないとイメージしにくい部分もあるかもしれないが,自分はのめり込んで3時間ほどで一気に読み終わった。

特に試合中の選手起用に関しては,目頭が熱くなる場面がいくつも登場する。

長尾監督の教育論を読んでいると,現千葉ロッテマリーンズの吉井コーチの考え(書籍「最高のコーチは,教えない」)に似ている部分を感じた。

あくまで選手自身が考えて身につけることを両者とも強調していて,そこにプロもアマチュアも関係ないのだと思った。

一点だけ,吉井コーチは選手と一定の距離を置くようにしているが,長尾監督は選手との垣根がないように心がけているらしい。

そこはプロとしての指導と教育の現場での違いだろうか。

8月16日現在,高松商業は全国のベスト8に残っている。

高松商業の強さの秘密や学生主体の組織作りに興味がある人はぜひ読んでみてほしい。



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