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「ミルク喜多の知らない世界」03 羽毛を通して見る未来 (雑誌連載コラムアーカイブ)

はじめに、こちらのコラムは2019年に雑誌の連載枠で寄稿していたものです。せっかくなので、noteの手始めとしてバックナンバーを掲載させていただこうと思います。ちなみにこちらの連載コラム、タイトルは「ミルク喜多の知らない世界」でした。笑 持続可能な開発”目標”であるSDGsが、マーケティングやブランディングの“手段”となっていることに”違和感”を持っている人には、少しは役立つnoteになるかもしれません。不定期でアップしていきますので、フォローいただけると嬉しいです。

————————————————「カジカジ」連載コラム 2019.10 No.278 掲載

秋冬シーズン間近となり、今回は私も仕事の一部で関わっている「ダウン(羽毛)」の話。大抵の人が羽毛製品を持っているのではなかろうか。私も昔はダウンについて、品種だのフィルパワーだのというスペック的な話だけで消費や接客を繰り返していた気がする。その頃はまさか自分が羽毛に関 わる仕事をするとは思いもしなかった。

 元来製品に使用される羽毛は、いわゆる「食肉産業の副産物」が中心。しかし近年は様々な理由でそのバランスが崩れ、羽毛の品質や価格が安定しなくなってきた。様々な要因が発生して需給バランスが崩れている。これは製品過剰生産、食文化、鳥インフルエンザなどの問題も関係してくる。ではどうなるか。羽毛の値段が不安定になり、粗悪な羽毛が出回ったり、生きた鳥からむしったり、なんて問題が発生。これらを解決すべく、近年羽毛リサイクルで循環させる動きがある。驚く事に羽毛は洗い直すと、見違えるほど綺麗に蘇る素材なのだ。実は寝装業界では昔から羽毛布団の打ちなおしといって洗い直して新毛を足して繰り返し使われてきた。

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 現在、日本で代表的な取り組みとして「Green Down Project」という企業が集まる団体がある。私も前職でこの団体発足に関わり、今尚関わっている。なにが面白いのかと言われると、普段は競合のアパレル・寝装企業が中心に手を組み、消費者も巻き込んで日本で羽毛回収・素材使用・製品として循環するプロジェクトだ。再生羽毛の品質向上はもちろんだ。要は、みんなで羽毛循環を作ってしまえば安定した品質・値段になり、環境配慮・雇用創出にもなるということだ。  やや宣伝感は否めないが、結果なにが言いたいのかと言うと、普段身近にある素材や生産背景のその先に実は国際的・社会的問題も関わっていて、視野を広げてみるとまだ見ぬアイデアや発見を得られるのだという事だ。たった一つの「羽毛」という素材を通して、まだまだ新しい学びや繋がりの未来を感じる。皆さんも一度身近にある羽毛や素材について少し目を留めてみてはいかがだろうか。

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Green Down Projectの立ち上げ当時、私は20代半ばでした。このプロジェクトにコミットした事は、今の私の活動に繋がる大きなきっかけの一つだったと思います。当社の共同創業者の川本ともこのプロジェクトで出会いました。いやー、しかし、はじめの数年は本当に大変でした!笑 まだ世の中ではリサイクル羽毛への評価や循環社会に向けたアライアンスの概念も浸透していなかった。競合にあたる企業同士にご理解いただき、”皆で一緒に啓発していこう”という夢や理想を伝えていくプロセス、そして仕組みの設計は本当に大変でしたが、非常に学びになりました。そして今、当社で挑戦しようとしている「Loopach」。我々は必ずや、この素晴らしさと社会的価値が皆さんに届くと信じています。あの頃のようにもう一度。

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喜多 泰之 – Yasuyuki Kita

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1987年、大阪府豊中市生まれ。アパレル業界の両親の下、幼い頃よりインポートの洋服や文化に囲まれて育つ。祖父 : 高田誠三(風景写真家)
2007年 大学在学中に大手セレクトショップにショップスタッフとしてアルバイト入社。ファッションの現場で学びながら、大学にてブランド論を学ぶ。
2010年 大手セレクトショップ新卒入社
店長職を経て、ブランドPR・バイヤー・イベント企画・家具企画・CSRなど兼務し、ブランディング、野外キャンプイベントの企画運営を実践。
2018年 「MILKBOTTLE SHAKERS」の屋号でフリーランスブランディングディレクターとして活動開始
一般社団法人 Green Down Project のソーシャルデザインディレクター就任
2019年 「株式会社MILKBOTTLE SHAKERS」を設立(代表取締役)
2020年 新規事業「Loopach」を発表。
現在は、大手アパレルや異業種、ソーシャル領域までのコンサルやプロジェクトディレクションの中で、アパレル業界の社会・環境へのサステナブルなビジネスモデルの可能性を探り続けている。大学やイベントでの登壇、メディア掲載多数。

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