マジカルグランマ/柚木麻子
図書館本、柚木麻子さんの「マジカルグランマ」を拝読📖しました。
(2021,10,15 読了)
主人公は70代の正子。
元女優で、映画監督の旦那と広いお屋敷に住んでいるけれど、悠々自適な生活とは言えずいつも何か満たされずに生きています。
貪欲で承認欲求が強く、世間の素敵なおばあちゃんというイメージではない正子。
でも、それがかえって人間臭くてリアルにも感じます。
正子の周りに集まる人たちも正子に振り回されつつ、それぞれに自分らしく生きるとは何かを少しずつ見つけていき、最後は晴れ晴れとした気持ちになりました。意外などんでん返しもあったけれど。
本書を拝読して、自分たちが多くの作られた理想やイメージの中で生きていることを思い知らされます。
「マジカルニグロ」という言葉をご存知でしょうか。私は本書で初めて知りました。
アメリカ映画において白人の主人公を助けに現れるストックキャラクター的な黒人のこと。
一見良いことのように感じますが、ここに差別的な思考が隠されており、白人が黒人より優位であるというイメージを知らぬ間に世間は植え付けられているのです。
このように知らぬ間に植え付けられた理想やイメージで苦しむことは意外と多いのではないでしょうか。
本書では、世間のおばあちゃんのイメージに苦しむ正子が描かれていました。
自分事として考えると、前に記事でチラッと書きましたが長女というイメージに苦しんでいたことがあります。
「あなたはそのままでいいし、きっとその気になればなんでもできるし、なんにでもなれるわよ」
こちらは、正子がひょんなキッカケで同居することとなった若者・杏奈にかけた言葉です。
自分に対する世間のイメージに苦しむことはない。自分らしく生きていいんだと背中を押してくれる言葉だと思います。
なんにせよ、「こうでなければいけない」なんてことで苦しまなくていいんですよね。
自分の心に従って、少しでも違和感を感じるならばまた別のやり方を模索すればいい。
正子のように貪欲に何があってもへこたれても、また少しずつ浮上していければいい。
最期の時まで人間臭く生きるのもいいんではないかと思えた1冊でした。
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