【#9】7人との出会い⑦先輩の元上司と脳科学会社の社長
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全く知らない人たちの飲み会に突撃!
無職の時間長者になったは私は積極的に人に会いに行っていた。ここまで書いてきたように励ましてくれる人、警告してくれる人、仕事をくれる人、いろんな人がいた。「誰か紹介して下さい」と口にするのもすっかり慣れたころ。ついに私の人生をV字回復してくれる出会いvol.2があった。
「まゆな、私の元上司の忘年会があるんだけどいく?とってもいい人だよ。私は行けないんだけど。」
大学の時にひときわ輝く存在感を放ち、後輩にものすごく影響を与えまくった伝説のS先輩からのメッセージだった。普通なら「なんで先輩の上司の忘年会に見ず知らずの私が!」とひるみそうだが、ここは大好きな先輩の紹介ならきっと大丈夫!何か出会いがあるかもしれぬ!と、何の疑いもなく忘年会に繰り出した。今考えると完全に頭おかしいやつだし、受け入れてくれるその元上司もすごいと思う。
宣言通り先輩はそこにはおらず、私は若干緊張しながらも40代の男女6人くらいの飲み会に突撃した。先輩の元上司Tさんは、関西弁のものすごく小柄なおじさんだった。「おまえおもろいな~。Sおらんのに、よう来たなぁ~。」と、あたたかく受け入れてくれた。周りの人も同じように優しくしてくれた(怪しすぎて優しく得ざるを得なかったのかもしれない)。Tさんは帰り際「いろいろあったんやな。今度オフィス遊びにおいで。」と、声までかけてくれた。もしかしたら社交辞令だったかもしれないが、私は本気にしてしまった。
不安を一緒に受け止めてもらうということ。
後日、Tさんのオフィスに訪問した。Tさんは取締役で、社長のEさんもいた。2人はリクルートを辞めて独立し、コンサルティング会社を経営していた。私はそこで会社を辞め、必死になって何とか仕事を見つけようとしていることなど全部話した。Tさんはプロコーチの資格を持っており、これまでの私の話をただただ傾聴してくれた。そして一言。
「今のまゆなは、何に対してもファイティングポーズをとってるみたいに見えるで?」
優しい口調で放たれたその一言を聞いた瞬間、私は大号泣してしまった。まさにその通りだったからだ。無職でネガティブに沈んでしまうのが怖かった。このまま社会復帰できなかったらどうしようと不安になっていた。その不安や恐怖を口に出してしまったら、それが現実になってしまいそうでずっと明るいフリをしていたんだ。「私は何とかやりますから!大丈夫ですから!」と自分の気持ちに嘘ついて虚勢をはっていた。ほんとはめっちゃ怖かったし不安なのに。
Tさんのコーチング的な関わりのおかげで、私はそれまで隠していた自分にはじめてスポットライトを当てたような気持ちになった。本当の気持ちを吐き出せたことで、私はすっかり安心した。そして、一緒に仕事をしたこともない、見ず知らずの私にここまでしてくれるTさんの懐の深さに尊敬と心から感謝した。
「コーチングにつながる脳科学のサービスって、興味ある?」
そのまた後日、私はTさんとメッセージをやり取りする中でこんな問いかけをもらった。号泣してからというもの、私はすっかりTさんに懐いており、その前もおすすめされた本を読んだり、ワークショップなどに参加しては報告をして連絡を取り合っていた。質問には即答でYESを返した。
そのサービスは米国の大学で研究されている、脳科学を使ったパーソナリティ診断のアセスメントだった。もともと心理学部だった私は、診断結果を見て衝撃を受けた。今まで言語化できなかった自分の特性がそのまま表れており「こんなに素晴らしいものがあるなんて!」と鼻息荒く前のめりになった。さらに関連書籍や論文を読ませてもらい、その面白さに夢中になった。Tさんはその脳科学の会社とビジネスパートナーとして販路拡大の協力をしているということだった。ああ、もっと知りたい!楽しい!そう思った矢先のこと。
「実は、そこの会社の社員が産休で今お休みしてるみたいでな。ちょっと人手が足りないみたいで。今度社長に会うんやけど、一緒に来るか?」
嬉しくて心臓が飛び出そうだった。メッセージをもらってうれしくて部屋の中をぐるぐる歩き回ったりした。頭で考えるよりも、心が反応しているのがすぐに分かった。以前の転職オファーとは違って。わくわくする、もっと知りたい!やってみたい!という気持ちだった。
私でできることは何でもやります。お手伝いさせてください。
脳科学の会社のK社長とTさんと私で会った時のこと。一通り会社のことをお聞きした後に、自然とそう申し出ていた。営業・人事のときに似たようなアセスメントを扱っていたので、仕事のイメージが付きやすく、スキルを活かせるのも幸いした。そして社員の方の産休の間、営業支援や広報などの何でも屋さんとして働かせてもらうことになった。K社長もプロコーチの資格を持っており、情熱的でありながらもとても優しく接してくれた。会社に恐怖心を抱いていた私には、この上ない安心した環境でのリハビリ復帰だった。
こんなに良くしてもらっているのだから、何か恩返しせねば!私はサービスを深く理解するため、脳科学のパーソナリティ診断とコーチングを使ったサービスを個人で販売する許可をK社長にいただくことにした。書籍や論文では理解できないサービスの手触り感を知りたくなったからだ。今思えば本当に無謀な申し出だったと思うが、K社長は「いいよ!やってみて!」と私にチャンスをくれた。本当に、本当にありがたいことだ。
私はK社長の下で営業のためのマニュアル作成や広報業務をする傍ら、私は個人事業としてWEBメディアでの執筆と、メンターに指導してもらいながら「コーチング×脳科学」のサービスを立ち上げるという目標ができた。
「自分が何者かわからない」と、大勢の前で号泣してからここまでわずか2か月ほど。プライドを捨てて弱さを受け入れ、自分の心の反応に素直になって動き始めた途端、人生は急速に変わっていった。それはまるで何かに導かれているようなスピード感だった。
何をしていいかわからない暗いトンネルの中を歩くような時期は終わり、生まれて初めて「フリーランス」としてのはじめの一歩を踏み出した。そしてそれは「仕事を通じて、自分の人生に本気で向き合い、心に従ってやりたいことを手にしていく」というすばらしく味わい深く、そして葛藤しまくる日々をスタートさせるゴングが鳴ったのである。
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