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単語カードで創作小説

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単語カードに書いたワード何枚かで物語を書いてみたやつのまとめです。
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記事一覧

【掌編小説】頭痛とトレンチコート(562文字)

【掌編小説】頭痛とトレンチコート(562文字)

「雨だから、帰り気を付けてね。」
「余裕だっつーの!じゃ!」

…手で触れなくても分かる額の熱。
彼女と会った昨日、素直にコンビニで傘を買えばよかったのにカッコつけて雨の中走り切ったのが間違いだった。
なんかわかんないけど傘を買ったら負けだと思った。

白い息が出るんじゃないかというほど肌が熱い。
マクラ横の潰れたティッシュから1枚、鼻をかんでは捨てるの繰り返し。
芽生えない食欲、回し忘れの洗濯機

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【掌編小説】夜景と寝顔(679文字)

【掌編小説】夜景と寝顔(679文字)

こんな冷え込む日でも君は机に突っ伏して寝る。
「もう…風邪引くよ。」
パソコンには途中書きのレポートだろうか、私は彼の背中に布団をかけてベランダへ出る。
夜景を見ながら温めた抹茶ラテを飲むのがなんかカッコいいと思っているからだ。

まあ大学生2人が住んでいるアパートだ、別にいい夜景が見えるとかじゃないし、なんならめっちゃ工場。工場まみれで夜景とか言ってらんない。
でもこういう生活にずっと憧れていた

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【掌編小説】最後のココア(355文字)

【掌編小説】最後のココア(355文字)

「うわっ。」
断捨離の時期、キッチンの棚の奥に放置された小さなココアの袋は引っ越し始めてからいつの間にか使わなくなって後ろへと隠れていった。

明らかに残りが少ないことをシャカシャカして確認し、賞味期限を確認する。
「えーっと、まだいーけーるっか…な...?」
男はお湯が沸かし、沸騰するまでの間にどんどん後ろの袋をごみ箱に捨てていく。

煙とカチッとした音が沸騰の合図を告げ、貧乏性な男はココアの粉

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【掌編小説】去り際のハト(554文字)

【掌編小説】去り際のハト(554文字)

「それじゃ、しばらく会えんのやね…。」
雲が外れ、やっと見えた太陽の下。
改札越しに手を合わせてさよならを告げる青年青女。

大きな田舎を飛び出てもっと大きな都会へと進むことにした青年はリュックに大量の荷物を押入れ、亀のように背負っていた。
「まあ、また帰ってきたら連絡すっから。」
「うん…あっ、これ…。」
彼女が渡したのは小さなハトのキーホルダーだった。
「え?これワシらでお揃いのやつやん。」

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