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詩と散文の隙間

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詩よりも長く、散文より短い、すきまの言葉。
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さよならの音は、からりと明るく。

さよならの音は、からりと明るく。

ある時
木蓮の花が
ぽたりとおちた
まあ
なんといふ
あかるい大きな音だつたらう
さやうなら
さやうなら

山村暮鳥
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今現在、日本語の詩の中で最も好きな、山村暮鳥の「ある時」。
私が諳んじることのできる数少ない詩。
さよなら、という言葉を用いても、からりとして朗らかで湿っぽさを感じさせない類なき詩。
わたしもいつか、自らの身を以ておちるとき、暮鳥が耳にした木蓮のごとく、

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湖のひと

湖のひと

あの子は静かなひと
湖のようにしんとしている
風が波紋をつくるのを
ずっと眺めていたくなる
そのとき横にいてほしい
おだやかな湖面のようなひと
湖面の下
深く深く
どんな想いを沈めてきたのだろう
深く深く
私は知らない
深く潜ったぶんだけ
湖の色は美しい
正直であればあるほど
きれいごとのように
澄んでいく水
それでいい
それがいい
私は時々、帰りたくなる

麻佑子
#詩 #湖

空がかわいそう

空がかわいそう

ここのところ
天気がぐずついているのは
ある意味
仕方のないことだ

行き場のない思いは
空に吐き出すしかない
そんな思いが
てんでに
小さなため息にのって
空を暗くしている

ごく一部の人々が
その思いを飲み込むことを選び
体内に蓄積されたそれらを
エネルギーにかえて
えいやと
雲をおしだし
わずかな晴れ間をつくっている

そんな風に思いついて
空を見上げると
やりきれない気持ちになって
立ち尽

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あなたのためにできること

あなたのためにできること

一人の人間の手におえるのは、自分だけだと知れ。

誰かのためにできることなど、何もない。
みんな自分のためにしか生きられないし、生きるべきではない。
自分の機嫌をとることすら、容易くはないと、すぐに気がつくだろう。

「誰かのために」が、「自分のために」と同義になるその日まで、誰々のために、と口にするな。
その人の反応に一喜一憂して、何かがこんがらがってしまう。
中途半端に、他人を自分の道に巻き込

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Happy Journey  楽しい旅

Happy Journey 楽しい旅

あなたしか
あなたをしあわせにできない

その一歩からはじまる
どんなはじまりも
楽しい旅にする 必ず
覚悟さえ決めれば

あなたがゆけば
彼が来て
あの子が帰れば
君が出ていく
すべて同じこと
笑顔で手をふって
Happy Journey

あなたの旅が
楽しい旅になりますように
祈りながら
この道をゆく

詩:mayuco someya
曲:染谷拓郎
#歌詞 #詩

愛の輪郭

愛の輪郭

私の愛
それは誰も気がつかないところで
私が勝手に遵守する愛

たとえば誰かを見送ったあとの
ドアを閉める音
バタンと閉じてしまうのは
追い出されたようで
心細く
きっと寂しい思いがするだろうから
私は細心の注意を払い
音を立てないように
そおっと閉める

たとえばそんな愛のルールを
人知れず守り続ける
どんな時も
私の、愛の自尊心のため

あるいは私が感じる愛

私が泣いたのは
映画の悲しい

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上等

上等

彼女はもう
忘れてしまったかもしれないけれど
地下道の階段を上がったところで
こんな話をした。

「4万円のコートを着て、
400円の下着をつけた女より、
4万円の下着をつけて、
400円のコートを着られる女になろうよ。」

あれから10年以上経つ。

今でも私は
何か目の前にあるものの
表層の
その下にあるものを
見ようとする。
翻り、
いますぐに
コートを脱ぎ捨てることができるか。
時々、自分

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