7月8日【2】

陣痛促進剤の効果か、痛みも間隔も良い感じになってきてはいるものの、なかなか子宮口が開ききらない状況。上手くいけば今日中に産めるかも!なんて淡い期待は本当に淡いまま消えゆき、ここ数日おなじみになってしまったひたすら痛みに耐える夜を過ごすわけです。助産師さんに持ってきてもらったバランスボールを試してみたり、四つん這いになってみたり、少しでも痛みを和らげる方法を試してみるけれど、結局横になって耐えるのが私には一番合うみたい。痛みに耐え、助産師さんに子宮口チェックしてもらったり赤ちゃんの心拍を確認してもらったり、の反復でした。しかし、例によって痛みは前日とは比べものにならず、私の疲労もピーク。しばらくお風呂に入れていなかった私の身体を、助産師さんがタオルで拭いてくれたり、マッサージしてくれたりしました。身体を拭いてもらうだけで気分もすっきり。もうちょっと頑張ろうと気合いを入れ直せるから不思議です。

肩やら腰やらのマッサージのついでにおなかの赤ちゃんを触診してもらうと、助産師さんの口からショッキングな一言が。「3200くらいはゆっくりありそうよ」と。なんですって?最後の健診では2800と言われていたんですよ?あれからそんなに日は経っていないし、多少増えたとしても3000くらいじゃない?と衝撃が走る。「いや、でもこのおしりの感じからすると2800なんてことはない」と言われてしまう。触診、恐るべし。もしかして、それでスムーズじゃないのですか?と問うと、「そうかもねー」と。私の身体に対して赤子が大きすぎる・・・。生クリームいっぱい食べたのがいけなかったのでしょうか?と再び問うと、「それはあるかもねー」と。がーーーん。あの頃の自分を羽交い締めにして、生クリームを食べるのを断固阻止してやりたい。が、それも後の祭り。今更何を言ったってもう遅い。とりあえず今を頑張るしかないんだ。むしろ、それしか選択肢はない。

深夜12時を回ってしばらくすると、いきみたい感覚が。出産に関して、「いきむ」という単語をよく聞いていたのですが、正直いまいちよくわからずにいました。が、いざそのときが来ると、これがいきみたい感覚か!とわかるもの。たとえるのなら、すんごいおなか痛い下痢がやってきた感覚。しかも、すぐにトイレに行けないというありがたくないオマケつき。戦慄が走りますね。いきみたいけどいきんじゃだめと言われる、とりつく島もない、行き場のないこの気持ち。トイレに駆け込みたいのに、目の前にトイレはあるのに、行っちゃだめと言われるようなものです。どうすりゃいいのかまったくわからない。そこで登場するのがテニスボール!!!噂には聞いていましたが、これまたなんのこっちゃわからんアイテムだなぁと思っていました。ごめんなさい、テニスボールさま。これ、本当にすごいんです。今すぐにトイレに行きたい!!という感覚が、テニスボールを肛門ちょっと上に押し当てることでふっと和らぐ不思議。そこからは、陣痛の波が来る度にテニスボールのお世話になりました。波が来ると「来た!」と寝ている夫を起こして手を握り、もう片方の手でテニスボールを押し当ててもらう、の繰り返し。

もっと強く!とか、もっと上!と夫に言いながら痛みに耐えるのですが、なんせ夜中。しかも、陣痛が来てからもう三日。痛みの波のせいで私は強制的に目が覚めるけれど、夫は違う。私が起こさなければ寝ていられるわけです。それなのに、私に付き合って起きてくれて、テニスボール押してくれて、もう感謝しかない。心の底から感謝しかない。のですが!!うとうと、かくかくして、テニスボールを押す力が弱くなる夫を見てふと思ってしまったこと・・・。

「あなた、もしかして、射精しただけですか??」

もちろん、彼は本当によくやってくれていたのです。こんなによくやってくれる男性を、私は他に知らない。この人と結婚してよかったと、妊娠以降、最低でも一日一回は思っていたし、感謝という言葉では足りないほどの気持ちを抱いていました。それは大前提としてありつつ!私がつわりに苦しみ、妊娠糖尿病疑惑をかけられ、トキソプラズマやリステリア菌、風疹やインフルエンザに怯え、腰痛やむくみ、トランスフォーマーと言えるほどの様々な身体的変化を経、今現在、こんな痛みに耐えているというのに!!あなたは、この妊娠出産に関して、射精しただけですか??と。不公平過ぎやしませんか?妊娠中、仕事もあるのに家事をしてもらったことを大変申し訳なく思い、負い目に感じていたけれど、そんな必要まったくなかったかも、いや、まったくない。この痛みを味わわないのなら、それくらいやってくれて全然いいと思う。だって、射精しただけなんだから。男の人は、働くのが大変だというけれど、そんなの私、いくらでも替わるから。私、毎日夜中まで働くから。そっちの方がマシ。だから、この痛いの、今すぐ替わって!!!!!!と、疲労もピークを迎え、テニスボールを握る手にも力が入らず眠ってしまっている夫を見ながら思ったのでした。

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