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不安から安心へ変える笑いのチカラ


「え!? どうして鍵が入らないの? どういうこと?」


狐につままれた気分だった。


自分の家のドアの前で、鍵が入らずに、一瞬パニックになった。
何が起こっているのか、わけがわからない状態になってしまったのだ。


ふう~、ため息を思わずついた、そして周りを見渡した。

あれ? もしかして……、間違えた?
いつもの景色と微妙に違う。

私が住んでいるのは3階、そこは2階だった。
他人の家のドアを勝手に開けようとして、失敗した瞬間だったのだ。


昨年2020年の4月。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、東京に史上初の緊急事態宣言が発令された日のことだった。

近所のスーパーへ買い物に行った。行列の長さに驚いた。いつもだったら行列に並ぶのを嫌い、買わずに帰るのに、その日は買い物かごいっぱいに入れて、列に並んだ。

世界中の不安が見えない圧として、私に降りかかってきたように感じてしまったのだ。
平常心を失っていた。無意識に影響を受けて、浮足立っていたのだ。

普段だったらしないこと……。

その出来事が、不安に巻き込まれて、正常な精神状態を失っていたのを物語っていた。

わけもわからず、灰色の重い不安と怖れでいっぱいになっていた。

外を歩いていても、ふわふわ~と雲の上でも歩いているような、地に足が着いていない、落ち着かない感じだったのだ。

やられた……、不安と怖れにやられた。
驚いたことに完全に不安に巻き込まれていた。

なんてこと……。

そう思った瞬間、我に返り、「はっ!」 とした。

「不安に感じていることは、勝手に想像しているだけで、実際には、起きていないよね?」

「想像しただけのことじゃない!?」

それが信じられない位のスピードで、ダイレクトに全身に伝わり、緊張とストレスで瞬時に身体は硬くなり、行動にまで影響を与えたのだ。

想像しただけで、パニックに近い状態になったのだ。
人間の持つ、想像力の凄さに驚いた。

そう、不安の正体など実態がなく、頭の中で勝手に繰り広げられている、思考のホラー・ショーなのだ。

不安に焦点を当てて、想像しただけで、簡単にパニックに近い状態になった。


その時、閃いた!
想像する力を、不安とは別の方向へ、逆の方向へ向ければいいのだ。

そうだ!? 「笑おう!?」と思った。

笑いと喜びを生み出すことに焦点を当て、想像力を使えばいいのだ! 

不安に巻き込まれて、オフだったスイッチが、オンになり、不安から抜けられた瞬間だった。

自分が出来ることを、こんな時だからこそ、やればいいんだ! と気づいたのだ。


私は、笑いヨガという健康エクササイズを、長年やってきた。

この笑いヨガは、まさに想像力を豊かに使いながら、子どもの遊び心を取り戻し、笑うことで緊張した心と体をゆるめて、ストレスを解消する。ヨガの難しいポーズなどを取らないので、誰でもすぐに簡単に出来る。それでいて、様々な効果が期待できる優れものなのだ。


当然、直接対面では出来ないステイホームな状況。
やったことはなかったが、オンラインでやってみた。コロナ禍の真っただ中に始めたのだ。

笑いというと、テレビのお笑い番組を観たり、誰かの冗談に笑ったり、楽しいことや嬉しいことがあった時に笑うのが、一般的な笑いに対する考えだろう。

何の理由もなく笑ったら、頭がおかしい人? ……と怪しまれるのでは? と疑問が湧くかもしれない。

しかし、笑いヨガは、冗談、ユーモア、コメディ等に頼らずに笑う。笑いのエクササイズと呼吸法を組み合わせた、健康体操として行う、とてもユニークなものなのだ。


笑いは免疫力を上げる。
笑うと、外から侵入してくる病原菌やがん細胞もやっつけてくれる、ナチュラルキラー細胞が一斉に立ち上がり、活動を始めて、元気に働いてくれるのだ。

ストレス解消にもなる。笑った後は、スッキリ! 心も体も軽くなる。
脳から幸せホルモンが分泌されて、癒され穏やかな気持ちにもなれる。

それも即効性がある。笑い始めて、気分の変化を実感できるのだ。悩んでいたことも、まっいいか~となることも多い。

たかが笑い、されど笑い……笑いのチカラなのだ。


人間の身体は、本物の笑いも、作り笑いの笑いも区別がつかない。どちらも笑いの効果を得られることが、科学的にも証明されている。

例え、最初は意図的に作り笑いで笑ったとしても、笑いは伝染するので、他の人と一緒に笑っているうちに、いつの間にか、本物の笑いへと変化してくるのだ。

人間は、身体を動かして笑うことで意外と簡単に、どんより、モヤモヤした気分を、笑い飛ばすかのようにリセット出来たり、グルグルと同じことを繰り返し考えるといった、しつこい思考からも解放されて、機嫌良くなれるものなのだ。


コロナ禍、不安と怖れが強く渦巻いている時。とても笑いたい状況ではない、笑う気分ではない時に、あえて実践してみた。

私自身、日々笑うことで、不安に巻き込まれることがなくなった。不安を感じたとしても、ずっとその中にいることはなくなった。

リモートで自宅勤務になった人、フルタイムで働く子育て中のイライラ絶頂のママや、突然の変化と、未知のウィルスに不安になっていた人達。それぞれが、一緒に笑うことで、穏やかな気持ちを取り戻して、笑顔になっていった。


起きていることは同じでも、捉え方が変わってきたのだ。

不安から安心へ
変わっていったのだ。

コロナ禍の前から、朝仕事へ行くのが憂鬱だったという人も、毎日笑っているうちに、リモートワークからリアル通勤へ戻った時に、憂鬱な気分がなくなっていたことに気づき驚いていた。


不安から安心へ変える笑いのチカラ


最後に、フランスの哲学者アランの言葉を紹介する。

「幸福だから笑うのではない、笑うから幸福なのだ」


あなたの毎日が、穏やかな笑いと笑顔で包まれますように。




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