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#石川啄木

東北三詩人試論

東北三詩人試論

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宮沢賢治、高村光太郎、石川啄木の三文士を東北三詩人と呼ぶことにする。三人ともに東北に縁があるからだ。以下はこれら三詩人の詩歌作品に対する断片的試論だ。矛盾もあろう、曖昧さもあろう、飛躍もあろう、行きつ戻りつもあろうが、それらをスパイスとして楽しんでいただければ幸いだ。

1.ヴ・ナロード
広義では、賢治も光太郎も啄木もヴ・ナロードの徒だった。狭義では、ヴ・ナロードとは、19世紀後半のロシアの

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文芸批評断章44. 「少女病」から「蒲団」へ ―田山花袋小論

文芸批評断章44. 「少女病」から「蒲団」へ ―田山花袋小論

「少女病」(1907)から「蒲団」(1907)へ。ここには作者田山花袋のロマンチシズムからリアリズムへの脱皮が見られ、作家としての成長も見受けられ、同時に恋愛のいわば進化も見られる。ここでは、そういったことについてちょっとばかり筆を滑らせてみよう。

田山花袋は、自らが中年となって(といっても三十代半ばであるが)生活上も文学者としても活力が干からびてくると、若い女との恋愛を願望し、それが同年に発表

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文芸批評断章18

文芸批評断章18

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啄木の『食うべき詩』を読むと、こんなことが書いてある(以下、引用は青空文庫『弓町より』からである)。

若い頃の啄木は「朝から晩まで何とも知れぬ物にあこがれてゐる心持」を抱いており、それは「唯詩を作るといふ事によつて幾分発表の路を得てゐた」という。この憧れは常により高きを求めるロマン主義精神の発露であり、それは何らかの意味で理想主義でもあるが、それを現実のより善き状態への改善に結実せずに詩

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