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【小説】浮世を巡って

お前に世界は変えられない。


世界を変えるとは。理想の世界とは。

ネイチャーであること。自由に帰還せよ。

我々の乗り込んだ宇宙船は、誕生を以てしていつか訪れる死を待つだけのものである。そしてその終わりを認知することはできない。

自由の戦士になりたいのなら、今隣りにいる人を大切にしなさい。


人間は長く生き過ぎた。

ありすぎる寿命に我々の焦燥感は薄れ、生きたいとも死にたいとも思えなくなってしまっていた。

惰性で、自ら死を選ぼうとしない程度のことである。問題はない。

健康でないのにだらだら生きる意味とは。そう思うと、安楽死も悪くない。


自由という名の幻想に囚われるな。

お前の言う自由とは、怠惰であれることか?それとも絶え間無く活動し続けられることか?

きっとそれらは自由とは対極の何かでありつつ、同時に自由なのだ。

本当の自由とは、お前がどうしたいのか明らかにし、それを理想通りだったりそうで無かったりしつつ、トータルで幸福感を味わえるようなものでは無いだろうか。

いや、これすらも適切では無いな。

つまり、真に自由は存在し得ない。

お前もそう思えて来ないか?


記憶とは何だろうな。

我々の見る夢は、燃える感情だけ残って具体的な現象についてはほとんど記憶し得ない。

そこで、夢での学びが全く後の人生に残らないかと言えばそうでもないだろう。

現実も、言えば同じようなものだろう。記憶の浅いところには何も無いと感じる時だってある。


喜び、悲しみ、そして怒り。それらの繋がりは決してバラバラに乱立するものではなく、芯の通ったひとつの塊である。

それらが、別の感情として各々表層に出てきた時、君は改めて驚くことができる。


昨日に我々は存在したのだろうか。

今日と、そして明日をまた生きることは出来るのだろうか。

不安になると、寝つきが悪くなるからもう考えないことにした。

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