線のたび(9)
宙の子は、懐かしく心地良さに
身を委ねたまま、眠りに落ちた。
しばらくして、深いところから
鳴り昇ってくる音に目を覚ました。
おぉ…ぅん…、おぉ…ぅん…おぉ…ぅん
体の奥底、深い深いところから湧き出てきて、
天に向かってゆっくりと上へ上へと響ながら
キ〜ンという軽やかで果てしなく広がる音。
「何処から聴こえてくるんだろう?」
宙の子は、自分の体がくるくると
渦を巻きながら、ゆっくりと上へ上へと
引き伸ばされているような、少し不思議な感覚を捉えた。
「ようやく此処に辿り着いたのに、
引き戻されているみたいだなぁ。」
はるばる目指してやってきた、
碧色に包まれたこの場所に、
まだ暫く留まりたい思いを感じながら、
宙の子は、引き上げられる何か不思議な力に身を任せていた。
呼び戻しているのは何物でもない、
宙の子自身の
内なる声だと、
まだ気がつかないまま。
とどまりたい力と、動きたい力。
引き合う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?