見出し画像

深夜1時、誘導棒を持った僕は

暇すぎてつらいってなんて贅沢な悩みなんだろう。でも、どうしたって暇すぎるのはつらいのだ。

何度目かになってきた単発バイト。今回は飲食店の駐車場誘導員をした。時間は深夜。近所で交通費がかからないから応募した。

お店に着くと、従業員の休憩室のようなところでメニューを注文する。なんとこの単発バイト、まかないもついてくるのだ!

注文したアツアツをありがたくいただき、お店の人から駐車場誘導員の説明をうける。

「満車」と書かれた大きな紙を持って、満車になったら掲げること。お店の前で並ぶ列が歩道にはみ出ていたら声をかけて整えること。仕事はこのくらいだ。

募集に応募した時点からなんとなく察しはついていた。たぶんめちゃくちゃ暇だって。

深夜帯だからお客さんが殺到するとも思えないし、戦うとしたら真冬の寒さとなかなか進まない時間だろうと。実際、その予想は大当たりする。

ひ、暇すぎる……!! 人気店のようでずっとお客さんの列がたえなかったけど、歩道にはみ出ることは少ない。一回だけ声をかけたけど、それ以降は耐久レースだった。

ちょっと駐車場をぶらぶらしてみたり、自販機の陰でちらっとスマホを見たり。手がかじかんでくる。暇すぎてつらい。

「待ってる間に名前書くやつないの?」とかたまにお客さんに聞かれるけど、正直単発バイトの僕がお店について知っているわけがない。「ないみたいですねぇ~……」としか言えなかった。

人間観察して暇をつぶそうにも、通りかかる人間は少ないしお客さんを観察していてもおもしろくない。たまにお客さんの吸うタバコの匂いがした。

はぁ、寒いな……。僕は暑がり体質だけど、何時間も寒さにさらされるのはさすがにきついらしい。汗をかかなければいいってわけでもないのだ。

お店が店内の明かりで一際光っている。夜空に星はあまり見えない。田舎のくせにと思った。

「今並んだらまだ食べられますか?」車の中からお客さんに聞かれる。ごめんなさい、それも僕には分からないんです。「たぶんそうだと思うんですけどね~……」とあいまいに濁す。

閉店までもうちょっと。スマホを取り出して時計の秒針を追う。3.2.1……終わった! やっと帰れるよ!!

お店の人に挨拶して、自転車に飛び乗って帰路につく。体は芯から凍えていた。

まかないは美味しかったけど、もう駐車場誘導員はやらないだろうなァ……。

単発バイトは、ほどほどに忙しい募集がオススメです。

この記事が参加している募集

この経験に学べ

仕事について話そう

よろしければ、サポートお願いします!いただいたサポートはライティングの書籍代に使わせていただきます🙏