人魚は刺身になるしかないのか
私には嫌いな人魚がいる。私の家がある浜辺に住み着いているその人魚は、泳ぎが下手だから遠目からでもすぐにそいつだと分かる。夕暮れ時に波打ち際で散歩をしている私にとってあまりにも耐え難いのが、その耳障りで舌足らずな歌声だった。
人魚はぎこちなく海辺の岩にあがり、猫背で岩肌に腰掛ける。夕日に浮かぶその姿だけでも滑稽なのに、そいつはやたらと大きな声で品の悪い歌を歌い始めるのだ。嫌でも耳に入ってくるその歌は、私を惨めで恥ずかしい気持ちにさせる。
幼いようでいて破廉恥な、自分の露悪