『私とは何か 「個人」から「分人」へ』を読んで 〜分人化苦手人間の私〜


今回読んだのはこちら ↓

平野 啓一郎 著

https://www.yodobashi.com/product/100000086600872359/

この本は、筆者が考えた「分人主義」というものを解説する本である。

「分人主義」とは、「個人主義」で挙げられる「個人」、語源的には「それ以上分けられない」を意味する「個人」を、さらに分けられるものとして捉え、その分けたものを「分人」と考えることで世の中のいろいろなことを分かりやすくしようというものである。

これによりいろいろな物事がすっきりと分かるようになり、面白く感じた。

以下には、この考えをもとに自分がすっきりしたと思う具体例を挙げていこうと思う。

1、4の内容が特に個人的な悩みにすっと入ってきて興味深かったです。

1、私の悩み

私は人付き合いが苦手だ。
それをこの本の「分人」という考え方をもとに見つめてみるとすっきりした気持ちになった。

筆者は、現代の分人化の例として、SNSのアカウント分けを挙げていた。
そこで自分のSNS運用の仕方から考えてみた。

私は、Twitterのアカウント分けをせず、日常のことから学校のことから趣味(それもジャンルは多岐に渡る)まで全てひとつのアカウントから流す。

そのことからややトラブルになっていることはある。

例えば自分の趣味の中でもかなりマニアックな話をつぶやいたとする。
それはその界隈の人向けだったり、ただの自己満足だったりする。

しかし、アカウントを分けていないものだから、趣味を共有していない同期から「ヲタクキモい」だの「スベってる」だのリプライが来ることがある。

あなた向けじゃないんだがな、、、と思い、イラッとくることもある。

しかし、この本の「分人化」という考え方を得てからは少し見方が変わった。

私がきちんと分人化しないからトラブルになるのである。

そしてさらに思い返すと、Twitterの世界だけでなく、現実世界でも上手く分人化していないためにトラブルを起こしていることに気付いたのである。(!!!!!)
つまり、相手によらず、自分の全ジャンルの話を同じように流してしまう。

となると私は、分人化苦手人間なのかもしれない。

2、筆者の語学学校での体験に共感したこと

「快活なキャラ」「陰気なキャラ」を、場面によって演じ分けているのか。

私もこれは悩む。
私は基本的には人見知りだ。
喋りたくないというよりかは、声が出なくなる。
身体が自然とそうなる。

一方、話の合う人とはよく喋る。
ただ、そこに人見知りしてしまう相手がやってくるとややこしい気持ちになる。

例えば近所のお祭りに行くとする。

当然仲の良い人といるので饒舌モードである。
その状況で、学校の一軍キャラにあうと、自分は陰キャモードに切り替わってしまう。
のみならず、学校の一軍に饒舌モードを見られることは恥ずかしい。


この、何となく共感できるが、しかし如何とも説明しがたい感情も、分人という考え方を導入するとスッキリする。

人は相手によって違う分人を生きている。

そして、ある相手に、その人以外に向けるべき分人を見られると恥ずかしくなる。

分人主義をもとにするとこう解釈できる。

スッキリした。


3、講演会の話

筆者が講演会に登壇した際の話。
予定ではもっと難しいことを話す予定だったが、客層を見て話のレベルを落とした。
そして結果的に現場ではウケた。

しかしその内容を記事化したものを見た人から
「この程度の話しかできないのか」
と誤解され意見されてしまったという話があった。

私は、芸能ニュースでテレビやラジオの発言書き起こしを見ているときにその違和感はよく抱く。

ある芸人さんの発言を上げ、「寒いギャグを放った」みたいな結びをされていることがある。

しかしその番組をきちんと見ていた者からすると、あえてレベルの低いギャグを言う方が面白いみたいな流れになっていることを知っていて、その「寒いギャグ」が正解で面白かったことは分かる。

だから「寒いギャグ」だけを切り取られ、あたかもスベったかのように記述されるのには非常に違和感がある。

また、番組を見ていなかった人が大いに誤解すると思う。

そしてまた、この本にあるように、「本当の自分」というものを信じている人からすると「寒いギャグを放つのがその芸人さんの本当の姿」のようになってしまい非常にややこしくなってくる。

4、「普通の人」モードの分人の話


初対面の人とは、まず当たり障りのない「普通の人」モードの分人で接するという話。

私は初対面の人との距離感の調整が苦手である。

それが、自分の「普通の人」モードの分人が弱い、というかそれを持っていない、と考えれば、なんとなく納得が行った。

また、「分人化ペースの人による違い」の話もあった。

分人主義によると、「普通の人」モードの分人から「その人専用」の分人ができていくことが「仲良くなること」だという。

私は、しっかりした「普通の人」モードを持っておらず、いきなり自分全開になってしまう。

私が人との距離の詰め方を間違えがちな理由はここにあるのかな、と思った。


5、新型鬱の話

職場で元気が出ず休職しているが、家だと、あるいは友達とだと元気になるという人。
これを仮病だとか言う人もいるが、この本の「分人」の視点からの考察は面白かった。

ところで、下のようなツイートを見かけた。

「そもそも人間は自分を好きになるのは無理」というのは

自分の中の好きな分人を増やしていくのが大事という話が出ていた。

この精神科医さんのお考えだろうが、後半の部分は分人の考え方とオーバーラップするところがあって面白く感じた。

自分の全てを好きになって幸せになる、というと大事で何だが難しく考えられる。

しかし、自分の持つあらゆる分人のうち、自分が楽しく過ごせるモードを増やし、その比率を挙げていく、と考えると、何だか気が楽で、できそうな気がしてくる。



6、森鴎外は仕事を「為事」と書く話。

印象に残りました。


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以上です。

面白いので、みなさんもどうぞ。

ちなみにこの本を読もうと思ったきっかけの本はこちら。

https://www.yodobashi.com/product/100000009002792098/

名作ですので、こちらもぜひ。

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