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思い出

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これは、いつかの思い出の記録。
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西日の彼

西日の彼

窓からさすその光は
わたしの心の一番遠いところまでとどく暖かいオレンジ

夕やけこやけのメロディは
懐かしくて切なくて

彼は西日のような人だった。
#冒頭3行選手権

木曜日の夜8時に

木曜日の夜8時に

「じゃあ、予告!木曜日の夜8時ね!」

そう言って彼は、走っていった。

わたしはリビングの真ん中にある
家電の前で待ち構える。
#冒頭3行選手権

市役所ののぐちさんへ ~きんかんの香る町~

市役所ののぐちさんへ ~きんかんの香る町~

のぐちさん、お久しぶりです。

お元気ですか。

わたしとのぐちさんが初めて出会ったのは

とある年の11月。

市役所へつづく歩道脇の果物畑から、

あまい香りの立ち込める頃。

けどうつむいていてわたしは、それが何の実の香りだったかなんて、分かりませんでした。

顔をあげたわたしは、泣き腫らした目をしていましたか?

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それは数年前の11月。

わたしは、あ

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上履きの中の恋

上履きの中の恋

彼は、結婚したようだった。

そこそこ田舎の公立中学。
勉強はできるけど、それだけの真面目ちゃん。
それがわたし。

クラスメイトとは、普通に話せる。
だけど、これが好きとか、あれがキライとか、道でこけたとか、アイスが美味しいとか、
そんな、日々の何気ないことを話すような、いわゆる''いつもの''友達がいない子だった。

中学1年生の夏、私は学級委員をしていた。
どこの学校にもあるかもしれないけど

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