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フランスの病院で退院時に処方された薬(産後)

こんなマニアックな話、需要があるのか分かりませんが(笑)、退院時に助産師さんから渡された薬の処方箋の内容がだいぶバラエティに富んでいたので、ここに記したいと思います。

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私が日本で病院薬剤師をやっていた時、産科の退院時処方と言えば…
痛み止め(ロキソプロフェン)、鉄剤(フェログラデュメットorフェロミア)、下剤(酸化マグネシウム)、たまに痔の薬…くらいのバリエーションでした。
ベビー用の薬は基本なし。

では、フランスの処方箋の内容を見ていきましょう!日本との違いも簡単に解説していきます。


ベビー用

○ビタミンD

1日2滴、食事と時間を空けて、出来れば午前中に投与。
※処方箋は生後6ヶ月までリニューアル可能(薬を使い切ったら、再度同じ処方箋で薬がもらえる)

人間の体は骨や歯を作るときに日光とビタミンDが必要である。
日本では乳幼児用のビタミンD補充用の医薬品(保険でカバーされるもの)は存在せず、サプリメントとして薬局やオンラインショップで購入が可能だそうだ。
調べたところ、日本でも完全母乳育児と日光浴の機会減少による乳幼児のビタミンD不足が問題視され始めている様子。
その点、ビタミンD内服を積極的に推奨している欧米の方が対策が進んでいると言える。

○ビタミンK1

生後1週間と1ヶ月の2回のみ投与

これは新生児のビタミンK1欠乏症予防のため、日本でも必ず投与される。
ビタミンK1はガラスのアンプルに入っており、自分で割って注射器で吸い取って、飲ませるタイプの薬。
日本では入院中と1ヶ月検診で助産師さんが投薬してくれるが、フランスでは退院後に母親が2回投薬する。
(追記:現在では日本でも13回法が採用され、生後3ヶ月まで自宅でも投与するらしい。ただし、日本のケイツーシロップは袋を破るだけの患者に優しい包装。笑)

実はアンプルの蓋を割る時に上手く切れないとガラスの破片が薬液中に混入する可能性と誤って指を切ってしまう可能性を秘めている。
私が大学時代に学んだことは、指を切らないようにガーゼなどで覆って勢いよく水平に割ること、薬液を注射器で吸った後にガラスの破片が混入していないかを目視で確認すること。

この手技、慣れていない素人にも普通にやらせるんだぁ…と思ってしまった。

左がビタミンD、右の箱二つがビタミンK1

母親用

○パラセタモール(アセトアミノフェン、カロナールと同成分の解熱鎮痛剤)

1000mgを1日4回まで、6時間以上空けて 
※必要であればリニューアル可能

パラセタモールの上限量である。産後2週間目までは上限量、3週目から1日3回で内服した。

結構粒が大きくて飲みにくい。詰まらせないように毎度集中して飲んでいた。

○鉄剤

1ヶ月後から1日1回1錠で内服開始

入院中にVenoferという1ヶ月間効果が期待できる鉄剤を点滴したため、内服の鉄剤は1ヶ月後から開始という指示であった。
1ヶ月後の血液検査用の処方箋ももらったため、その結果によりいつまで継続するかをフリーの助産師さんが判断することになる。

○葉酸

1日1回1錠

入院中から葉酸を内服するよう渡されていた。妊娠中に内服していたサプリメント内にも葉酸はしっかり含まれていたが、産後も子宮修復を促す作用があるため内服が推奨されているらしい。約1ヶ月間継続して内服していた。

○経口避妊薬(いわゆるピル)

実は、これが最も驚いたポイントであった。
入院中、助産師さんから自然な会話の流れで
「ところで、二人目は考えている?いつ頃を予定している?」と聞かれた。
今は一人目を産んだばかりで余裕が無いので、2年後くらいに考えたいと伝えた。
「産後、月経が始まる前でも妊娠する可能性があることは知ってる?避妊はどうするか考えてる?」

欧米では経口避妊薬が保険でカバーされること、欧米の女性が経口避妊薬を内服している率が高いことを知っていたので、「ピルには興味がある」と伝えた。
しかしまさか退院時に処方されるとは思わなかった。(笑)

ちなみに日本では月経困難症や子宮筋腫などの治療に対して同じ薬が保険でカバーされるが、"避妊用としての処方" だと全額負担になる。
一つの考察として、日本は少子化が進みすぎて避妊薬の内服率が高まると困るため、保険でカバーされないのかもしれない。(違ったらごめんなさい)

人生初の経口避妊薬をゲットしたので、産後3ヶ月を過ぎた頃に内服を開始した。内服開始一週間後に不正出血し、それは約一週間続いた。不正出血は頻度の高い副作用である。

日本のサイトには産後6ヶ月間はピルを内服しない方が良いと書かれていた。産後は薬の副作用である血栓症のリスクが高まるからとのこと。
フランスでは寝たきりじゃなきゃ足に血栓なんてできないわよ、いつから飲んでも大丈夫よ、という感じ。(さすがに内服中の禁煙は推奨している)
二国間の違いが面白いと思った。

上から鉄剤、葉酸、経口避妊薬

○痔治療薬

痔は大したこと無いと言われていたが、少し痛みがあったので一応外用薬を希望した。(笑)
この薬は保険でカバーされないため100%自費だった。

○電動搾乳機

フランスでは助産師さんに処方箋を書いてもらえば、電動搾乳機を薬局で一定期間借りることができる。
保険で100%カバーされるため、10週間の貸し出しが無料であった。
ただし、指定の期日までに返却しなかったり、正しく部品が返却されない場合は罰金として600€程度支払う必要がある。薬局で借りる時に担保として銀行の小切手を提出させられた。ビビって期日よりも早めに返却した。(笑)

電動搾乳機はなかなか便利であった。産後3〜5週頃に私がひどく長引く風邪を引き、ステロイド薬を内服する必要があった時に母乳をストップする必要があった。
その間は粉ミルクのみ飲ませていたが、内服終了後に母乳を再開する予定であったため、乳汁分泌を継続させるために搾乳して捨てていた。
電動搾乳機は両側同時に搾乳が可能なのでかなり時短になる。ただし、搾乳しているときの姿と気分はまるで牛🐄であり、人には見られたくない。(笑)

このどでかくて思いバッグの中に器具が入っていた。
これは個人用にもらえる返却不要の部品。これがあればいざという時に手動での搾乳は可能。

○血液検査用の処方箋

妊娠中は月一で検査機関に通っていた。
詳しくはこちらの記事をどうぞ↓

この処方箋で最後の血液検査となる。産後1ヶ月後に貧血の評価とトキソプラズマ感染が無いかを確認する。
貧血は改善しており、便秘気味だったため鉄剤の内服は早めに終了した。(鉄剤の副作用で便秘になりやすくなる)
産後にトキソプラズマ感染を確認する理由はよく分からなかった。妊娠中は胎児にとってのリスクとなるので月一で検査するのは納得だが…。
何はともあれ、猫飼いの妊婦にとってトキソプラズマ感染は少し不安要素であったため、最後まで何もなくて良かった。

妊娠中はこの方のトイレ掃除をパートナーのみが行っていたが、産後は私も無事に再開(笑)

いかがでしたでしょうか?
かなりマニアックな内容だったかもしれませんが、フランスと日本の産後ケアの方針の違いが面白いなと思いレポートしました。

どなたかの参考になると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました😊

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