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フランスの産後入院体験記

こんにちは。
以前無痛分娩体験記をアップしてから早2ヶ月が経ち、息子も5ヶ月になりました。

産後フランスの病院でどのように過ごしていたか、個人的な体験談をレポートします。

日本での出産体験はありませんが、元職場の病院の産科病棟で見聞きしたことや友人の体験談と比べるとだいぶ違うところがありました。
「へぇ〜フランスってそうなんだ」と思いながら読んでいただければと思います。


○入院日数について

日本では出産後の入院期間が経膣分娩で4〜6日間、帝王切開で6〜8日間であるのに対し、海外では経膣だと1〜3日間、帝王切開でも3〜4日間が一般的だそうだ。

私がお世話になったフランスの病院も正常分娩の場合通常3日間と言われていたが、私の場合は色々あり…6日間入院していた。
3日間で帰るものだと思っていたので、いつ帰れるんだろう?と不安になること、早く猫に会いたい…と思うこともあったが、私もベビーも入院中はきちんとモニタリングしてもらえたので安心して帰宅することができた。

○ベビーのお世話は全部自分達で

無痛分娩体験記を読んでいただいた方はご存知だと思うが、私は経膣分娩後に大量出血したため、全身麻酔にて子宮内の血栓除去術を受けた。
全身麻酔をした後は転倒の恐れがあるため次の日の朝まで1人で歩くことができない。その上麻酔薬が母乳に移行する可能性があるため授乳もできない。
しかし基本的に助産師さんにはベビーを預かってもらえないため、自分達でお世話をするしかない。

うちには寂しがり屋の猫がいるため(笑)、パートナーには少なくとも夜間は自宅にいてもらおうと思っていたが、それは不可能となった。
パートナーが隣町Toulouseに住む義弟に連絡をし、猫のために数日間来てもらうことに。(笑) 特にその当時下痢をしていたので、朝晩の投薬という任務もあった。

・・・私のこと話してます?

パートナーは出産当日の夜から病院で寝泊まりし(簡易ベッドあり)、ベビーのお世話を担当してくれた。
初回のオムツ替えもミルクの飲ませ方も助産師さんから学び、その後は彼がほぼ1人でやっていた。
私は動けないためベッド上から見守るのみ。入院前に大量の荷物をパッキングしたのは私だったので、「あれはどこに入っている」「あと何枚あるはず…」と伝えることしかできなかった。
おかげで彼は最初から育メンを通り越して母親2のような頼もしい存在になっている。ありがたい…。

○私の貧血治療

産後に大量出血したため、貧血であることは分かっていた。採血結果はヘモグロビン値が8.2。正常値が12〜16なのでかなり低いが、正直あれだけ血を流しても8をキープできているなんて、人間の体はある程度丈夫にできているんだなぁと感心した。

鉄剤の点滴は元病院薬剤師の私が知らない用量のものが用意された。どう見ても大容量パックである。
Venoferという薬は1日置きに二日間投与され、1ヶ月間効果が期待できるらしい。日本でその用量は未認可である。
出産したのが木曜日だったので、金曜日と日曜日に点滴します、という話であった。
その時点で3日間での退院は不可能であった。

鉄剤の点滴後は血管が腫れて痛みがあった(鉄剤点滴で起こりやすい副作用の一つ)が、その痛みは3日もすれば気にならなくなった。

○産後の疼痛モニタリング

産後すぐはとにかく全身が痛いと感じた。いきむ時に全身に力が入るため、身体中が筋肉痛であった。
それに加え、会陰裂傷(フランスは会陰切開は積極的にやらない。どうせ自然に切れるからという理由らしい。)した部分を縫合してもらっていたが、その縫い糸が針金のように固く感じられた。座るたびに会陰周辺に針を刺されるような激痛を感じていた。

フランスの病院では助産師さんからパラセタモール(日本のアセトアミノフェン、カロナールと同じ解熱鎮痛剤)を手渡された。一錠1000mgを1日4回まで6時間以上空けて飲んでいいとのこと。この薬にとっての上限量である。

少し脱線するが、フランスではパラセタモール信仰があると感じている。風邪を引いても、胃腸炎でも毎回パラセタモールが高用量で処方される。「痛みがある」「熱がある」と言わなくても必ず処方される。「もうこれ飲んで寝とけ」みたいな無理矢理感すら感じる。(笑)

日本でこの用量を処方されることは滅多にないが、強い痛みをとにかく抑えたかったため、産後2週間程度は毎日欠かさず上限量を内服していた。
それでも会陰裂傷の痛みが強い時はケトプロフェン(ロキソプロフェンと同系統の解熱鎮痛剤)を追加でもらった。
また後陣痛(産後に子宮が収縮する痛み)に対して、スパスフォンも内服していた。これは日本では未認可の薬であり、この薬とパラセタモールのおかげか子宮の痛みはほぼ感じなかった。

○ベビーの体重減少問題

ベビーは産まれて数日後に生理的体重減少といって、多少体重が減少するものらしい。
うちのベビーは2〜3日目には10%以上体重減少しており、問題視されていた。「体重がちゃんと増えるまで退院はできませんよ」と言われた。
しかし、私には理由は明白であった。

最初のうち母乳がほぼ出ていなかったのだが、粉ミルクを与えるとそれに慣れて母乳を吸わなくなるからという理由で "粉ミルクをできるだけ与えない" という方針を示されていた。
私は母乳で栄養が足りなければ粉ミルクで補うべきだと思っていたのだが、「母乳育児したいなら、これは通るべき道」という感じで、助産師さん達は粉ミルクを易々と与えてはくれなかった。(笑)

○まるで授乳ブートキャンプ

上記で述べたように、入院中はまるで「授乳道場」もとい「授乳ブートキャンプ」のような体育会系の部活にベビーと共に入部させられたような体験であった。
出産後、すぐに母乳分泌し充分な量を授乳できる人もいるらしい。私の場合は産後に全身麻酔を使用したこともあり、母乳分泌が遅れた。
最初のミッションは「とにかくベビーに乳首を吸わせて母乳分泌を促せ!」というものであった。
産後翌日のday1から授乳を始め、day2まではほぼ乳汁分泌が無かった。それでもベビーは必死で吸い付き、空腹が満たされず泣く…を繰り返し、可哀想で見ているのが辛かった。
それと同時に、生まれつき赤子に備わっている"吸てつ反射"というのは凄いなぁ、人間も哺乳類だなぁと感心していた。

当然のことだが、最初はベビーも吸い方が下手であり、こちらも上手く吸わせてあげられず、乳首は赤く腫れ、触るだけでヒリヒリと痛かった。
出産前に助産師さんに購入を勧められたラノリンクリームを塗ることで傷を保護していた。ラノリンはベビーの口に入っても問題ない成分のため、毎授乳後に塗っていた。

事前に買っておいて良かった…。日本でも売っていれば産前に購入することをお勧めしたい。


授乳というのは思っていた以上に奥が深かった。ベビーをどこに位置させるかが非常に重要である。
助産師さんに教えてもらったのが、座って授乳する方法と横になる方法の2つであった。

会陰裂傷の痛みにより座って授乳するのは苦行であったため、主に横になって授乳する方法を選んだ。これはお互い体が楽だし、繰り返すごとに私もベビーもコツを掴めている感じがあった。

day3から母乳分泌が始まり、ようやく母乳で栄養を与えられるようになった。
毎日ベビーの体重測定をし、day3は母乳だけ、day4は体重がまた減ったためミルクで補充可、day5は母乳だけで様子見…day6にようやく退院の許可が下りた。
授乳ブートキャンプは過酷であったが、助産師さん達の愛の鞭であったと認識している。(笑)

○ベビーの黄疸疑い

もう一つの問題がこれ。day3頃から黄疸疑いを指摘された。
日本の病院では黄疸なら小児科医の判断でブルーライトを照射して治療するが、毎回「疑い」ということで治療には至らなかった。
ベビーの顔も黄色く見えたので、早くブルーライト照射してくれりゃいいのに…と思っていた。

これは後で理解したことだが、水分補給が足りていないとビリルビン濃度は高く検出され、黄疸疑いになりやすいらしい。
授乳の進み具合と合わせて評価されていたのだろう。

退院日に小児科医の診察があり、「直射日光でなくていいので、なるべく太陽に当てるように。」と言われた。
退院後、義母には「直射日光をガンガン当てなさい。」と言われた。
日本の産科医監修のサイトなんかを調べると、「新生児に直射日光を当てないように。」という記載をいくつか発見した。
こういうことが多々あるので、最優先はフランスの医師や助産師さんの意見、次に客観的にエビデンスがしっかりしていそうな日本のサイトを参考にしている。(義両親もちゃんと説明すれば理解してくれる。笑)

○退院当日

助産師さんから沢山の書類を受け取った。
退院後は同じ病院に通院することは無く、小児科のクリニック、またフリーの助産師さんのオフィスを受診することになる。
そのための簡単な申し送り事項が書かれた書類と出産時のレポートまた薬の処方箋を受け取った。すぐに使う薬もあるため、なるべく早く自分で薬局に取りに行く必要がある。

退院時処方の内容については薬剤師として語りたいことが多すぎて文章が長くなりそうなので、別の記事に書くことにする。

病室を出る瞬間は非常にあっさりしたものであった。
日本の病院では担当助産師さんが最後に忘れ物まで確認し、ナースステーション前ではその場にいる職員達…なんなら師長さんまで出てきて「退院おめでとうございます〜」「本当にお世話になりました〜」みたいなやり取りがある。(たぶん)

フランスでは「書類渡し終わったので勝手に帰っていいですよ」というナースコール越しの会話で終わってしまった。誰にもお礼を言えなかったが、まぁそういう文化ならそれでいいか。
病院の対応に関するアンケート用紙にはほとんどの項目を評価5/5で記載した。期待以上に満足度の高い滞在であった。

○まとめ

フランスでは妊娠出産に関する費用が国の保険でカバーされる。妊娠6ヶ月以降は本当に無料だった。
病室も1人部屋であり、追加料金を支払う領収書が後から来ると思ったが、来なかった。(希望して2人部屋から1人部屋に変更してもらった場合などは個室代を支払うらしい)
日本に比べると備品等の提供はほぼ無く、サービスは最低限だが、医療レベルは高かったため、安心して滞在することができた。
病院食も簡素ながら栄養に配慮された満足のいく内容であり、毎度の食事が楽しみだった。(それについても別の記事で語りたい)

救急・分娩室担当者と比べると病棟担当の助産師さんは英語が話せる方は少なかったが、フランス語低レベルの私にもキレずに優しく対応してくれたことに心から感謝したい。
例えば、役所の人や受付の人にはフランス語が上手く話せないと分かりやすくイライラされることがある。嫌な対応が一つも無かった助産師さん達に医療者としてのプロ意識を感じた。


いかがでしたでしょうか?
この文章が出産を控えている方やフランス生活に興味がある方の参考になると嬉しいです。

最後までお読みいただきありがとうございました😊

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