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強くなりますように

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こちらは小説「あまのじゃくな神様は」の第一話「強くなりますように」と、それを捕捉するエッセイ「新解釈・お天道様が見ているよ」とまとめてあります。合わせてお読みください。
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01強くなりますように(前編)| あまのじゃくな神様は|

01強くなりますように(前編)| あまのじゃくな神様は|

01「強くなりますように」(前編)

横浜の片隅に「願い事が叶わない」で有名な神社がある。合格祈願、商売繁盛、良縁を願っても全くといっていいほど思うようにならない。そんなことがまことしやかに囁かれる神社。

朱色に塗られた鳥居。木々に囲まれた短い参道の奥、手水舎の先に拝殿がある。天井にぶら下がった鈴には紅白の紐が結び付けられ、格子状の扉からは少しだけ中が見える。小さな拝殿の中は鏡が置かれていて、薄

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01強くなりますように(後編)| あまのじゃくな神様は|

01強くなりますように(後編)| あまのじゃくな神様は|

放課後の職員室にタケルはいた。
目の前には宮野先生が座っていて、その目線は立っているタケルよりも高い。袖をまくったワイシャツから伸びる腕は、タケルの腕の数倍、太かった。立っているタケルの背後を別の先生たちが何度か行き来した。タケルは手のひらをズボンにこすりつけ汗を拭き、じっと宮野先生の目を見ている。ときおり小さく顔が左右に揺れた。緊張したときにタケルはそうなることがある。

「窓、どうして割っちゃ

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新解釈・お天道様が見ているよ。

新解釈・お天道様が見ているよ。

「お天道様が見ているよ」
この言葉は多くの人が聞いたことがあるでしょう。悪いことをして、それをうまく誤魔化したとしても、ダメダメ。「お天道様はお見通しだよ」ということです。とりわけ人は誰も見ていない時に、どんな振る舞いができるか、がとても難しい。誰も見てないから…ついついと、悪いことをやってしまいそうな時、お天道様が見ているよ、という言葉が悪事のストッパーとなるかもしれません。

 
「お天道様は

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