シェア
松村惑々
2021年2月3日 13:40
朝日に照らされて目が覚めて鳥のさえずりを耳に空気を吸うまずコーヒーを入れて体を伸ばし胃を温めながらパンを齧るマグカップはフリマで買ったっけブサイクなキリンがこっち見てる朝はパンしか食べるものないなまた買い物に行かなきゃなあベランダで育てたきゅうりが浸かったピクルスの瓶好きなレコードが並んだ棚読みかけの小説に手をかけた遅れて起きた君が「おはよう」何にも欲しく
2021年1月18日 17:01
彼氏が関西弁を使い始めた。と言っても、彼の母語が関西弁になったわけじゃない。その語りの節々に、関西弁がアラザンのように散りばめられているのである。良かれと思って振りかけているそのアラザンの食感や味が気になって、お菓子全体の味が入ってこない。その粒、一つ一つが気になって仕方がない。彼は埼玉出身である。私は静岡。関西弁が移る要素などどこにもない。じゃあどこからそれが?別に浮気を
2020年12月24日 16:31
どうにもならないから作ってみただけだった。こっちの世界じゃ何も思い通りにいかないから、ほんの家の片隅に、自分に似た人形一人と、素敵な黄色の椅子と机と、それに人工芝を敷いてみた。これが存外自分を満たした。そこの自分は自由に過ごしていた。まるで別の世界線の自分を見ているようで、彼が陽気なら自分も少し陽気になれた。そんな不意の思いつきが、彼を生んだ。つまみに買ってきた生ハムのかけらを彼の
2020年12月9日 22:12
ティッシュを二箱開けてしまった。ティッシュがなかったので新しい箱を開けたら、元の箱が「ヨゥ」と顔を出したのだ。何かこう、贅沢をしているような気持ちになる。別に減るペースは変わらないし、いつかは使う物なのでなんの損得も生まれていないのに。そもそもティッシュ箱というやつは、我々の意識の外にでて、部屋中を動き回りすぎだ。所定の位置に置いているつもりが、気づいたら棚の上、机の上、テレ
2020年10月18日 02:29
網膜に朝日を感じて目が覚める。昨日の記憶はない。みんなで喋って飲んで、あれからどうしたっけ。思い出そうとすると、世界が白くなる。なのでやめた。思い出したところで、変わらない世界だ。マットレスから身を起こし、サボテンに霧吹く。「おはよう」と声をかけると、「いつも水をかけながら挨拶をするけど、タイミングを考えた方がいいよ」と、叱られた。水をやってるのはこっちなのに、当たり
2020年10月21日 20:40
デスクに牛乳をこぼした。MacBookProにMIDIキーボード、LaunchPadX、図書館で借りた本、筆箱、ラムネのビン、ペン立て、ハンギョドンのぬいぐるみ、ケーブル入れが散乱している。その机の上に、ネットミーティングに遅れそうで焦った男が、コップの牛乳を親指でひっかけて倒した。広がる白。染みる白。垂れる白。電子機器と最も相性の悪いのは液体。その中でもこぼすと