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絵空事

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書くことがなくなったときの、思いっきり嘘をついた成れの果てです。
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素敵な生活

素敵な生活

朝日に照らされて
目が覚めて
鳥のさえずりを耳に
空気を吸う

まずコーヒーを入れて
体を伸ばし
胃を温めながら
パンを齧る

マグカップはフリマで買ったっけ
ブサイクなキリンがこっち見てる
朝はパンしか食べるものないな
また買い物に行かなきゃなあ

ベランダで育てたきゅうり
が浸かったピクルスの瓶
好きなレコードが並んだ棚
読みかけの小説に手をかけた
遅れて起きた君が「おはよう」

何にも欲しく

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彼氏が関西弁を使い始めた

彼氏が関西弁を使い始めた

彼氏が関西弁を使い始めた。

と言っても、彼の母語が関西弁になったわけじゃない。
その語りの節々に、関西弁がアラザンのように散りばめられているのである。

良かれと思って振りかけているそのアラザンの食感や味が気になって、お菓子全体の味が入ってこない。
その粒、一つ一つが気になって仕方がない。

彼は埼玉出身である。
私は静岡。関西弁が移る要素などどこにもない。
じゃあどこからそれが?

別に浮気を

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木偶

木偶

どうにもならないから作ってみただけだった。

こっちの世界じゃ何も思い通りにいかないから、ほんの家の片隅に、自分に似た人形一人と、素敵な黄色の椅子と机と、それに人工芝を敷いてみた。

これが存外自分を満たした。そこの自分は自由に過ごしていた。
まるで別の世界線の自分を見ているようで、彼が陽気なら自分も少し陽気になれた。

そんな不意の思いつきが、彼を生んだ。
つまみに買ってきた生ハムのかけらを彼の

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旅するティッシュボックス

旅するティッシュボックス

ティッシュを二箱開けてしまった。

ティッシュがなかったので新しい箱を開けたら、元の箱が「ヨゥ」と顔を出したのだ。

何かこう、贅沢をしているような気持ちになる。
別に減るペースは変わらないし、いつかは使う物なのでなんの損得も生まれていないのに。

そもそもティッシュ箱というやつは、
我々の意識の外にでて、部屋中を動き回りすぎだ。

所定の位置に置いているつもりが、
気づいたら棚の上、机の上、テレ

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置き去り

置き去り

網膜に朝日を感じて目が覚める。
昨日の記憶はない。
みんなで喋って飲んで、
あれからどうしたっけ。

思い出そうとすると、世界が白くなる。
なのでやめた。思い出したところで、
変わらない世界だ。

マットレスから身を起こし、
サボテンに霧吹く。
「おはよう」と声をかけると、
「いつも水をかけながら挨拶をするけど、タイミングを考えた方がいいよ」と、叱られた。

水をやってるのはこっちなのに、
当たり

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ホワイトアウト

ホワイトアウト

デスクに牛乳をこぼした。

MacBookProにMIDIキーボード、
LaunchPadX、図書館で借りた本、
筆箱、ラムネのビン、ペン立て、
ハンギョドンのぬいぐるみ、
ケーブル入れが散乱している。

その机の上に、
ネットミーティングに遅れそうで焦った男が、
コップの牛乳を親指でひっかけて倒した。

広がる白。
染みる白。
垂れる白。

電子機器と最も相性の悪いのは液体。
その中でもこぼすと

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