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【雑詩】 「正義」という名の凶器

 生まれたときは 誰もが
 降りつもった新雪ゆきのような
 穢れなき心をもっていたはずなのに
 混沌とした世界は いま
 あらゆる悪徳が渦を巻く 犯罪の坩堝るつぼ
 誰もが 己の「正義」を振りかざし
 他人ひとを斬りつけながら生きている
 「生きる」とは 血みどろになること
 母の腕の優しさに包まれた
 穏やかな寝顔の君も
 その手を いつか
 誰かの血で染めるというのか

 正義 正義 正義……
 100人の人間ヒトがいれば
 そこには100通りの正義が混在する
 「正義」の名のもとに
 今日も何処かで
 誰かが誰かを傷つけ
 誰かに傷つけられている
 「正義」とは人間ヒトが手に入れた
 もっとも残虐で無差別的な凶器
 いっそ 「正義」など手にしない方が
 人間ヒト幸福しあわせだったのかも知れない 
 道をたがえたのは 何時いつの三叉路だというのか

 真実ほんとうの「正義」とは何か
 それは──
 太陽が東から昇り西に沈み
 水が高地から低地へと流れる
 そんな自然のことわりに違いない
 さあ 君も己の「正義」を捨て
 自然のことわりに従うのだ
 素顔ありのままの自分を取り戻し
 自然のひとつとなるのだ
 だから僕も 真実ほんとうの「正義」になろうと
 今日も藻掻き続ける この暗闇の世界で

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