ウイスキーの嗜み方

先日、役員へ直接提案する機会があった。

その回答は意外な回答であった。詳細は割愛するが、これまでのビジネスからの大きな路線変更は難しいとの判断と理解した。

率直な感想になるが、今の仕事の延長に未来を感じにくくなった。この仕事の先に未来を感じないものに対して、今後もモチベーションを維持できるのだろうかとも思った。いや、そもそもの原点に帰ってみると、モチベーションは湧いてくるべきものである。モチベーションを維持するような姿勢になっては本末転倒である。未来に価値が感じられず、先の見えない仕事に対して、自分の残りの人生を割くことは許されない。

その後、業者とのリモート会議をこなす。業者の立場は受け身一辺倒で、あまり議論が前に進まない。我々クライアント側に寄り添い、ニーズを捉えて提案して仕事を取ると言うのがあるべき仕事のやり方である。しかし、提案よりも、守りに入っていて、前向きな提案ができない。この人たちは、一体何のために仕事してるのだろうか?95%の自称コンサルタントと名乗る人々は、同じパターンをとることがわかってきた。長期的なビジネスをしたいと思うのならば、比較的初めから長期的なビジョンを見据え、腹を割って話をするべきではないのか?そこまでの価値をクライアント側にも見出されていないということが問題なのだろうか。

この1年間こんな人たちばかりを見てきた。言葉を選ばずに表現するならば二流である。まともな仕事をしようと言う姿勢のない人々がこの世には多すぎる。日本の生産性が低いと言われるのも納得である。もしかしたら日系大手企業には、致命的な構造的欠落があるのかもしれない。

夜は部署の忘年会であった。おじさん方が集まる。会場に対して理屈をこねてはあーだこーだと不満を言っていた。正直なところ、この飲み会に対して前向きになっていない。簡単に言うと管を巻くような飲み会は有意義な時間だとは思っていない。目先のことしか考えられない人が多すぎる。そんな人のエゴに、自分は与しない。なので、次からは参加しなくても良いと思っている。

典型的な一日であった。このままでいいのか。本当に自分はどうあるべきなのか。真剣に考えるべきタイミングに来ていると感じた。

結局、帰り際に途中下車した。たくさんのもやもやが心の中に生じてしまい、まっすぐ帰る気になれなかった。駅にほど近いバーに行こうと思った。浴びるほど酒を飲みたいとか言うわけではないが、じっくりとお酒を味わいながら思索する時間が欲しい。

駅にほど近いバーに入った。エレベーターを降りると、意外にもドアもなく直接店内に繋がってしまった。何の心の準備も猶予もなく、バー店内に入り込んでしまったことに、少なからぬためらいと戸惑いがあったが、まあ仕方ない。勇気を持ってそのままカウンターの端っこに着座した。

ウイスキーを飲みたいです。

そう伝えると、スコッチウイスキーのグレンリベット 18年が差し出された。結構な量が入っている。

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まずはストレートで香りを楽しんでください。

18年だと結構な値段になるのではないかと思ったが、今日は自分へのご褒美にしようと思った。グレンリベットは香りがマイルドであるもののストレートだとかなり芳醇な感じがする。ストレートは喉の裏に焼きつくような刺激がある。嫌いではないがあまり心地よい時間の過ごし方ではない。

バーテンダーに進みが悪いと悟られたのか、加水を勧められた。ウイスキーに加水する際は温度と量が大切である。まず、ウイスキーと同じ常温の水を使うこと、冷水は香りが逃げてしまう。また、スコッチの場合はウイスキーと同じ量の水を加えることが多く、”Twice up”と呼ばれる。しかし、バーテンダーはほんの1割程度の加水で勧めてきた。一体こんなほんの少しの水で何が変わるのだろうか。訝しいが、言われるがままに従う。

加水したウイスキーは、ストレートと比べると丸みがいい感じに取れていた。香りも程よく心地良くて、口に含めても刺さるような刺激がマスクされている。香りは幾分か薄まったともいえるが樽の香りはまろやかに心地よい。驚くような体験であった。

最後にアイスを加えた。ロックにすると飲みやすくなるものの、香りは消えてしまう。

飲めば飲むほどに量が増えるんですよ。

と言う、バーテンダーの表情はお茶目である。

今日飲んだウイスキーの銘柄と飲み方を少し頭に入れておくだけで、自分に合った飲み方が分かるようになる。今日のウイスキーの飲み方はとても楽しいが、バーテンダーにとっては手間がかかる。でも、こんな飲み方をするような店に来たのは初めてた。替えがたい経験をすることができた。自分に合うお酒の飲み方がまた一つ増えた。

冒頭の問いに立ち返る。

人は何のために仕事をするのか。

今日出会ったバーテンダーのように、相手のニーズを汲み取って、最適な間合いで寄り添い、適切なタイミングで手を差し伸べる。そんな姿が理想的なパートナーシップなのだろう。自分は社会に対して、どんな形で手を差し出しパートナーシップを結んで、寄り添って、価値を生み出しているのか。また、これから価値を生み出していきたいのか。年末にかけて真剣に考えていきたい。

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