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800文字ショートショート

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1つの短編は「800字以内」に収まっている時もあるし、いない時もありますが、大体の目安はそれくらいです。読むのに時間はかからないと思うのですが、読むには時間がかかるかもしれません。
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2022年9月の記事一覧

【800字 ショートショート】#45 多力本願

【800字 ショートショート】#45 多力本願

 素直に素敵だと思える気持ちを持っていることは何とも素晴らしい事であろうか。と私は思うのであります。今まで見聞きした中で最も印象に残っていることは何か?と聞かれると、それは今である。という風に答えるくらいに私はそういう「何かにとりつく性質」は持ち合わせていないのです。

 何かのファンに成れる。何かを応援できるというごくごく当たり前の力でさえ、私はうらやましいと思いますし、そう思うでしょう。

 

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【800字 ショートショート】#46 人間たきぎ

【800字 ショートショート】#46 人間たきぎ

 その列車は走り続ける目的地も知らないまま。

私は楽しみにしていた。この列車に乗って旅をすることが働く目的でもあったからだ。列車に乗って揺られて朝日も夕日も列車の中から眺める。過ぎ去っていく景色、美味しい食事。何とも心地よい旅である。

「次の人を拾います」

 この列車は定期的に落ち人を拾っては乗せていく。落ち人とは私たちのような上客とは違って高いお金を払えない人たちのことである。

この電車

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【800字 ショートショート】#47天使がやめる日に

【800字 ショートショート】#47天使がやめる日に

 去っていく存在へ、去り際を綺麗に飾る。そんなのが多くなってきた。

「誰かを推す」という文化。

 それが引退、卒業・・・様々な理由はあるかもしれないのだけれど、自分の目の前から消えてしまう。別れである。これと死別の区別はどこにあるのだろうか?と言われると私は区別できないと感じた。同じように、去り際がある。それが目の前から消えるということは間違いない。

 終わりは始まりで、始まりは終わりでもあ

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