見出し画像

「1,000万円均一」これを超えるコピーを、まだ書けていない…気がする。 

バブル全盛期だった。私は20代半ば。当時在籍した広告制作会社は大阪本社で、東京から九州まで、支社、系列会社があり、200名ほど在籍。グループ会社の中にはカメラマン事務所、イラスト会社、写植屋(時代ですね!)もあった。私がいたのは、クライアント直の仕事がメインの系列会社。会社案内、旅行パンフレット、商品カタログ、チラシ、DM…。同じビルの同じフロアにいる本社の人たちが、大手広告代理店と一緒になって新聞広告や駅貼りポスターを制作しているのが羨ましかった。
そんな時に書いたのが、この「1,000万円均一」というキャッチフレーズ。クライアントは、大阪の心斎橋にある宝飾店。媒体は折込チラシだ。

100均じゃあるまいし、1,000万円均一って!!

“書いた”と書きましたが(ややこしいですね)、正しくは、“書かされた”ですかね。宝飾店の担当者から「今回の目玉は、この8商品。すべて1,000万円です。ほかにも、数百万円台の商品が20点ありますので」というオリエンがあった。年上のデザイナーさんが、ササっとラフを描き上げた。オモテ面には1,000万円の宝石×8、ウラ面に数百万円台の宝石×20をレイアウト。ラフのオモテ面・上側に『○○○○○○○』と書き、「パッと目を引くような短いキャッチ、お願いね!」わかっているでしょ!!という鋭い目で言われた。そりゃ、もう「1,000万円均一」って書くしかないです。そして下側には…

「裏面には、お求めやすい100万~600万円台の宝石もあります」

…と、これでもか!?と畳みかけるようにコピーを続けた。デザイナーさんは「これねっ」と受け取り、そのまま写植屋さんに発注。(時代ですね!)クライアントからもすんなりOK!が出て、あっという間にチラシは完成。
バブル全盛期だった。チラシが折り込まれた当日に、1,000万円の8つの宝石は完売!!翌日には、ウラ面の宝石もすべて売り切れた。
まじめなコピー、アホなコピー、「ん」や「、」から始まるキャッチなど、いろいろ書いてきた。中には(数少ないけど)、それなりに評価されて賞をもらったコピー、まぁまぁバズったコピーもある。しかし、インパクトという意味で、この「1,000万円均一」を超えるものは…書けていない気がする。あれから30年以上。それでも私は、コピーライターを続けている。

残念ながら、そのチラシは手元に残っていない。当時はMacではなく、写植+版下で制作した(時代ですね!)ので、データもない。バブルは…華々しく、そして儚くはじけてしまい、当時在籍した会社も倒産して、もうない。

と、まぁ、今回は広告のお話。と言っても、むかしむかし、あるところに…って感じの昔話ですね。次は、うーーーん、なに書こう?では、また。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?