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木陰とフラクタル

1.フラクタルって何?
今年の夏はとても暑かったですね!東京では7月から8月にかけてなんと26日間連続で熱帯夜が続いたようです。

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都内では30度を軽く超える暑さが続き、涼しい場所や日陰を探し求めた人も多いでしょう。

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ところでみなさんは「フラクタル図形」というものをご存知でしょうか?「自己相似図形」とも呼ばれます。今日は夏の暑さ対策になんとフラクタル図形が応用されているというお話をします。
フラクタル図形とはなんなのか、さっそく具体例を見ていきましょう。

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なんだか非日常的な模様で、幻想的ですよね。
実はフラクタル図形というのは意外と身近なところにもあります。例えばロマネスコという野菜や木の枝、雷、海岸線などもフラクタル的な図形となっています。

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上の写真はスーパーで買ったロマネスコです。こうしたフラクタル(自己相似)図形はただ綺麗で幻想的なだけでなく、数学的にもしっかりとした理論があり、最近ではその理論的な部分に注目して、さまざまな応用が考えられています。

ところで、「自己相似」とは、自分自身と相似な関係になっているという意味ですが、いまいちピンとこない方も多いかと思います。そこで早速、具体的なフラクタル図形を詳しく見ていきましょう。


2.シェルピンスキー・ギャスケット

フラクタル図形の代表例である、「シェルピンスキー・ギャスケット」という図形をご紹介します。作り方は以下のようになっています。
①まず、正三角形を用意します。

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②この正三角形の真ん中に、逆向きの正三角形の形に穴を開けます(図を参照)。

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すると、小さな正三角形が3つ出来上がりますね。
③この3つの正三角形に同じ操作を施します。つまり逆向きの三角形の穴を開けます。
こうして9つのより小さな正三角形が出来上がりました。

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④さらに続けて、9つの正三角形に同じ操作を施します。

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⑤この操作を永遠と続けることでスカスカな図形が出来上がります。これを「シェルピンスキー・ギャスケット」と呼びます。

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フラクタル、つまり自己相似な図形とは、一部を拡大してみても、最初と同じ形(相似)になっているような特殊な図形のことを言います。

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このシェルピンスキー・ギャスケット、なんだか綺麗ですよね。こうしたフラクタルの図形というのは、アートやデザインにもよく使われており、思わぬところで私たち日常生活を豊かにしてくれています。

ちなみにこのシェルピンスキー・ギャスケットをデザインナイフで切り抜いた紙のアート作品を新宿教室に展示してあります。

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3.フラクタル日除け

江東区豊洲の複合施設「ららぽーと豊洲」の裏に、「フラクタル日除け」というものがあります。これは先ほど説明したフラクタルの代表例である「シェルピンスキー・ギャスケット」の性質を存分に生かした日除けとなっています。
実際に行ってきました。

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綺麗ですよね!
この屋根は、シェルピンスキー・ギャスケットを立体的に配置した構造をしています。

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デザインも現代的でとてもかっこいいのですが、今回注目していただきたいのはこの屋根の数学的な性能についてです。
実はこの屋根、下から覗くと、シェルピンスキー・ギャスケットの構造から、隙間の部分を補完しあい、絶妙に光をさえぎってくれます。

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つまり、スカスカのように見えて、実はしっかり「陰」ができているわけです。 また、この屋根はそれだけではありません。

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スカスカであるが故に、この屋根は熱がたまりにくく(太陽光が当たる面積が小さいため)、全部を覆う屋根よりも、全体として涼しくなるのです!


3.木陰は涼しい

このようなアイデアは、実は「木陰は涼しい」という発想から生まれたそうです。 

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たしかに木陰は涼しいイメージがあります。
では、なぜ涼しいのでしょうか?木陰のおける「屋根」とは枝や葉っぱです。つまりフラクタル屋根同様、スカスカなのです。

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しかし、いくつもの枝が重なり合って、しっかりとした陰を作ってくれています。これが、木陰が涼しいざっくりとした理由です。
実は木の枝の構造というのはフラクタル(自己相似)的な構造になっています。
この点に注目して、デザイン的にも数学的性質も興味深い、「シェルピンスキー・ギャスケット」を使って屋根を作ったということなのです。

数学の理論的な美しさと、デザイン的な美しさを兼ねそろえた「フラクタル日除け」。
来年は皆さんもフラクタル日除けの下で涼んでみてはいかがでしょうか。

<文/岡本健太郎

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